角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 4

概要

角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画の地図 巨大な岩塊がゴロゴロ転がるこの場所では、自転車どころか歩くのにも一苦労。
転倒に注意しながら一歩一歩歩を進めた。

4-1 見えているのに届かない

角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 42 砂浜が尽きた時点で自転車を置いてきたのは正解だった。
あれより先は完全にただの磯であり、かつてあったという徒歩道の痕跡など全くない。

また、このあたりはかつては砂浜だったらしいが、昭和25年頃、ここより南の出雲崎港築港の際に生じた瓦礫が流れ着き、 このような岩がゴロゴロする海岸になったという。

しかしこのあたり、フナムシ大量に生息している。
足を置けば、その周辺を百匹単位の黒い塊がぞわぞわぞわと走り回る。黒い絨毯が動いたような錯覚すら覚える恐ろしい光景だ。
それが一歩一歩歩くたびに続くのだから、進むには下手な廃道より気力を要するかもしれない。
彼らはすばやく、うっかり踏み潰すようなこともないだろうが、とにかく見るのも嫌だという方にはここはオススメできない。
心臓の弱い方なら卒倒するよ、これは。

私だって、ふと岩の壁に手をかけたときに、手の周辺を数百匹のフナムシが這いずり回っていた光景を見て、全身に鳥肌が立つのを覚えた・・・キモイ
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 43 はるばる富山からご苦労様です。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 44 歩きにくい岩場をフナムシの恐怖と戦いながらも突破し、振り返って撮影。
岩場を過ぎると、それまでの岩塊とは違ったちょっと生理的に嫌な切り口をした地質になる。なんというか、ツブツブしてるというか・・・
地質的なものなのは分かっているんだけどさ・・・

このあたりはどうも人為的に削り取ったような感じも見受けられるが、ここ以外の前後区間はさしたる手を加えられた様子もなく、 ここだけが改良されているというのはちょっと疑問だ。
遥か昔に人為的に削ったにしては規模が大きすぎる気もする。
自然の浸食のようにも見え、正体はよく分からない。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 45 ツブツブ岩を過ぎると、道は完全になくなってしまった。
ただ、昭和初期などの古い地図を見ても、このあたりは山越えをしており、磯伝いの徒歩道が消滅したのは相当昔のことだろう。
あるいは、この先は最初から山越えだったのかもしれない。
それほどまでに、人の往来を拒んだ地形である。
当の山越えの道は、探索時には気がつかなかった。すでに自然に帰っているようだ。

いくつもの海食洞が穿たれており、これらを越えるには橋でもなければ渡れないが、そのような痕跡もない。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 46 もうすぐ先には角海浜の集落を避けて山に迂回してきた国道や、間瀬集落の漁港が見えている。
国道まではほんの200メートルほどだろうか。もう手が届きそうなのに・・・進めない。

この日はこのまま国道を南下して、中永隧道の探索に赴く予定であった。
つまり、目の前に見えている道に出るのが一番の近道なのだ・・・が。
まあ、以前国道からこの地を見たときも、とても自転車を抱えて通り抜けできるようには見えなかったから、予想はしていたけど。
でも、くやしい。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 47 無念。
相棒も置いてきたことだし、引き返そう。

4-2 初代樋曾山隧道

角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 48 さて、二代目と三代目が並ぶ場所へと戻ってきた。
地図には初代隧道が描かれておらず、また、周辺の地形が大きく改変されていることもあって、初めはすでに消滅したのかと思ってしまった。
初代隧道は竣工直後に内部が崩落したという情報を得ていたのもそう考えさせた一因だ。

いったんはあきらめて帰りかけたのだが、やや上り坂になった帰り道の途中、ふと足元が気になった。
ちょっと戻ってみてみると・・・
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 49
Bingo!!
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 50 二代目も十分に古隧道の風格が漂っていたが、これはそれに輪をかけて古い。
劣化したコンクリートは剥離しかけており、部分的に内部の砂利まで見えている。
帰宅後、竣工直後の初代隧道の写真を見たが、確かにこれが初代隧道の今の姿あった。

ほとんど土管のような、直径1メートルほどの狭い隧道からものすごい勢いで水が吹き出している。
断面積の広かった二代目隧道はゆったり、だが大量の水が流れていたが、ここは激流に近い。
ただ、どう見ても水深は浅く、仮に足をすくわれても流されることはないと思われる。

ただの流木なのか、釣り人が往来用に設置したのかわからないが、隧道前にはいくつもの枯れ木が並べられ、 一応向こう側にわたることができるようになっている。ホントに"一応"だが・・・
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 51 こんな橋というかなんというか、ただの丸太。
木の上にもわずかながら水が流れており、非常にすべる。
平均台並みの幅しかなく、水で滑る上に丸太の上はバランスが悪い。
カニ歩きで渡らざるを得ないのだが、危うく転落しかけた。
せめて水深を確かめてから渡るべきであったと、自省。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 52 その途中で頑張って撮りました。

断面積は二代目隧道の数分の一であり、内部はほとんど見えない。
内部で崩落があったというが、さすがにそれを見ることも不可能だ。
というか、えらい勢いで水が流れ出しているのだが、ホントに崩落してるのだろうか?
流石に修復したとは思うが、こんな狭い隧道にもぐっていったのか・・・
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 53 一通りの隧道を堪能し、相棒とともに先ほど渡れなかった国道へ向かう。
目の前に見えていた道なのに、その地に立つには延々3キロ以上も山道を迂回しなければならない。

発電所計画が霧散した今、国道がわざわざ角海浜を迂回する必要性もなくなったわけだが、今のところ路線付け替えを検討しているという話は聞かない。
それどころか、建設予定地の跡地利用についても全く白紙のままである。
この地が人と歴史に振り回されるのはまだ続きそうだ。

4-3 計画の置き土産を登る

角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 54 山へ登る国道には二つの長大トンネルが存在する。
第1回で集落から山を越える道がかつての目抜き通りであったとお伝えしたが、その道が二つのトンネルの中間付近に通じていた。
もっとも、現在では直接その道の存在を示すようなものはない。

二本のトンネルに挟まれたわずかな谷間からは集落跡が見える。
もしも計画が達成されていれば、ここから原子力発電所が見えたことだろう。
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画 55 もうひとつのトンネル、南側のそれはそのものずばり角海トンネルというが、これを出ると、直後に急カーブをもって海へと戻る。
この線形はどう見ても危険であり、実際に事故も多い。

そのまま道なりに下っていくと、すぐに海が目の前に迫る。
その脇には、先ほど渡れなかった道の先が見えた。
といっても、やはり海沿いにまともな道はない。
山に迂回していたようでもあるが、今となってはその痕跡はこちら側にも見当たらない。

かつて、角海浜から南へ行くには荒磯を通ったり、山を越えたりと苦労が多かったことだろう。
特に冬場の日本海は大荒れであり、命の危険もあったはずだ。
その苦労に比べれば、自転車で3キロの迂回路をキコキコ登ることなど、当時の人から見れば笑われるほどの苦労であるに違いない。


往時の情景を想いつつ、私はこのまま間瀬集落をすぎ、遥か南、中永隧道未探索区間を目指した。
角海浜の発電所建設の是非を巡って町を真っ二つに分けた巻町も、平成の大合併のあおりを受け、平成17年10月9日をもって新潟市に編入合併、消滅した。
巻町はかつてこの一帯の中心地として栄えたこともあったが、政令指定都市を目指す新潟市の一部として生きる道を選んだのである。

ある日の新聞に載っていた旧巻町民の言葉が印象的であった。

「原子力発電所ができていれば、新潟市の外れの一角ではなく、"巻市"として独立できたかもしれない」

その計画に掛けた住民たちの想いは、われわれ部外者には窺い知れぬほどに、深い。
[ 05' 7/17 訪問 ] [ 05' 12/23 作成 ]
前の記事へこれより先の記事はありません
ひろみず http://d-road.sytes.net/ webmaster@d-road.sytes.net
角海浜隧道 消えかけた隧道と消えた計画1234