出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 1

概要

今回はミニ廃報に入れるかこっちに入れるか迷ったのだが、ミニにしてはちょっと分量が多いので、通常のレポートタイプでお伝えしたい。
ただ、背景的なことはあまり調べていない上、しっかりした探索ではないので、「ミドルレポート」として気楽に見ていただきたい。

きっかけは読売新聞(オンライン版)の記事、「出口なき」トンネル工事、土地未取得で4か所中断を目にしたことである(2ヶ月[執筆時]も前の記事でごめんなさい)。
<上記リンク先消失のため、以下に一部を引用します>
国道のトンネル工事で、国が出口付近の土地を取得しないまま着工するケースが相次いでいる。

会計検査院の調査では、2006年度までの3年間に全国69か所で見切り発車を確認、
このうち北海道、新潟、長崎県の計4か所で、地権者の反対などで最長2年10か月間も工事が中断した。
検査院は「土地取得の見込みが甘い。用地確保の見通しをつけてから着工すべきだ」と指摘しているが、
所管する国土交通省は「効率が悪い」と難色を示している。

検査院によると、国が04〜06年度に工事費を支出した、177か所のトンネル工事のうち約4割の69か所で、
出口付近の土地を取得する前に着工していた。
65か所は着工後に用地買収を終えたが、4か所は用地取得できずに工事が中断、
掘削機を撤去する費用などだけで計約7000万円が余分にかかる計算だ。

(中略)

検査院の指摘を受け、国交省は全国の地方整備局に対し、トンネル工事に関係する部局の連携を緊密に行うよう指示した。
しかし、工事の見切り発車については「用地をすべて取得してから着工するのは効率が悪い」としており、改める考えはなさそうだ。
この記事を見るまで気がつかなかったのだが、そこは常日頃の道路フリーカーとしての強運といったところか、 工事が中断したという4件のうちの2件については傍を通ったことがあり、「なんだこりゃ?」と思いながら写真も撮っていた!

いわば未成線ならぬ「未成道」ともいうべきもので、おまけにトンネルときてはなかなか貴重なものと考え、今回、その2件について簡単に紹介させていただく。

1-1 新ワッカケトンネル

新ワッカケトンネル
ひとつめに紹介するのは「新ワッカケトンネル」。
北海道は余市郡余市町にあり、いまだ記憶に鮮明に残る豊浜トンネルの崩落事故現場にも程近い。

この場所を訪れたのは大森大橋の探索と同じ平成19年8月15日で、JR函館本線余市駅から実家まで輪行しようと帰路に着いていたときだった。
出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 1 大森大橋側(西側)から走ってくると、異様な光景に出会う。
現在いるのは国道229号で、国道が左にカーブして岬のトンネルに突っ込む一方、右手にある"ノッペラボー"のでかいトンネルが凄まじい存在感を放っていた。
出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 2 上の写真から道なりに進んだ、本来の国道のトンネルがここ、「ワッカケトンネル」である。
延長は500メートルほどだが、カーブしていて見通しが悪く、"幅員狭し"という単語が各所に踊り、"警笛鳴らせ"の標識と緊急用の信号までもが完備されたオイシイ隧道なのだ。
竣工は昭和31年で、見た目どおり古参の隧道である。

観光道路として交通量も少なくない上、この辺の集落を結ぶ道としては事実上唯一の道で、トラックやバスなどの大型車も多い。
このあたりの事情に関しては大森大橋の項でも少し触れたので、ぜひ参照して欲しい。


そんなわけでこの隧道に代わるトンネルが計画されたのは当然のことだろう。
そして、それこそが件の新ワッカケトンネルであり、先ほど見かけた不気味なトンネルがそうだ。
出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 3 少し戻って現道との分岐から新ワッカケトンネルを望む。
塗りたくられたコンクリートの中央にぽっかりと暗い穴を開けるその姿は、空虚以外なんと表現したらよいのか。

ここからは簡素な車止めで塞がれていたが、工事車両や関係者の姿は全くない。
訪れたのがお盆真っ最中であったとはいえ、あまりにも何もない周辺にはさすがに私の妖気アンテナも「父さん!」と叫んだ。
出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 4 車止めをよっこらしょと越え、接近する。探索の時点ではこのトンネルの正体はまったくわからなかった。
重機のひとつでも置いてあれば、あるいは工事現場でよく見かける幕で覆われていれば、「工事途中か・・・」とスルーしていたに違いない。

ただ、この日は国道の各所で、不要になった旧トンネルを塞ぐ工事現場を何度も目撃していたため、ここもそうである可能性は少し考えていた。
なにしろウエンチクナイトンネルですら今まさに塞がれようとしていたわけなので、 この規模のトンネルが放棄されようとしている可能性も0とは言い切れまい。
出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 5 このトンネルがまだ未完成であることに気づいたのはこの神棚(?)を発見してからだろうか。
出来上がったトンネルにこんなものがあるはずもないし、それまで見てきた閉塞工事現場にもこの手のものは無かった。

すぐに工事中であることを把握し、通常なら工事現場からは速やかに立ち去るところだが、工事"中"というところに非常に疑問があった。
なにしろ、足元の砂利にはかなりの勢いで雑草が生えるほど、工事らしさがなかったのだから。
出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 6 坑口に立ってその異様極まる感触を文字通り肌で味わうことになる。
中になんらの設備も無いとか、そんなことよりもっと衝撃的な感触を、まだ私の体は覚えていたらしい。

それは稲葉隧道で感じたあの感触・・・足元に静かに伝わる冷気。

「閉塞してるな・・・」
出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 7 坑口から振り返って撮影。

坑口を塞ぐ金網も簡易的なもので、乗り越えるのは全く問題がない代物だった。
しかし、いくら工事停滞中とはいえ、管理物件であることには違いないはずで、侵入はさすがにやめておいた。


以下に元記事にあった該当部分を掲載しておきたい。
・・・豊浜トンネルから約2キロ離れた山林に04年3月、国道229号線の「新ワッカケトンネル」(910メートル、総事業費約28億円)が着工されたが、 05年6月以降、工事はストップしたまま。出口付近の用地約2600平方メートルの大半を所有する漁業男性(48)が、 トンネルが完成すると国道が町道となり、道路舗装や除雪の頻度が減るとの理由で売却を拒否しており、現在、道収用委員会の裁決を待つ状態だ。
10' 2/22 追記

平成22年3月2日に新トンネルに切り替えられるようです。
プレスリリース:http://www.ot.hkd.mlit.go.jp/d3/hodo/ot100204-1.pdf(PDF)

1-2 当麻トンネル

当麻トンネル
もうひとつは新潟県にあり、県内の読者諸兄の中にもきっとご覧になった方もあるだろう。
それは東蒲原郡阿賀町の国道459号にある、当麻(たいま)トンネルである。
この場所を最初に訪れたのは平成16年のことになるが、自然豊かで穏やかなこの道が気に入り、平成19年11月4日、紅葉狩りのつもりで出かけた。
出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 8 現場はJR磐越西線日出谷駅から500メートルも離れていない。
この日、磐越西線で走っていたSL磐越物語号の雄姿を日出谷駅にて存分にカメラに収めたあと、会津方面へと東進していた。
平成16年の時点でトンネル工事が行われていたことは知っており、「そろそろ出来てるかな〜」などと考え、 昔通った道が旧道落ちしていれば、そこを探索していくつもりだった。

その心積もりが外れたのは、現場にたどり着いてはじめて分かった(左が当麻トンネル、右が現道)。
そして、ここも工事中というには妙な空気が漂っていた。
出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 9 新ワッカケトンネルが「未完成」という点で違和感を感じたのに対し、当麻トンネルは「完成」していることに違和感を感じた。
いや、もちろん公式には出来上がっていないのは間違いないが、なんというか、周辺の設備はもうほとんど完成形をしていて、 中央線を引けばすぐにでも車で通行できるような雰囲気なのにも関わらず、相変わらず通行止めのままであることだ。

取り付け道路周辺の工事は今でも行われているらしく、重機や飯場は近くに存在する。
出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 10 ポータルには飾り石も取り付けられており、打ちっぱなしのコンクリートだった新ワッカケトンネルとは異なり、不気味さは微塵も感じられない。
反面、神棚といったアイテムなども見当たらない。
扁額があるべき位置がすっぽ抜けているのが、ここがやはり未完成であったことを教えてくれた。
出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 11 実は完成形をしていたのは外側だけで、内部は照明どころか舗装すらされていない。
ここも坑口を塞ぐ柵は簡素で乗り越えに支障は無いものだが、侵入は自重。

新聞記事によると全長は1330メートルで、出口側20メートルが掘削できずに平成17年2月以来工事がストップしてしまったとのことである。
しかし、今回の訪問から一ヵ月後の平成19年12月には再び工事が再開されたという。
なんともうまい時期に訪問したものだ。
出口なきトンネル工事 国道229号新ワッカケトンネル 国道459号当麻トンネル 12 ちなみに当麻トンネルによって旧道落ちする部分はこんな感じ(平成16年撮影。おにぎりは19年時にも存在)。
左側から迫る山と右手にある阿賀野川に挟まれた狭い道で、国道なのに離合地点が設けられた姿は紛うことなき「酷道」そのもの。

もっとも、自転車には狭いどころか楽しい道で、こんな道に惚れこんで、3年の時を経てここを訪れたのは事実。
沿道には建物も接続する道もないため、旧道落ちすれば廃道となることは避けられまい・・・
旧道落ちが沿道の運命を変えてしまった事態をいくつも目にし、トンネル工事が予想外に長期化した事態をいくつも耳にしてきた私には、 地権者・国交省・検査院の、どの言い分も分かってしまう。
思惑が錯綜する中、その結果生じてしまった哀れなノッペラボーのトンネルに視線を向けることは、 三者にとってこれ以上ない無言のメッセージとなるに違いない。
[ 07' 8/15、07' 11/4 訪問 ] [ 08' 3/30 作成 ] [ 10' 2/22 追記 ▼該当箇所にジャンプ ]
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