北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 2

概要

北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間の地図 怖いもの見たさ、知的好奇心、レポートのネタ探し、・・・動機はいろいろだ。
それらはすべて、ひとつの言葉に集約する。
「行ってみたい」

いま、湖底より浮かび上がった旧道道に足を踏み入れる。

2-1 水没廃墟

北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 14 地形図では、左へ行くと畑のマークになっている。かつてこの一帯にあった伊文集落の人たちの牧草地で、現在も使われているようだ。
かたや、直進の道の轍は非常に薄い。
比較的最近に四輪自動車が入った形跡があるものの、廃道の様相は色濃い。
また、この分岐より先は、地形図上ではすでにダム湖となっている。
当然直進する。
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 15 鮮明な旧道道が、緑の海へと一直線に続いていた。
路盤の上は、刈った草をそのまま放置したのか、それとも除草剤でも撒いたのか、その部分だけ生きた植物が見当たらない。
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 16 茫漠・・・とはまさにこのような景色をいうのだろう。
沿道には確かに畦道の凹凸が亡霊のように浮かんでいて、かつてここに人の営みがあったことを示している。
満水期には水面下に沈む場所だけあって見通しはよく、草木に包まれる普通の廃道とはまるで違う世界に、しばし呆然としていた。
自然の世界とも異なる、人工の世界とも異なる、何か異次元的な光景に、心の中の恐怖が占める割合は大きかった。
この広大な空の下、広大な緑の上で、どこぞの廃隧道よりも、何か不気味なものを感じた。
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 17 果たしてここの水が消えたのはいつのころだろう。
とにかく現地では事前情報が何もなく、ただ想像するに任せて歩いた。
木々がないから、確実に水没する部分であることには間違いない。
一方で、地面の罅割れた泥はよく乾いている上、雑草の勢いを見れば、雪解け後の満水期を過ぎたころからずーっと水がなかったように思える。
そして、この冬以降にまたここは冷たい水の底に沈むのだろう。
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 18 現道との分岐点から1.3kmほどで、上から見下ろしたあの廃墟に到達。(■現在地
建物へ続く道はすでに痕跡がなくなっており、緑の草の中を無理やり歩いていった。
足元はよく締まっており、ぬかるむようなところはない。
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 19 建物は3階建てほどの高さであり、幅30メートル、奥行き10メートルといったところだ。
探索時点では興奮のあまり気がつくことはなかったが、満水期には壁面の色が変わっているところまで沈むのだろう。
つまり、この場所ですでに水深2メートルくらいはあるということだ。
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 20 はやる気持ちを抑え、周りを観察する。
足元にはダムサイトのほうに向かって一直線に伸びるコンクリートが敷かれていた。
いったいこれは何だ・・・?
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 21 そのコンクリートの縁は、タイル敷きのようになっている部分もあった。
そこだけ見れば、まるで浴槽のようにも見える。
しかし、このコンクリートは一部でがあいていて、中は空洞になっている。
なにか、導水的な施設のようだが・・・
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 22 「あれは何だ?!」このたった一つのシンプルな疑問が、はるか高みを上る付け替え道道からこの水没旧道へと踵を返した理由である。
そうであればこそ、その廃墟の内部を確かめずにはいられない。

横に4つ並んだ窓から内部を覗くと、それらはすべて同じ構造で、またどこも一様に水没していた。
窓の高さから水底までも2メートルくらいはあり、ここから転落すれば二度と這い上がってはこれない。
増水期になり、内部の水深がさらに2メートルくらい増せば、浮かんでいれば窓に到達できる。死体となって外には出られるだろう・・・
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 23 正面を撮影。
すでに数十回にわたり、水没と乾燥を繰り返した建物の劣化は著しい。
壁の内部の鉄筋はむき出しになっていて、向こう側が覗けるようになっているところもある。

建物自体は昭和中期のものだろうか・・・
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 24 カメラを突っ込んで天井部分を撮影。
ご覧のとおり、天井がない。
おそらく、1階と2階を仕切る床すらもなかったのだろう。
人間が出入りするような施設ではなかったらしい。
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 25 実際、裏に回ってみても、どこにも入り口がない。
あるのは屋上にまで登る梯子だけ。
いまでは一番左のひとつだけが残り、ほかの3部屋に使われていた3つの梯子は無くなっている。
屋上という構造がないのだから、それぞれの部屋ごとに窓から配管が出て、それらのメンテナンス用として梯子が取り付けられたことが伺える。
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 26 結局、この施設は何なのか───
一番肝心なその答えは、何も得ることはできなかった。
ただ、人が入るような施設ではないこと、導水設備があること、などから、水に関連した施設であるらしいが・・・何も、わからない。


水と温根別地区は、開拓に伴ってあるいは水害として忌避され、あるいは水源として求められてきた歴史がある。
第1回のイントロでお伝えしたとおり、温根別地区は農業に適した土地であったにもかかわらず、安定した水源の確保には悩まされていた。
それは農業用水にとどまらず、上水道としても同様であった。
昭和41年、温根別簡易水道の工事を着工し、その水源地は現在のダム湖南端に近く、すなわち今いるこの辺りである。
したがって、これらはかつての取水施設、もしくは浄水施設の廃墟の可能性が高い。
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 27 この施設と関連するのか、先ほどの足元の導水路の先に、コンクリートの基礎だけが残る廃墟があった。
建物としてはほとんど何も残っていないため、近づいての詳しい探索は行っていない。
比較的規模の大きな施設だったようだ。

2-2 大地の廃墟

北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 28 廃墟としての結論は確定できなくても、道はまだ先に続いている。
ここで歩みを止めているわけには行かない。
草むらに放り投げていた自転車を拾い上げ、再び先を目指す。
遮ってしかるべき湖面は、まだ見えない。
北海道道251号 雨竜旭川線旧道 温根別ダム水没区間 29 ここは異世界だ。
今まで北海道を旅して、一面の緑の牧草地に感嘆の声を上げたことは何度もある。
しかし、ここの緑はそれらとは何かが違っていた。

・・・なにかこう、緑色が鮮やか過ぎる。

年毎に水に洗われる鮮やかな緑が、異次元の植物のように見える。
そんな地面が、25年も前の畦道をぼんやりと浮かばせながら、ひたすらに広がっている。
なんだろう、沿道のこの光景が、すごく怖かった。

建物の廃墟が狭義の廃墟とするならば、道路の廃墟が廃道であり、鉄道の廃墟が廃線である。
ここはそう、大地の廃墟とでもいうべきか・・・
見回した光景のどこもが、廃墟に思えて、震えた。
こんなにも色鮮やかに、明るい廃墟もあるものか、と。
字面からはただ美しいはずの光景が、かくも恐ろしく感じられることがあるのか、と。
何が怖いのか、自分自身にもわかっていない。
悪魔の声は、私にいろいろなものをもたらす。
知的好奇心の充足であったり、恐怖であったり。それが楽しい。

冷静に考えれば、命を脅かすものは無い。
進むべき道も明らか。
さらに悪魔の声は大きくなる。
[ 10' 9/25 訪問 ] [ 10' 11/21 作成 ]
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