角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 3

概要

角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画の地図 角海浜隧道を抜けた先にいく筋も穿たれた水路隧道。
そのひとつ、最近竣工したばかりの新々樋曽山隧道が、目の前に。

3-1 新々樋曽山隧道

角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 27 緩やかなスロープになった隧道へのアプローチを降り、正面に立つ。
立派な扁額も掲げられ、「新々樋曽山隧道」の文字が鮮明に刻まれている。
道路用なら「トンネル」と表記されるところだが、通水路ということで「隧道」としているのかもしれない。

新々樋曽山隧道はそれ以前にあった樋曾山隧道、新樋曽山隧道に続き、平成になってから完成した新しい放水路で、 その断面積は二車線の道路トンネルよりも広く、毎秒106立方メートルの排水規模を備える。
これにより、平野を襲う50年に一度の規模の集中豪雨からも水害を防ぐことができるという。
具体的な完成年はちょっと資料によってまちまちなのだが、隧道自体の竣工は平成8年、通水を含む全体の完成は平成15年らしい。

堂々とした扁額から、最初はここが新々樋曽山隧道の坑口かとも思ったが、どうもここは管理用というか、斜坑のようなものと思われる。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 28 柵の隙間から撮影。

中からは冷気が漂ってきており、薄く靄がかかっている。フラッシュをたいて撮影すると、水滴が反射して何も写らなかった。
平成竣工のものとはいっても、湿潤な内部の壁面にはすでに緑色の苔が繁茂し、貫禄は十分だ。
確かに奥では水がチャポチャポと揺れる音が聞こえてくる。写真の一番奥、真っ黒く写っているところが水路本線だろうか。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 29 で、「アナがあったら入りたい」私としては当然侵入を試みたいところなのだが・・・

これは無理。

2メートル以上もある頑丈な鋼鉄製の柵にはガッチリと南京錠がかけられ、ねずみ返しのついた上部を越えるのは物理的に極めて困難である。
また、これでも廃隧道であれば、ねずみ返しに邪魔されない横の壁面を伝って無理やり越えることもできたかもしれないが、ここは現役の施設である。
危険立ち入り禁止とはいっても公共の道路である廃隧道とは違い、ここの立ち入りは完全にアウトであることも、判断理由のひとつだ。
もっとも、ねずみ返しがなければ突入してたと思うが・・・。

恨めしく見上げてみても突破かなわなかった。


敗北。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 30 実際の隧道出口はこの水門の下である。写真左手奥に先ほどの管理道路が小さく写っている。
水路となった埠頭の下を大量の水が緩やかに流れている。

埠頭にも多くの釣り人が思い思いに糸をたらし、また付近の山へのハイキングと思われる格好をした夫婦も見られた。
周囲は磯や奇岩が美しく、磯釣りスポットやハイキングコースとしても一級である。
河川施設のため立ち入り禁止といっても、これだけの施設を多少の人間がうろついたところでどうもなかろう。
車両は通行止めにしておき、歩行者には開放しても良いのではないか?門の破壊も進んでることだし。

3-2 新樋曽山隧道

角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 31 ちょっと前後が逆になるが、新々樋曽山隧道の管理用隧道の脇には、封鎖された坑口が存在する。
半ば埋まったように見えるのは、おそらく新々樋曽山隧道の工事に伴って周辺を整地したためだろう。
土と緑に埋もれかけた坑口に接近する。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 32 ポータルには扁額も掲げられていた。
「樋曽山隧道下口斜坑」と彫られているが、位置的に初代樋曾山隧道のものではなく、二代目の新樋曽山隧道のものと思われる。

完璧に密閉された坑口には空気穴すら開いていない。
針一本通す隙間もないこの密封振りでは、もはやここを通るものは何もない。
無論、私も入れない・・・
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 33 さて、本坑はどこかというと、海に突き出た新々樋曽山隧道の堤防から望むことができる。
特徴的に配置された石垣が、道路隧道を見慣れた私にとっては実に斬新だ。

背後の岩壁と鮮やかな緑、そして見るからに経年劣化した石垣は見事の一言に尽きる。
飾り付けのような手前の石垣も管理上必要な構造物なのだろうが、まるで明治時代の洒落た隧道のような絶妙な味を醸し出している。
名称こそ"新"樋曽山隧道だが、すでに竣工から30年以上を過ぎ、波と潮風に直撃され続けたその姿は十分に古隧道の風格。
惚れた。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 34 崖沿いに刻まれたこの狭い道を通り、坑口に近づく。
新々樋曽山隧道の堤防工事のせいか、接続地点はかなりの段差であり、自転車は担がねば進めない。

大量の消波ブロックが日本海の厳しさを暗示する。
青空と凪いだ海からは想像もできぬほどに、真冬のこの地は地獄絵図に違いない。
今立っているこの辺りまで怒涛の波しぶきが襲い掛かり、矮小な人間などそのまま岸壁に叩きつけられるか、引き波に持っていかれるかだ。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 35 坑口から滔々と流れる水を渡る小さな橋。
というかこれを橋と言っていいものやら。
とにかく人が渡れればいいようなもので、欄干も何も橋らしい設備はない。
幅も狭く、自転車を横に歩くのは少々緊張した。乗ってなんか渡れませんよ、こんなん。怖い。

水面まではそう高くなく、隧道の断面から考えると水深も1〜2メートルくらいだろうか。
ただ、大量に流れる水の流れは水面に近いこともあって、あまりにも"リアル"である。
落下地点で溺れはしないかもしれないが、沖まで流されそうな予感がする。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 36 橋から隧道を見てみれば、目の前に扁額がある。
「昭和四十一年竣功 新樋曽山隧道」だそうだ。

昭和初期に掘られた初代樋曾山隧道では、その排水能力は不十分であったのか。
ほぼ同じ位置に二代目が掘られ、さらに平成になって三代目まで掘られたのだ。
一連の隧道が存在する弥彦山は信仰の山として崇められる一方、水利にとっては完全に厄介者だ。

橋の上にかがみ、身を低くして隧道を臨むと・・・
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 37
うひょ〜〜〜〜
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 38 内部からは霧が吹き出しており、古びた廃隧道のような鬼気迫る迫力に圧倒される。見方によってはまるで水没隧道にも見える。

隧道といえば定期的な保守管理を必要とするわけだが、水路隧道は一帯どうやって保守しているのだろうか?
ボートでも使っているのだろうか?万が一内部で崩落でもあろうものなら、どうやって補修するんだ?
ああ、入りたい・・・入りたい・・・入りたい・・・
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 39 隧道を過ぎ、振り返って撮影。

新樋曽山隧道をすぎると道はなくなり、砂浜と磯が広がる。
ほとんど崩壊してしまったという磯沿いの道の痕跡もあるかもしれない。
自転車で行くには少々きついが、まだ相棒片手に進んでいける。

あれ?初代樋曾山隧道は?

3-3 珍客

角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 40 100メートルほどの砂浜を進むと、砂浜は尽き、岩が行く手をふさぐ。
海面には鮮やかな緑色の海草がいっぱいだ。
これは海苔か?

角海浜の集落が現役だった頃、このあたりの磯場では海苔を採って食卓に並べたという。
次々と水路隧道が開通するなか、大量の真水が磯に流れ込むようになると、生態系が乱れ、採れなくなってしまった。
隧道から離れたところはまだ綺麗なんだそうだ。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 41 こんなところにわんこ。

周囲にいる釣り人の飼い犬なのか、捨て犬なのか分からないが、少なくとも人に慣れており、私の後ろをついてきた。
旧国道が通っていたような山奥の集落の飼い犬は、自転車ルックの私を見ると猛烈に吠えまくるが常だ。 たまたま鎖を外されていた犬に追いかけられたこともある。
だがこの犬はおとなしく私の後ろをついてくる。

首輪もないし、捨て犬だろうか?ごめんな、俺には何もできないんだ。
そんなつぶらな瞳で見ないでおくれ。
海苔が生えた岩を乗り越えると、完全に磯の様相である。
流石にこれ以上は自転車を通すのは困難となり、相棒を置いて偵察することにした。
[ 05' 7/17 訪問 ] [ 05' 12/16 作成 ]
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