JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 1

概要

JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道の地図 JR函館本線は函館から旭川を結ぶ幹線である。
今回レポートする伊納駅〜納内(おさむない)駅間は明治31年に開通したが、昭和44年に複線化された際、山側に長大トンネルを掘って複線化および電化を達成したことから、石狩川に沿った旧線が放棄された。
旧線の路盤はその後サイクリングロードに転用され、現在でも周辺住民や石狩川の奇岩を楽しむ観光客に利用されている。

現役のサイクリングロードということで、基本的には私のレポート対象から外れており、その様子は他のサイトにお任せしたい。
今回紹介する物件は、旧線の旧線、すなわち旧旧線である。


いつものごとく、事前調査のない、ぶっつけの探索。
期間限定のそれは、あまりにも芸術だった。

1-1 正体不明さん

JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 1 時は平成23年3月下旬。
道路部分以外には雪が多く残り、サイクリングロードの雪の様子が気になっていたが、ひとまず路面は除雪され、走行に問題はない。
一方で、伊納駅側の入り口は「落石」によって通行止め。

この日ここを通ろうとしたのは、別に探索が目的ではなく、この先にある自分の車に戻るため。
後述するように、「旧旧線があるかもなー」くらいは頭にあったが、その程度であった。
ゲートを迂回するようにつけられた雪の踏み跡を自転車ごと進む。
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 2 お?
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 3 どちらさん?

ゲートを越えてすぐ、妙な生き物が現れた。
両脇は除雪による雪の壁があり、また足を怪我しているらしく、ダッシュで逃げていくこともできないようで、ちょっと進んではこちらを振り返り、私が追いかけるとまた振り返る、ということを何度も繰り返した。

にしても、いろいろ検索をかけてみたのだが、こいつの正体がわからない。
体つきはタヌキっぽいんだが、顔つきはそれとは似ても似つかない。

正体不明さんとはこの先しばらく一緒に旅をすることになった。

1-2 二代目伊納隧道

JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 4 さらに進むと、旧線のトンネルが現れる(正体不明さんはこの中に消えていった)。
名は伊納隧道である。
結論から先に言ってしまえば、今回探索したのはこれの旧線である。
すなわち、目の前の隧道は二代目であって、初代が存在する。
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 5 これは探索の2年前、平成21年5月に、上の写真とほぼ同じ位置で撮影したもの。
よく見ると旧旧線である初代伊納隧道も写っているのだが、現地および帰宅後に確認した際も、それに全く気づくことがなかった。
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 6 二代目伊納隧道はコンクリート製。
抗門にピラスターのような構造が見られたことから、2年前に訪れたときはレンガ造りであろう初代を改築したものだろうと考えた。
ゆえに、早々に「旧旧線は存在しない」と結論してしまったのである。
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 7 それが今回、旧旧線の存在を予感してここへ来たのは、ここより先にある隧道(写真)で、2年前に旧旧線のような痕跡を見たからである。
そのときはわざわざ引き返して伊納隧道の旧線を探したりはしなかったので、今回は少し真面目に見ていこうと考えた次第である。
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 8 まずは簡単に二代目伊納隧道の様子をご紹介。

しっかり除雪されているものの、公式には通行止めとされているためか、洞内の電灯は消灯されていた。
また、ポータルに設置されたゲートにはサイクリングロードの通行期間が4月25日からと書かれており、落石云々以前に冬期通行止めだったらしい。
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 9 まあ、二代目は現役なので、誰かがレポートしてくれているだろう(他力本願)。

冬場で視界が利くという要素以上に、「ここに旧線があるかもしれない」と予想していたときの探索力というのは向上するものである。
坑口から川のほうを見てみると、白い雪面の向こうに、真っ黒く口をあけた小さな隧道があるのがわかる。

実際、これを見つけたときはかなり興奮したものだが、ネット上にはその存在自体は紹介されていたことや、その後の光景にあまりにも興奮しすぎたため、レポートを書いている今となってはいまいち印象が薄くなった感は否めない。
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 10 考えてみれば、最後に廃隧道を探索してから半年以上のブランクがある。探索活動の冬眠に加え、北海道では口をあけた廃隧道の数が少ないことが大きな理由にあげられる。
久しぶりに明かりの一式をサイドバッグから取り出し、意気揚々と雪原にダイブ。

1-3 初代伊納隧道

JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 11 ここ数日の陽気でザラメ状になった雪原には思ったほど埋まることもなく、ざくざくと前に進んでいく。
ゆるくカーブした先に、豪勢な芸術品の予感がひしひしと感じられる。
遠めに見ても、なんかすごいポータルのようだぞ・・・
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 12 はあああああああああ
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 13
「すげえ!!!!」
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 14 開口一番叫んだのは、その感嘆の言葉!
どっしりしたピラスター、堅牢な四重のアーチ、安定感のある帯石と笠石、そして一際黒く光る重厚な要石・・・
レンガ隧道として、ここまでの様式美が揃い踏みした隧道は、これまでの探索活動を通じて、かなりレア!
形容するならばそう、だ。
絶大なる王の住まう、難攻不落の城塞。
そばに立つだけで足が竦むような、この強烈な威圧感は、何だろう。「久しぶりだから」の一言で片付けられるレベルではない。
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 15 最も目に付くのは、やっぱり要石。
そこには歯車のような紋章が刻まれており、要石に意匠を施したものは初めて見る。

調べてみると、明治時代にこの路線を建設した北海道官設鉄道を運営する北海道庁鉄道部の紋章で、汽車の動輪を示しているという。
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 16 威圧的なピラスター。
この一枚を見て、誰が放棄された隧道の坑口に見るだろうか。
ヨーロッパの古城の一角にも見えよう。
華麗を絵に描いたような造りである。
JR函館本線旧旧線 初代伊納隧道 17 足元には金属製の金網が雪に埋もれていた。
かつてはこの坑口を封鎖していたものだ。


写真左奥に写っているように、隧道は貫通している。

しかし───

出口に見える光が、やたら歪。
洞内の崩落によって出口の光の形が歪められることは多々あるが・・・あんな形は見たことない。
だって、に狭まるなんて、自然の崩落ではありえない・・・はず
外の雪景色があまりにも眩しすぎるため、私の瞳孔は限界まで狭められている。
暗い隧道の内部は、すぐそこにあるのに、ほとんど見えていなかった。
さらに接近するとともに、その歪な隧道断面に目を凝らしてみた。

そこに見たのは、崩落で歪になった隧道ではなかったのである───
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凍ッ!!!
てる!!!!
[ 11' 3/31 訪問 ] [ 11' 7/4 作成 ]
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