国道229号 大森大橋と大森トンネル 2

概要

国道229号 大森大橋と大森トンネルの地図 なんなんだここは。
初代、二代、三代、四代と、道の代替わりが凄まじすぎる。
特に三代目の道から四代目への変化は、わずか二年に過ぎない。
どう考えてもこれは異常だ。

2-1 2年で役目を終えたウエンチクナイトンネル坑口

国道229号 大森大橋と大森トンネル 18 新大森トンネル(四代目)の内部でウエンチクナイトンネル(三代目)が分岐し、そこから外へ出ると、横には二代目と思しきトンネルが控えていた。
後の調べで分かったことだが、二代目のトンネルは「とようみトンネル」といい、この先170メートルほど地中を進んだ後、海岸に出るらしい。
しかし、出口付近は切り立った崖の下で落石が多発することから、竣工からわずか10年程度でルート変更が検討され、平成13年度から三代目であるウエンチクナイトンネルの工事が始まった。
つまり、ウエンチクナイトンネルは平成16年の台風18号以前から工事は行われていたわけで、開通直前に被災したことになる。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 19 とようみトンネルのほうはというと、坑口こそ口をあけているものの、奥のほうで封鎖されている。
ビニールシートのようなもので覆われているが、中で何をやっているのだろうか?
どうせ密封して封鎖するのだろうが、単に坑口をコンクリートで固めておしまいというわけではないらしく、塞ぐときにはそれなりに内部に手を加えるのか。


・・・それにしてもこの道の新陳代謝の速度は速すぎる。
普通、一度道が開通したら、30〜40年は使われるだろうに、初代も二代目も20年も持っていない。三代目にいたっては2年だ。
さすがに三代目は特殊な事情がありそうだが、この速すぎる回転速度は、工事の見込みが甘かったからなのか、それとも積丹の自然が想定以上だったからなのか?

───思うに、平成8年、この積丹半島の北東部分で起こった、豊浜トンネルの崩落の悲劇が尾を引いていると思われる。
実際、二代目を放棄してルート変更が検討されたのは、平成8年の調査に因るという。
積丹半島の各地で見られるバリケードのような旧道封鎖がそれを示すように、行政は非常に神経を尖らせているに違いない。

2-2 大森大橋

さて、相変わらず現在地がよく分からない。
本来の目的地である大森大橋は大森トンネルを抜けた先にあるはずで、まだ先と思われた。


───が。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 20
特盛!!!
国道229号 大森大橋と大森トンネル 21 じゃない、大森大橋!!
正直、これを見たときは「お前がなぜここにいるんだ!」というのが素直な感想だった。
「大森大橋は大森トンネルの先にある」というのがその理由でもあるが、なにより、ここは塞がれる予定のウエンチクナイトンネルと旧大森トンネルに挟まれた場所だ。
イコール、廃道決定の場所ということになる。

えっ、こないだ復旧させたと聞いたのに、
大森大橋、捨てんの?!
大森トンネルとウエンチクナイトンネルの地図 ───帰宅後の調査によると、どうやら大森大橋は先の台風の影響により、放棄されることになったらしい。
平成13年度からウエンチクナイトンネルが大森大橋と接続するような形で掘削されていたことから分かるように、 本来(台風がなければ)、大森大橋自体は今後も供用される予定だった。
しかし、平成16年の台風が橋に残した爪痕はあまりにも大きかった。
仮橋で復旧させたものの、その場所に新しい橋を架けることはなく、南の大森から北の柵内まで、一本の長大トンネル(新大森トンネル)で結ぶことで本復旧としたのである。
その結果、昭和60年に完成した大森大橋はおよそ20年という若さで放棄。
さらには、工事中であったウエンチクナイトンネルは仮橋の完成に合わせて開通するも、本復旧に伴い、一部区間は放棄されることになった。

少なくとも、仮橋やウエンチクナイトンネルが完成した平成16年12月の段階では、まだこれらの構造物を放棄してまで新ルートに変更することは考えていなかったと思われる。
これは、当時の仮復旧を伝える記事に新ルートのことが全く触れられていないことや、ウエンチクナイトンネル内部の放棄箇所の設備が整っていたこと(銘版がつけられているなど)から想像される。
仮復旧後、仮設の橋を本格的なものに変えるのか、長大トンネルによってルートを変更するのかが検討されたのだろう。
新大森トンネルの発注は翌年の3月である。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 22 海上を渡る橋ということもあって、開通当時には新聞でも取り上げられるほどに歓迎された大森大橋。
昭和60年竣工なら十分に新しい部類に入る。
それがたった20年で、天災という形でその使命を終えようとは、いったい誰が想像しただろうか。
周辺住民は、いや、そのニュースを聞いた遠方の私でさえも、「まさか」と口をそろえたのである。

二度と人の目に触れることのない親柱の標識に、「平成16年9月 天災により没」そんな文字が浮かんで見えた。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 23 大森大橋は延長が500メートル近くもあるが、その全部が落橋したわけではなく、南側の百数十メートルあまりである。
残存部分と落橋部分の境目には車止めが置かれていた。
それを乗り越え、振り返って撮影。

右側のウエンチクナイトンネルが口をあけ、大森大橋から走る車を飲み込んでいく光景は、たった2年しか続かなかった。
立派な銘版も備え、あと何十年も活躍するはずだったウエンチクナイトンネルの坑口は、まもなく塞がれる。
2年というあまりにも短い歴史は、密閉される新トンネルには軽すぎる歴史かもしれない。
せめて、これから新大森トンネルとして生きる残区間の安からん事を。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 24 放棄される大森大橋。
3年前に仮設橋として復旧されたあと、ついに本格的に復活することはなく、いまだに仮設のままだった。
路面の色が変わっているところより先が、その日落ちてしまった橋桁部分、現在の仮設橋の区間だ。

鈍色の空と同じ色の、人気のない仮設の橋。
時の止まったような不思議な光景。
いや、大森大橋の時計の針は、平成16年9月8日で確かに止まってしまったのだ。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 25 仮設橋はすべて金属でできており、応急処置的な外観はまあ当然だろう。
パイプの欄干に一抹の不安を覚えなくもないが、何はともあれ一刻も早く復旧しなければならなかった事情があったのだ。
本復旧は別ルートという、「死の宣告」が下される可能性があったとしても。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 26 しかしこの仮設橋はちょっと怖い。
車で走ってもなんともなくとも、歩くのはちょっといやな感じだ。
何せ、足元も金網でできているため、海面まで数メートルが丸見えなのだ。
もちろん、「スボッ!」っといくことはないが、何か小物でも落としたらえらいことである。

また、この日は朝にフェリーで港に着いたばかりであり、船酔いのせいで何か揺れているような感覚がするのが恐怖に拍車をかける。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 27 振り返って撮影。
ほとんど垂直に切り立った断崖が、この先何キロも続いている。
最初の車道が山越えをしていたのも納得できる光景だ。

一方、この大森大橋が完成したときには、その絶景を堪能できる観光道路としての期待も大きかったに違いない。
自然の魅力を感じられた道が、自然の驚異によって粉砕されるとは・・・
国道229号 大森大橋と大森トンネル 28 その日、架かっていた橋桁は海面に落ち、猛烈な怒涛に曝された橋脚も無事ではなかったという。
補修のための工事用道路も、まだ現役のように新しい。

今のところ、大森大橋の撤去工事は行われていないようである。
橋の前後にあるトンネルを塞ぐ工事がほぼ完了し次第、大急ぎで作られた仮設区間と生き残った区間も落とされるに違いない。
台風の暴風は一夜にして橋の三分の一ほども破壊したが、人がそれをやるにはもっと時間がかかるだろう。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 29 橋の大森集落側。
さまざまな標識もまだ設置されたままで、ないのは車の姿だけだ。

また、左下の看板には釣り人向けへのアナウンスがあり、工事のため、ここに駐車しないでくれ、という内容であった。
もう、これが意味を成すことはあるまい・・・
国道229号 大森大橋と大森トンネル 30 断崖に無理やりつけたような道には、ほとんど路盤を進むようなところがなく、大森大橋の終点はそのままトンネルに吸い込まれる。
そのトンネルとは、先ほど新大森トンネルの入り口で見た、旧大森トンネルだ。
大森大橋と同時期に完成した新しいトンネルだが、ここも旧道化し、内部の明かりはすでにない。


さて、どこまで行こうか?
正直言って、新大森トンネルからウエンチクナイトンネルへと入ったときには、外へ出た時点で引き返すつもりでいた。
しかし、気がつけば洞内分岐から500〜600メートルも進んでおり、次々に現れる遺構のために引き返すに引き返せなくなっている。
ここから見て、大森トンネルの向こう側は明らかに工事中っぽい雰囲気が漂っており(だからこそ新大森トンネル脇の入り口からの侵入を避けた)、このまま進んでしまうのは気が引ける。
明かりも、まともなものは自転車のサイドバッグに入れっぱなしだ。


でも───
二度とは通れぬこの旧大森トンネル。
このトンネルも、落橋した大森大橋の道連れとなり、本来の目的を完遂することなく、封鎖されてしまうのか。

そんなことを考えていたら、いつの間にか私は真っ暗な洞内に吸い込まれていた。
[ 07' 8/15 訪問 ] [ 07' 9/15 作成 ]
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