国道229号 大森大橋と大森トンネル 3

概要

国道229号 大森大橋と大森トンネルの地図 衝撃的な大森大橋との出会いをあとに、旧大森トンネルへと入っていく。
トンネルの大森側坑口には人気があったようななかったような・・・少なくともホイホイ入っていけるような雰囲気ではなかったが・・・
行くの?

3-1 灯火の消えた近代トンネル

国道229号 大森大橋と大森トンネル 31 大森トンネル手前のロックシェードと思しき構造物には扁額があった。
旧トンネルの名は「大森トンネル」であり、先日できた新トンネルも「大森トンネル」である(柵内側はウエンチクナイトンネルから改称)。
この名前の付け方もまた、旧道の存在を抹殺するためのものなのか。
他の積丹半島の旧道がそうであるように。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 32 外から見たロックシェード内部は異様に暗く、すぐにトンネルが接続しているかのように見えた。
実際、内部に入ってすぐに、先も見えない真闇が待ち構えている。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 33 しかし、本当の大森トンネルの坑口はまだだいぶ先で、この闇はロックシェードの柱の間をきれいに封鎖してあるためだ。
越波防止のためだろうが、そのせいで中は明かりなしでは進めないほどに暗い。
わずかに漏れる光を頼りに進むしかない。
なにしろ今手元にある明かりというと、貧相な自転車のライトだけなのだ。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 34 場所によっては簡易的に塞いだだけのところもあり、こういうところではぼんやりと視界も効く。
しかし、この画像は実際の視覚よりもかなり明るい。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 35 振り返って撮影。実際にはこれくらい暗い。
入り口からは緩やかに左にカーブしているせいで、外の光はなおさら入りにくい。
そのため、両脇にはナトリウムランプが設置されており、現役を退いた今でもまだ残っていた。

たとえナトリウムランプがあっても薄暗いロックシェードから、開放的で伸びやかな大森大橋に出たときにはさぞ見事な光景が望めたことだろう。
今では長大な新大森トンネルを無為に走るだけとなってしまった。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 36 入り口から100メートル以上は進んだだろうか?暗闇の中では距離感がはっきりしない。
トンネル内とも覆道内とも区別のつかないような闇の中を進んでいると、ぼやぁっと浮かんできたのは、紛う事なき大森トンネル真の坑口であった。
猫のように広がった私の瞳をさらにひん剥いて奥を覗くと、かすかに、かすかに向こう側に明かりが見える。
が、それは一直線に出口の光が見えたのではなく、側壁に反射した光がほんのわずかに見えているだけ。
封鎖されていないのは良かったんだけどさあ・・・
国道229号 大森大橋と大森トンネル 37 貧相な明かりを頼りにもがくように周囲を照らすと、銘版を見つけた。
大森トンネルは大森大橋と同時に開通したが、これが初代なのではない。
同じく大森トンネル(大森隧道というべきか)という隧道が、かつて存在していた。
全国隧道リストには、大正12年竣工という筋金入りの古隧道が載っている。
第一回で述べたとおり、大森周辺の道路は大正9年に地方費道の指定を受けており、これにあわせて作られたものだろう。
初代の位置は調べていないが、おそらくそれは海岸に近いこの近辺ではなく、はたまた昭和40年代に開通した山越えの道でもなく、 大森集落よりももっと南側であったように思う。

初代大森隧道の延長は21メートル、今いる二代目大森トンネルは470メートル、そしてウエンチクナイトンネルを編入した三代目、新大森トンネルは2500メートルである。
大正、昭和、平成と、それぞれの時代のスケールを実感。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 38 2500メートルの新大森トンネルに比べれば、高々470メートルなんぞ、と侮るなかれ。
歩けばやっぱり長いもんだ。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 39 赤ランプの消えた非常通報装置は、まるで命の灯火が消えたかのよう。
このトンネルが完全に密閉されてもなお、彼はここにその躯を晒し続けるだろう。
風もない、音もない、闇の中で、永遠に。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 40 大森トンネルは内部で大きく曲がっているせいか、あるいは隙間を封鎖された覆道が悪いのか、風の流れは悪い。
おかげで湿潤な洞内には靄がたちこめ、現役さながらの施設には似合わない"廃"らしさが漂ってくる。

ほんの数ヶ月前まで現役だっただけに崩落の恐怖は全く感じないが、本来真闇に沈むはずのない近代的トンネルが暗闇に包まれるのは嫌な感じだ。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 41 振り返って撮影。
真っ暗です(白く写っているのは出口の明かりを反射したパイロン)。

3-2 出口・・・か?

国道229号 大森大橋と大森トンネル 42 靄のためにライトの光が弱弱しい光線となって暗闇を走る中、歩を進めていくと、ようやくにして出口が見えてきた。
ウエンチクナイトンネルで見たような、メタリックシルバーの世界。
数ある廃道の景色の中でも、こういう景色はまさに異色。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 43 出口付近でようやく明るくなり、振り返ればやっとトンネルの全体像をつかむことができた。
同時に、トンネルを包む靄も映し出された。
暗闇のメタリックトンネルと足元に広がる雲のような靄に、地獄とも天国ともつかぬ不思議な光景が広がる。
今際の時の大森トンネルを迎えに来たかのようなパイロンが靄にかすんで見える。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 44 やっと出口だ。
出口は四角い形をしているが、これは現道の工事に関連したものだとか。
国道229号 大森大橋と大森トンネル 45 新大森トンネル内部で自転車と別れてから、実に20分もかかった。
もともとは洞内分岐から外へ出た時点で引き返すつもりだったし、ましてやその先に大森大橋や廃隧道たる大森トンネルに出会うとは思ってもいなかっただけに、感慨は深い。

台風によって致命的なダメージを受け、風光明媚な景色を望めた大森大橋は寸断され、余波を受けたウエンチクナイトンネルの坑口はたった2年で放棄された。
今頃は、もうここでお伝えした構造物のどれかは、すでにこの世のものではなくなっているかもしれない。


ただ、現地ではそんな感慨にふけっている場合ではなかった。
20分も歩いてきたということは、同じだけの時間をかけて相棒のところに戻らなければならないからだ。
「狭い、うるさい、空気が悪い」と三拍子そろった現道のトンネルを抜けるか、「暗い、不気味、いろんな意味でデンジャラス」という旧大森トンネルを抜けるか、下らない現実的な選択を迫られていた。
もっとも、無事に出られればまあそれでよかったんだけど・・・


なんか、出口に
黄色いパトランプがくるくる光ってる車がいるんだよね・・・
デンジャラス。
[ 07' 8/15 訪問 ] [ 07' 9/25 作成 ]
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