国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 5

概要

国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道の地図 海の旧道から山の旧道へ。
一気に姿を変えた途端、道は塞がれた。
塞がれようとも迂回はできる。岬に刻まれた道を、歩いてみたいのだよ。

5-1 沢登りで旧道へ

国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 21 再び藻岩トンネルと須築トンネルに挟まれた明かり区間に戻ってきた。
旧道をうろうろしている間に小雨はあがり、傾いた日の光が辺りを照らしていた。

夏場に訪れた時と違い、目指す路盤は鮮明に映っている。
現道から旧道への傾斜はきつく、坑口直上からストレートに登っていくことは難しそうだ。
それ以前に通報されかねない。
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 75 明かり区間には小さな沢が流れており、アプローチはここを利用することにした。
一方で、沢が削ったのか、ここから見上げても旧道の路盤ははっきりしない。
まあ登っていけばどこかで路盤と交差するだろう。

小さな流れとはいえ両手をついて登らなければならないような急斜面。
足元手元はたっぷりと湿気を含んだ土と藪に覆われ、ずぶぬれだ。
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 76 急斜面ではあったが登ること自体は手掛かりが豊富なために難しくない。
沢を渡る橋などは見られず、かすかな踏み跡となった路盤が沢を横断していた。

写真は藻岩トンネル側に続く旧道。
藻岩トンネル上の岬の先端までしっかり続いている。
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 77 こちらは須築トンネル側に続く旧道。
藪の凹凸でなんとか道らしいものが続いているようなことが確認できるのみで、写真からはほとんど明らかでない。

現地での探索では先に藻岩トンネル側から攻略していったのだが、レポートではこちら側から紹介していくことにしよう。

5-2 草の旧道

国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 78 これは藻岩トンネルが貫く岬から眺めた、須築トンネルとそれを巻く旧道の路盤である。
須築トンネルの向こう側から藻岩隧道群を抜けて達した、最終到達地点は★で示したあたりと思われる。

ここから見ると、須築トンネルの真上で大規模に削られており、そこより向こう側の路盤が全く判断できなくなっていた。
道がおおむね水平に続いていたと考えると、点線で示したように路盤があったと考えられる。
そこはちょうど土の斜面(草の斜面)と岩の斜面の境目で、いわばもっとも崩れやすいところであったろう。

須築トンネルの手前くらいまでなら、なんとか辿ることができそうに見えた。
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 79 アプローチに利用した沢から須築トンネル方向に歩き出すと、草の旧道よろしく痕跡はきわめて薄い。
「薄い」であって「無い」わけではなく、路盤を外さずに歩くことは容易であった。
ただし、夏場の藪る時期にはとても歩けないだろう。
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 80 二つ上の写真からわかるように、旧道の路盤は現道に削られかけて非常にギリギリな部分をウナギの寝床のようにして延びている。
時折土砂崩れで水平に続かなくなったりしていて、路盤を逸脱すれば即現道に垂直落下だ。
そうでなくとも、蹴落とした石が車に直撃しようものなら、えらいことになる。
見た目以上に緊張する場所である。
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 81 現代人もここを通ったのか・・・

いつのものかもわからない白いポールが一本、路盤の真ん中から突き立っていた。
落石対策の調査でもしたのか。
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 82 ポールを過ぎてすぐ、結構な水量の沢によって路盤がさえぎられる。
沢は途中から垂直の滝となって落下している。ここは須築トンネルの坑口のほぼ真上にあたる。
おそらく旧道が現役のころにはもう少し海側まで地面があったように思われるが、トンネル工事の際に削られてしまったらしい。

沢に前後して旧道の痕跡が無くなっており、さらに、沢を渡ったすぐのところで明らかに道が欠落していた。
須築トンネル側で辿れる路盤はここまでだ。

5-3 藻岩トンネル旧道

国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 76 続いて藻岩トンネル側へと進んでいこう。
急斜面を真一文字に切り裂いた路盤が、私を岬の先端へといざなってくれるだろう。
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 83 道の痕跡は薄いものの、ほぼ水平な路盤跡は不安を感じさせないしっかりしたものだった。
藻岩トンネル坑口の真上のラインを歩いているわけで、車からの視線のほうが不安である。
まあ、その車も数分に一台程度の静かな道路なのだが。
雨上がりの湿気を帯びた潮風に乗る、潮騒の響きが周りを包んでいる。
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 84 こりゃあすごいところだ・・・


写真を撮りながらのんびり歩いても、5分とかからずに岬に達した。
鋭角に突き出た岬には一歩を置くほどの幅もなく、そのまま落差数十メートルの高さで垂直に海にまで落っこちている。
その先端から一歩を踏み出せば、間違いなく天国にまで飛んでいけるような場所だ。

一方で、そういったクリティカルな場所であるからこそ、我々が安全に守られて生活する日常とは異なる風景が広がるのである。
先ほどまでどこを通るかと歩いた荒々しい磯は、はるか眼下に遠ざかってしまった。小雨を降らせた雲も洋上の彼方に流れ去っている。
忘れられし岬の絶景は、それら数々の試練を越えた者への自然からのご褒美なのかもしれない。

周りを踊る風や波の音、草木の流れる音はあまりにも心地よく、身の置き場もないほどの細長い岬はまるで宙に浮いているような心地にさせ、いつまでもここにいたい気持ちになってしまう。
サイコー・・・
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 85 賽の河原のように鬼気迫る入り江であったり、空を飛ぶように爽快な岬であったりと、ほんのわずかな道跡に自然のバリエーションが濃縮されていた。
その岬を回った先の道はどうなのか。
藻岩トンネルを抜けた国道はすでに足元に伸びているのが確認できる。
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 86 が、ここもまた道が消えてしまっていた。
どうやら藻岩トンネルの取り付け道路を作るため、このあたりの斜面を削り取ったらしい。
薄いながらも痕跡を確認できたこれまでとは異なり、岬からつながる道はどこにも見当たらなかった。
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 87 ただ、完全に消滅したわけではなく、遠くのほうには部分的に路盤が確認できる。
それは今立っているところよりも高度を下げており、この岬を境にして徐々に海面にまで下っているらしい。
現道は小さな岬を大胆にカットして造られたもので、地形は大きく改変されている。
旧道はおそらくこのままゆるゆると下っていき、いずこかの地点で現道に合流していたのだろう。
国道229号 須築トンネル旧道 釣り人達の古道 88 この先の国道には弁天トンネルがあるが、旧道はその手前で海面にまで下り、トンネル左脇の磯を歩いて須築集落にまで達していたものと思われる。


帰りは元来た道を戻り、アプローチに使用したルートを沢を下ることにした。
また、弁天トンネル手前にあったであろう新旧合流地点をそれとなく探してみたが、地形の改変が激しく、痕跡は残っていないようであった。
いかなる史書にもその存在を示されることのなかった、非業なる岬の旧道。
紙に残されずとも、岩塊に刻まれた道と3つもの隧道は、そこを切り開いた者たちが確かにいたことを今に伝えてくれた。
そこに残されたわずかな痕跡をたどりつつ、誰も知らないマイナーな道を自然と戯れながら踏破してゆく。
私が求める廃美の全てがここにあった。
[ 11' 7/30、12' 5/5 訪問 ] [ 13' 3/21 作成 ]
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