国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 3

概要

国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群の地図 これまでの区間で、太平隧道(対応する旧旧道は永豊1号隧道)、汐見隧道(対応する旧旧道は永豊2号隧道)、わすり隧道(対応する旧旧道は永豊3号隧道永豊4号隧道)を探索してきた。

ここから先の区間は複雑になる。
大正時代、ここから先には11本の隧道が掘られた(永豊5〜15号隧道)。
昭和30年代の改築工事により、11本の隧道は覆道で連結することによって統合されたり、あるいは開削されるなどして、4本にまで数を減らした。
同時に永豊○号隧道という呼称も失われ、4本の隧道にはそれぞれ鷹の巣隧道(初代。延長361メートル)、見晴隧道(延長60メートル)、島小牧隧道(延長126メートル)、床丹隧道(延長18メートル)と名づけられた。
さらに昭和40年代にはさらに改築工事が行われ、これら4つの隧道が統合された結果、延長624メートルの鷹の巣隧道(二代目)一本にまとめられた。
覆道も連結する昭和40年代の4つの隧道はどこからどこまでがそれであるかを断定できないため(延長を測定しながら進めば不可能ではないが)、主に大正時代の永豊隧道群を探していく。

3-1 鷹の巣隧道坑口に刻まれた歴史

国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 44 前回のわすり隧道からすぐのところにある、鷹の巣隧道の豊浜側坑口。
「鷹の巣隧道」の名称は永豊隧道群を全て含めた意味合いで使われることがあり、いわばこの旧道区間の代表格といえる。


ポータルの左には銘版が2枚あった痕跡があるが、竣工年が書かれていたであろう上の銘版は失われていた。
しかしながら残っている下の銘版が大理石製であることから、汐見隧道の例を見る限り、昭和30年代の竣工当時のものと思われる。
なお、上の銘版は昭和60年頃の現役時代の写真(「北海道の道路トンネル 第1集」より。原図はカラー。)を見てもすでに存在していない。
最初から無かったとは考えにくいので、比較的早い時代に何らかの原因で失われたようだ。
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 45 さあて、興味はここから長く続く鷹の巣隧道に吸収された、大正時代の素掘り隧道だ。
坑口に向かって右側に、かなり細い隙間となって素掘りの空間が存在した。
これこそ、永豊5号隧道である。
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 44 中が気になる?
だがちょっと待ってほしい。

この写真は2つ上の写真でも使用した、鷹の巣隧道の豊浜側坑口である。
なんてことのない写真で坑口全体を捉えた写真もこれしかないものの、帰宅後にこの写真が極めて重要な意味を持った。
次の写真を見てほしい。
島牧村勢要覧1963年版
この写真は「島牧村勢要覧 1963年版」から引用したものだ。
気づきましたか?
鷹の巣隧道の今昔1
同じですね。
相当変わってしまった海岸線の地形にも、偶然ではない特徴的な地形が半世紀の時を越えて残っていた。
特にそれぞれの写真の右側に写る「切れ込みの入った岩」は、見紛うこと無く一致する。

ちなみに、「島牧村勢要覧 1963年版」の写真には「鷹の巣隧道」とのキャプションがあるものの、昭和30年代の改築前の姿であり、「永豊5号隧道」とするほうが正しかろう。


さらにいうなら、鷹の巣隧道今昔物語はまだ終わりませんでした。
西島牧村勢要覧 昭和27年度版
これはなんでしょうね?
切れ込みの入った岩、ありますよね?
でもちょっと、1963年版の写真とも違うように見えますね?
鷹の巣隧道の今昔2
正体はさらに古い時代の永豊5号隧道でした(西島牧村勢要覧 昭和27年度版より)。
ここでの注目は、1963年版(昭和38年)にあった坑口よりも一回り小さいことである。
どうやら一連の永豊隧道群は、素掘り時代に拡幅工事を受けている。

これが前回考察した永豊隧道群の拡幅工事の証拠だ。
この手の工事は文献的に記録されることは稀で、本物件も例外ではない。
2冊の史書の発行年から考えるに、拡幅工事は昭和30年頃と思われる。
永豊1号隧道の覆工設置工事も同時期と考えると、あの木造覆工も昭和30年前後の作品だろう。
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 46 現在の永豊5号隧道坑口といえば、その大半を鷹の巣隧道に奪われて窮屈そうだ。
そんな窮屈な坑口を抜けずとも、鷹の巣隧道の側壁には横穴が開けられ、永豊5号隧道内部に入ることができるらしい。
隧道があったという歴史を切り捨てない、惚れてしまいそうな設計だ。
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 47 永豊5号隧道内部から先を写す。

出口は路盤がなくなっており、旧道工事の際に切り取られたか、自然に崩落したか・・・
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 48 まあどちらにせよ、5号隧道の出口は鷹の巣隧道覆道部分(便宜上、レポートでは鷹の巣隧道に含まれる覆道を豊浜側から順にA、B、C、・・・と番号を振る。これは覆道Aだ。)に続いている。
このまま覆道から鷹の巣隧道に入った。

3-2 覆道Aと永豊6号隧道

国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 49 にょっ!!!
シブい!!!

外から見た重厚なコンクリート覆道かと思いきや、内部は錆びまくった鉄骨で補強されていた。
これぞ・・・「廃」って感じでしょう。
たまらん。
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 50 鉄骨の補強は覆道部分のみ。
その先で再び地中に潜って20メートルほど進んでいる。
ここは海側に一切の隙間が見当たらず、存在したはずの永豊6号隧道は完全に鷹の巣隧道に吸収されてしまったらしい。
6号隧道は記録上の延長が19メートルとあり、この地中区間の目測とほぼ等しい。

3-3 覆道Bと永豊7号隧道

国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 51 6号隧道跡を過ぎると、再び覆道区間(覆道B)となる。
ここには補強がなく、独特の形をした柱の間には、奇岩が連なる海岸線が見えた。
いつまでも足を止めていたい風景が覗いている。

それに比して、今の道路の構造的美的センスの軽薄さといったらどうだ。
最近の道路ほど、無個性でつまらないものはない。
5,000メートル近いトンネルとか、自転車には拷問以外の何物でもない。
しかもそんなトンネルに限って自動車交通量は5分に1台とかだったりする。
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 52 覆道Bの延長は短く、20メートルくらいだろう。
その先はまた地中に潜るが、ここも海側に隙間なし。
すなわち、永豊7号隧道もまた鷹の巣隧道に吸収されてしまったようだ。

7号隧道の延長は31メートルと記録されており、これもまた現在の地中区間の延長とほとんど差はなさそう。

3-4 覆道Cと永豊8号隧道

国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 53 7号隧道跡を抜けると、その先は覆道Cである。
覆道Aと同様に鉄骨で補強されており、年季の入った錆が廃美に彩りを添える。
北海道でこのレベルの廃道に出会ったのはずいぶん久しぶりな気がするぞ。


覆道Cの延長は20メートル程度で、その先はまた地中に潜っている。
あれは永豊8号隧道のあった場所だが・・・はて、今に残るか否か。
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 54 覆道Cからカメラを突き出して8号隧道がありそうな海側の壁を写してみた。

写真を撮ったときには「素掘り隧道無し」と結論している。
・・・うん、ないよ、ね・・・?
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 55 というわけで8号隧道跡たる地中区間。
延長はこれまでの鷹の巣隧道の中で最も長く、40メートルくらいありそうだ。

廃隧道としての性質は、至ってシンプルである。
要するに、「何もない」といわざるを得ない。
鷹の巣隧道に入る以前も含め、照明設備があったのは太平隧道のみで、他には何もない。
思うに、これだけ横穴が開いているのも、風景+採光の意味合いが強い。
何しろ横穴の先が素掘りの旧隧道の中であったとしても、ぶち抜いているくらいなのだから。

3-5 覆道D

国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 56 8号隧道跡から出た先も覆道で、これは覆道Dと名づけよう。
覆道Dへの接続地点には土砂崩れが起こっており、坑口の海側を撮影することが簡単にはできなかった。
おかげでこちらから旧旧道を確認せず、「永豊8号隧道現存せず」の結論を出している。
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 57 覆道Dの区間はこれまた鷹の巣隧道では最長となる。
全体的に左にカーブしており、見える範囲は全て覆道である。
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 58 手前部分にはあの西洋美術のような柱が立ち並ぶのに対し、10数メートルほど奥のほうではより現代のものに近い一般的な覆道になる。
このことから、時代の異なる覆道が連結されていることがわかる。
おそらく、昭和30年代の改築によって延長361メートルの初代鷹の巣隧道が出来上がったときは、このあたりまでがそれであったのではなかろうか。
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 59 新旧の覆道の接続地点の隙間から外に出て、先のほうを写してみた。
正面の雪の斜面の上に暗い素掘り隧道の坑口が見えており、大正時代の素掘り隧道が残っているようだ。
あれが永豊の何号隧道かは後ほど報告しよう。


次の写真は、正面の雪の斜面を登って振り返って撮影したものである。
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 60 右にあるのが覆道D(の新設部分)。
振り返って撮影したものなので、写真の奥で覆道Dが地中に没する部分が永豊8号隧道跡・・・のはずだった。
その部分を拡大↓
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群 61 暗ぇ、暗ぇよありゃあ・・・
永豊5号隧道から永豊8号隧道の配置
そろそろ読者の方にはどこに何があるのかわからなくなってきたかと思う。
実際自分自身でも書いててごっちゃになってくるくらいだから・・・
どう見ても狭い。
つ、詰まったりしないかな・・・?
[ 12' 3/23 訪問 ] [ 12' 5/3 作成 ]
前の記事へ次の記事へ
ひろみず http://d-road.sytes.net/ webmaster@d-road.sytes.net
国道229号 大平トンネル旧旧道 永豊隧道群12345