戸井線 汐首岬の廃隧道 2

概要

戸井線 汐首岬の廃隧道の地図 陰鬱な軍事路線の未成隧道。
その暗闇はどこか他の隧道よりも色濃い気がしてならない。
水没気配が濃厚な隧道の奥を目指す。

2-1 汐首第一隧道

戸井線 汐首岬の廃隧道 14 足元の泥にはすでに水気が感じられる。
奥から聞こえる水滴の音は入り口よりも大きく、進むほどに水深が深くなっていくことが予想される。

去年の同時期、滝の沢トンネルで味わったあの切れるような水の冷たさを思い出す。
どうも、その年初めての探索というのは水没というところから始まるように運命付けられているらしい。
戸井線 汐首岬の廃隧道 15 去年もそうだったように、最初の一歩まではやる気なんだよな・・・

トレッキングシューズの防水性を頼りに歩けたのはほんの数歩だけ。
冬の北海道の水は、すぐにくるぶしから浸入し始めた。

あっ・・・あああっっ・・・」
"オモラシ"をしてしまったような、やっちゃった感と奇妙な開放感・背徳感は、余り心地よいものではない。
戸井線 汐首岬の廃隧道 16 やっちまったもんはもう仕方ねえ!!
これで濡れを気にせず進めるようになったべや!!


結局、前年と同じくどっぷりと水につかることになった。
前年はくるぶし程度で済んだが、今年のレヴェルはそれ以上だ。
出口に向かって下っているらしく、あれよあれよという間に膝まで来てしまった。
また、水底には5〜6cmの厚さで泥が堆積しており、これまた進むほどに堆積の度がひどくなっていく。
そして、物理的に私の足を止めようとする。

いかん、これでは先に進めん。
撤退が先か、閉塞が先か、私と隧道のチキンレース。
戸井線 汐首岬の廃隧道 17
うオッツ!!
戸井線 汐首岬の廃隧道 18 崩落閉塞!!!

幸いにも隧道は私に味方してくれた。
「これ以上は無理」と結論しようとしたそのとき、水音の向こうに圧倒的な土砂が現れた。
天辺からぎっしりと、しかし乱雑に積もった土砂は、ここからでも自然な崩落によるものだろうと推察できる。
前述の通りこれ以上は水深と泥の深さの問題から近づくことはできない。
また、かすかにではあるが崩落土砂の右上には明かりがあるようにも見えた。
入り口で感じられた、わずかな風の流れの正体である。


ただし、ここで気になったのは、目の前の崩落現場よりも、私の頭上にあった。
戸井線 汐首岬の廃隧道 19
木造・・・?!
戸井線 汐首岬の廃隧道 20 戸井線のコンクリート構造物には、まことしやかに語られる"伝説"がある。
「戦時中の資材不足の中、鉄筋は使えず、木筋竹筋で代用した・・・」
汝其の頭上を見よ、彼が伝説を真たらしめるであろう。

コンクリートで覆われ、その内壁が崩落した隧道はいくつも通ってきた。
その中身に確認できるものといえば、たいていは鉄筋である(五十島隧道など)。
だがしかし、戸井線の隧道に、鉄材はどこにもなかった。
形も太さもまちまちな材木を格子状に張り巡らせ、そのままべたべたとコンクリートを塗ったくってあるだけだった。
眉唾に思えていたあの話は、このたった一カットの光景で信ずるに足るものとなった。
10' 10/11 追記

掲示板にて、在来工法における「木矢板」ではないかというご指摘をいただきました。
戸井線 汐首岬の廃隧道 21 伝説の木筋コンクリートが確認できたことを土産として、反対側を見るべく戻ることにした。
振り返ってみればこの程度の距離だ。
このわずかな距離の暗闇の中に、伝説の証人が住んでいたのである。
戸井線 汐首岬の廃隧道 22 オブローダーが廃隧道にもぐったとき、河童になるという伝説もまた真実であった。
靴底にたまった泥水をデロデロとかき出しても、黄金色の泥は3ヶ月たったいまだに落ちないでいる。

陽気とはいえない3月の北海道の外は寒い。
垣間見た伝説に胸がアツくなろうとも、特に足先から登る痺れる様な冷えは如何ともし難い。

2-2 無知が故の

戸井線 汐首岬の廃隧道 23 なにぶん隧道の明確な位置すら分からなかったのだから、反対側の坑口がどこにあるかも、延長がどの程度なのかも分からないわけで。
「あんまり長いと嫌だな〜」なんてぼやきながら坑口を探していた。

国道に降りて先へと走っていると、400メートルほどで二つ目の隧道(仮に汐首第二隧道とする)が見えてきた。
あの手前に、一つ目の隧道(仮称汐首第一隧道)の出口があるはずだ。
戸井線 汐首岬の廃隧道 24 汐首第二隧道のすぐ手前に、目指す第一隧道の反対側坑口があった。
しかしながら、両坑口間の路盤へは相当な急斜面を登っていく必要がある。
坑口に誘われるようにその斜面に張り付いたものの、崩れた小屋や網の目のごとく妨害する潅木に阻まれ、ここからのアプローチは断念した。

次の手段は、未探索である第二隧道を戸井側から通過し、第一隧道の坑口へと達することである。
第二隧道に関しては貫通していることを事前情報として得ている。
戸井線 汐首岬の廃隧道 25 坑口間の路盤に達するために登りかけた斜面は、実のところ結構危険を孕んだものであって、途中で撤退を決めたのもそういった面が大きかったためだ。
どっこい、第二隧道への路盤にはご丁寧に立派な階段までついている。
何も命の危険を晒さなくとも、観察によって目的への道が開ける好例だ。
戸井線 汐首岬の廃隧道 26 長い階段を上りきった路盤もまた、ある程度の整備がなされていた。
遊歩道というほどではなく、周辺の造林作業に伴ってのものだろう。

函館側を見れば、すでに汐首第二隧道の入り口が見えている。
戸井線 汐首岬の廃隧道 27 整備された足元に、鉄道の路盤らしさは感じられない。
一方で、今歩いているところはアーチ桟橋だったりする。■下からの写真
まともに探索すれば、戸井線の着工区間二十数kmの探索に数日は要するような濃密な未成線である。
戸井線 汐首岬の廃隧道 28 汐首第二隧道の戸井側坑口に到着。
事前情報どおり、向こう側の光は見えている。
歪ではあるが。
戦時色がいまだに残る隧道の内部は、まさに当時の切迫した状況を物語っていた。
そこにある明るい材料といえば、暗い資材で工事されたという伝説のみである。

目指すは第一隧道の反対側の崩落地点。
[ 10' 3/24 訪問 ] [ 10' 6/20 作成 ] [ 10' 10/11 追記 ▼該当箇所にジャンプ ]
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