続・松代町の雪中隧道 to the deeper 2

概要

続・松代町の雪中隧道 to the deeperの地図
机上調査により予想された第二雪中隧道坑口は確かに存在した。
問題は、もうひとつの坑口はどこなのか、だ。
その坑口とは、第一雪中隧道内部の分岐がそうであると予想する。
それを確認するために、闇よりも暗い闇からの呼び声に、耳を傾けることにした・・・

2-1 人目を気にしてちゃあ、探索なんてできないんだよ!

続・松代町の雪中隧道 to the deeper 16 ふと見上げると、坑口上部には木々に隠れて雪崩防止柵が設置されているのが見えた。
国道が現役だった時代のものだろう。

雪崩防止柵は飾りで置いてあるわけではないわけで。
かつて、究極の雪崩対策として掘削されたという隧道の内部にさっさと入らねば。
続・松代町の雪中隧道 to the deeper 17 旧国道の路盤からの取り付け道路はほとんど道路といえるものではなく、高さはないが急な斜面を登る必要があった。
もはや「うっすら」とは形容できないほど雪が積もった斜面のせいで、登りきるのは結構苦労した。
隧道内から流れ出る水流がこのあたりの地面を削ってしまったようだ。
続・松代町の雪中隧道 to the deeper 18 前回藪に阻まれて進めなかった斜面を振り返って撮影。


前回の探索により、第一隧道内部から見た分岐の先は水没していることが判明している。
そのため、今回はその対策としてネオプレーンの靴下を用意してきた。
坑口付近で登山リュックから靴下やそれ用の靴、ハーフパンツを引っ張り出し、そそくさと着替える。
真っ白い雪が深々と降りしきる廃隧道の坑口で、パンツ姿になって着替える男・・・
現道からは死角になるとはいえ、どう見ても変態です。

2-2 真っ黒な声に応えてみる

続・松代町の雪中隧道 to the deeper 19 およそ一ヶ月前に第一雪中隧道内部に入ったときは、冷気を感じたものだ。
しかし、今回は坑口をくぐった途端、ムワッとした熱気を感じた。冬用の装備では汗ばむほどの熱気だ。
第一雪中隧道は一直線に貫通しているのだが、断面が狭いせいか、風通しはひどく悪いらしい。


件の洞内分岐は、坑口の目と鼻の先にある。
続・松代町の雪中隧道 to the deeper 20 ・・・聞こえる・・・聞こえるよ・・・

呼んでいる。俺を呼んでいる。
先の見えない真っ暗な闇の中から、何かが語りかけてくる。
その声は不気味でもあり、誘うような妖しい美しさをも持っている。

今だけは・・・この声を聞いてみよう。
その声の主が、この先に続く暗黒の穴が、本当に私の求める第二雪中隧道なのか否か、どうしても知りたい。この目で見てみたいのだ。
続・松代町の雪中隧道 to the deeper 21 闇の呼び声は、きっと特定の人間にしか届かない。
それは「好奇心」という抑えきれない欲望が強すぎる人間だけだ。
呼び声と内なる欲望とが合わさったとき、私は恐怖に打ち勝って一歩を踏み出せる。

洞内を満たす水を掻き分ける音が、ことさら大きく響いたような気がした。
続・松代町の雪中隧道 to the deeper 22 この水がいったいどこまで続いているのか、全く見当がつかない。
前述の通り、ある程度は水没に耐えられる装備をしているとはいえ、その装備も腰までが限界。
果たしてどこまで行けるものやら。


もしもここが予想通り第二雪中隧道ならば、その延長は約400メートルだ。
普通に行けば10分程度といったところだが・・・坑道である可能性も考え、タイムリミットは30分とする。
これを過ぎてもまだ閉塞地点が見えなければ、おそらく延長は400メートルでは済まない、本物の坑道と結論し、何が何でも引き返すことにしよう。

2-3 犬伏炭坑跡?

続・松代町の雪中隧道 to the deeper 23 今のところ、水深は30cm程度。
しかし、それも時期によっては相当深くなるらしく、壁には水の跡がついている。

その水中には、壁から剥がれた電線や、倒壊した支保工などがそこかしこに沈んでいた。
水は澄んでいるものの、動くたびに底の泥を舞い上げ、うっかりすれば踏んでしまいそうだ。
水深確認用として坑口前で拾ってきた1メートルほどの木の棒で足元を確認しながら進む。
続・松代町の雪中隧道 to the deeper 24 第一と同じく、こちらにも往時には灯りが設置されていたらしく、壁に這わされた電線はときどき分岐して電球へとつながっている。
やはりここは第一雪中隧道の延長たる、第二雪中隧道なのだろうか?
続・松代町の雪中隧道 to the deeper 25 水深は徐々に浅くなり、分岐から50メートルも行かないうちにとうとう水はなくなった。
そこで足元に見たのは、異様な数の足跡。
ありとあらゆる方向を向いて、大量の足跡が泥に刻まれていた。
その方向も数も、とても人一人が行って帰ってきたようなものではない。
しかも、見たところさほど古いものではなさそうだ・・・

一体誰が何のために、水没部分を越えてまでこんなところに来て、さらにはこんな膨大な数の足跡を残していったのだろうか・・・?
静まり返った洞内に、答えとなりそうなものは無かった。
続・松代町の雪中隧道 to the deeper 26 大量の足跡をしげしげと眺めながら先へ進む。
すでに振り返っても入口の明かりはなく、距離感は完全に喪失してしまっていた。
ひどく長く感じる暗闇の世界も、時計を見るとまだ2分しか経っていない。

もしも・・・もしもこの道が第一雪中隧道入口にあった看板が示す「炭坑跡」だとしたら・・・この闇はどこまでも続くだろう。
写真の先で道は右に曲がっているらしく、一直線ではない複雑な内部構造が垣間見えた瞬間、震えが来た。
なによりも、恐ろしいのは「分岐」だ。
そして、あろうことかそれが現れてしまったのである。
写真では分かりにくいが、目の前の左側の壁に、それがあった。
直角に分岐する道の先を、恐る恐る覗いてみた。
続・松代町の雪中隧道 to the deeper 27 「ホッ・・・」
としていいのか?いや、正直してしまったのだからしょうがないじゃないか。

┫字型に分岐した道の先はすぐに土砂で塞がれていた。分岐しても、塞がっていれば、道に迷うことはない。
大量の土砂で埋められたそこは、どうも人為的に封鎖したもののようだ。
確認できる奥行きは十メートル程度で、その場所で天井まで土砂が積まれていた。
また、幅はこれまでの洞内よりも1.5倍ほど広いような気がする。
続・松代町の雪中隧道 to the deeper 28 さて、ここは何だろう。方角的には外のほうへ向かっていることになりそうだ。
土砂には様々なものが一緒になって埋まっている。
それらを一つ一つ見ていけば、何か答えが得られるかもしれない。
続・松代町の雪中隧道 to the deeper 29 砕け散った発泡スチロールに赤いペンで書かれた文字は「山」「ま」「る」だけ判別できた。

「"山"・・・か・・・」

この暗闇にもぐる前から頭に取りついて離れない不安・・・第一雪中隧道から分岐した先が坑道である可能性・・・
そうではないことを期待してもぐりこんできたわけだが、だとしたら第一雪中隧道の入り口で見た「炭坑跡」とは一体何を指すのか?
ひょっとして、ここの分岐こそが、「炭坑跡」=坑道への分岐そのものなのではないだろうか?
幅が多少広くなっているのも、坑道という使命があったからではなかろうか?
続・松代町の雪中隧道 to the deeper 30 もうひとつ、その予想を強くしたものが、この看板。
木の板に墨で「橋本屋」と書かれている。
こんなもの、炭鉱閉鎖後にわざわざ外から持ち込んできたとは思えない。
屋号のような独特な単語から想像するに、ひょっとしてこれは鉱区などを区分けするのに使われたんじゃなかろうか?
看板の下部10cmほどには土に埋まった跡があり、土中に突き刺して使用されていたらしい。

そこら中の物が半ば土砂に埋まっていたり、砕け散っている中で、この看板だけは、人為的に「安置」されていた。
あたかもその様は、閉山という「炭坑の死」にあたり、その墓場たる閉鎖坑道に添えられた一輪の花のようであった。
ある一人の坑夫が、自らの戦いの場でもあった坑道を封鎖するとき、せめてもの手向けとして残していった物なのだろうか・・・
誰もいなくなった廃隧道の奥底にぽつんと残された看板は、異様なほどの存在感を放っているように感じた。
この洞内分岐が炭坑跡なのかどうか、いまや知るすべは無い。
この場所の正体はわからなくても、まだ残された未知なる可能性はある。
それを知るために、私は再び暗闇の奥深くへと進んでいった。
[ 07' 11/23 訪問 ] [ 07' 12/11 作成 ]
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