JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 3

概要

JR信越本線旧線 米山の廃隧道群の地図 明治と昭和が融合した坑口に、優しい滝。
遊歩道として十分な役者をそろえているが、果てさてその内部はどうなっているのやら。
比較的長い隧道内に明かりは、ない・・・

3-1 恐怖の遊歩道

JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 47 これまで潜った一号隧道、二号隧道ともにごく一部を除いてコンクリートで固められ、煉瓦はほとんど見られなかったが、 三号隧道には美しい煉瓦構造が残っていた。
側壁は米山駅近くで見たようなストライプを描く精緻な煉瓦製。
アーチ部分は重層の煉瓦構造がよく分かり、要石も健在である。

天井部分は特徴的な木製の覆工で覆われ、残念ながら煤煙の跡は見ることができない。
コンクリートではなくこのような木製の覆工にしたのは、それだけ隧道が安定しているということだろう。
無機質なコンクリートよりはいい?
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 48 隧道は左に緩やかに弧を描いているものの、出口の明かりは見えている。
地面はバラストの上からそのままコンクリートを塗ったような、簡易的な舗装がなされていた。
一号、二号隧道は車も通れるような舗装の仕方だったが、ここは当初から車両往来を見込んだものではなさそうだ。
舗装も中央部分に人が通れる程度の幅のみで、両脇はバラストをそのまま押し固めただけのようである。

入口の鮮やかな煉瓦のストライプとは趣が異なり、内部の壁の煉瓦は真っ黒く変色している。
おそらくこれも煤煙の跡なのだろうが、かつて旧吉津トンネルでみたような天井に残る煤といった感じではなく、 側壁までもがことごとく黒い。
天井部分は木製の落ち着いた覆工で不安はないが、この真っ黒な壁は・・・
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 49
ちょっぴり怖いよ。
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 50 木製の覆工は一部途切れたりして、それがないところは独特かつ強力な"廃隧道放射線"をバリバリ放っている。
この三号隧道は一連の米山隧道群の中でもっとも長い、延長一四五〇、七呎≒442メートルである上、明かりもついていない(設備はある)。
足元は舗装されており、出口の明かりも見えるとはいえ、自前の明かりなしで進むには相当な気合いが必要だ。

写真は側壁に残る鮮やかな煉瓦の赤。
どんなに明かりで照らしても、所詮"黒"である隧道の中で、ここだけが唯一赤い色を保持していた。
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 51 足元にはこんなミニマムな待避抗も。
もちろんこれは待避抗じゃなくて・・・何?
まあとにかく、直径30cmほどの小さな穴の中には、ここだけきらきら光るカビのようなものに覆われていた。
これはライトの明かりをよく反射し、最初遠くから見たときは足元につけられた間接灯のようにも見えた。
白いものの正体はよく分からないが、地下水が染み出すような、特に素掘りの隧道でよく見かける気がする。

それにしても黒いな。
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 52 入洞から10分少々で柏崎側坑口に到達。
こちら側にはコンクリートではなく、レールを組んだロックシェードが設置されている。
向こうに写る柵は上輪ポンプ場。
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 53 三号隧道柏崎側坑口。
今までの隧道に比べれば比較的煉瓦が見えている面積が広いものの、一方で土砂に埋まってしまった部分もある。
また、網目状になったロックシェードを足場にして、ポータルを覆い隠すように植物が繁茂してきており、 夏場であったらほとんど緑のトンネルになってしまうと思われる。
植物の根が伸びようとする力は驚異的なものであり、このままポータルに根を張り続ければ、植物によって煉瓦すらも破壊されてしまうかもしれない。

坑口の右側には、反対側で見たような黄色地に黒のペンキで「待て列」と書いてあった。
一連の隧道でもっとも長いトンネルということで、内部での衝突を避けるべく、両坑口で注意を促しているのだろう。

この隧道での衝突事故の記録は見られないが、掘削時には大規模な崩落が起こり、 工夫13人が生き埋めとなって死亡する事故が起きている(日本鉄道建設業協会 日本鉄道請負業史より)。
しかしながら、北越鉄道全通時に歌われた「北越鉄道の歌」では「・・・米山隧道開鑿は事無く了へて今は只・・・」とされており、 記述に食い違いが見られる。
まあ、全通を祝う歌に死者を出したような落盤事故の話を載せるわけはないだろうが、北越鉄道会社側の思惑もあっただろうことは想像できる。
事故については後の調査で判明したもので、現場で手を合わせることができなかったのは大変な失礼であったと後悔している。

今では遊歩道化され、家族連れが笑顔と少しのドキドキ感で通ることもあるだろう。
その中に、当時の不幸な事故のことを知る人はきっとただの一人も居るまい。
もしも、私のレポートを読んで現地を訪れる人があれば、この隧道に命を散らした男達がいたことを、ほんの少しでも思い出して欲しい。


さて、今私が立っているのは小さな沢を渡る橋の上なのだが、ちょっと上流側に目を向けてみると・・・ぎょっとした。

3-2 あなぼこ

JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 54
ずず隧道!?
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 55 あわてて海岸に下り、橋の下から隧道と思われる穴方向を見てみる。

特に上部の滑らかな切り口は人工的に切り取ったもののように見える。
また、高さ的には人が何とか立って入れそうなくらいある。
横幅は人一人が限界で、水深こそ浅いものの急斜面になった奥からは激流が吹き出してくる。内部探索には相応の装備が必要となるだろう。
橋の上からは向こう側の光が水に反射して見えており、非常に短いものだ。

残念ながら、現時点では人工物なのか地下水脈なのかすらもはっきりしていない。
人工物だとすれば、煉瓦橋がこれをまたいでいることから、明治かそれ以前の竣工となる。
江戸時代の水路隧道だったら・・・たまりませんな。
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 56 隧道もどきとポンプ場を過ぎ、旧線は緩やかに左カーブを描いていく。

左には日本海が広がっているはずなのだが、高いコンクリートの防波壁に遮られ、徒歩や自転車の高さでは見ることができない。
車窓の高さなら見えたと思うが、遊歩道を通るものにはその姿は隠されている。

3-3 光燈る四号隧道

JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 57 三号隧道からおよそ250メートルで四号隧道に達する。
山側の高く分厚いコンクリートの落石止めの上に、更にレールで組まれた落石防護柵が乗っかっている。
こちらに向けて圧し掛かってくるような角度がつけられたそれは、生々しい重量感を伴って強烈な圧迫感を与えてくる。
柵を構成する赤銅色のレールもいったいここで何十年雨ざらしになったのか、腐食とまではいわないものの、相当な年代物。
雪崩で傾いた・・・ではないよな、きっと。もともとこういう設計だ。

写真で見てもお分かりいただけるように、一帯は垂直の断崖が天高く切り立つクリティカルな場所であり、落石等が相当頻発した場所のようだ。
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 58 四号隧道にも10メートルほどのコンクリート製ロックシェードが据え付けられ、ポータルは全く見えない。
右上のあたりは明らかに崩れており、潮風に晒されるこの辺りの環境の厳しさがうかがえる。
ロックシェードの左側には「1953-11」と刻印されており、これが建造された年代だろう。

ロックシェードの両側の側壁にはそれぞれ黄色または白のペンキで「待ヒスルナ」と書かれていた。
もう出口が近いということで、列車接近時には隧道内の待避抗に逃げるのではなく、外へ出ろということか。
正面の隧道内から列車が来れば、嫌が応にも外へ逃げるだろうが、後ろから迫ってきた場合、そのまま隧道へ逃げたくなる気持ちも理解できる。
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 59 一号隧道から三号隧道まで、明かりの設備はあってもそこに光はなかったが、この隧道には明かりがついていた(といっても入口にひとつ、中間付近にひとつだけだが)。
先ほど通り過ぎた上輪の集落から信越線に乗る場合、徒歩または自転車であればこの旧線を通って笠島駅まで出るのが最も近い。
米山駅へも距離はさほど変わらないが、あの崩落では普通は通るまい。
そういう事情から明かりが灯されているのだろうが、それにしては一番長い三号隧道が暗闇なのは謎だ。

四号隧道も、構造的には三号隧道と同様、コンクリート巻きたてではなく、側壁の煉瓦を残してアーチ部分だけ木で補強されている。
オレンジ色の淡い光が木枠と煉瓦によくマッチしており、趣きある情景を演出していた。
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 60 四号隧道の延長は八一五、一呎≒248メートル。
木製の補強はやはり飛び石的に設置されているが、明かりがあることもあって三号隧道のようなおどろおどろしさはない。
明かりというものがいかに重要な要素であるか、三号隧道を抜けてきたものには痛感できる。
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群 61 明かりもあり、整備も万全な隧道では、いくら旧線とはいえドキドキ感は欠けてしまう。
あっさりと通過し、柏崎側坑口。
ここもロックシェードで固められ、ポータルは全く見えない。
円アーチのロックシェードに対し、内部には馬蹄型アーチである本来のポータルの一部が見えているが、それもよく注意しないと分からない程度だ。
このすぐ先には、遊歩道としては最後の隧道となる五号隧道が待ち構える。
もちろん、"廃報"の真髄は、さらにその先を期待する。以下次回。
[ 06' 1/1、06' 1/21 訪問 ] [ 06' 2/10 作成 ]
前の記事へ次の記事へ
ひろみず http://d-road.sytes.net/ webmaster@d-road.sytes.net
JR信越本線旧線 米山の廃隧道群012345678