国道253号 儀明峠トンネル旧道 儀明峠 2

概要

国道253号 儀明峠トンネル旧道 儀明峠の地図 始まってしまった藪地獄。
先ほどまで穏やかだった緑の光も、足元から迫り来る藪ではただうっとうしいだけである。

小堺翁と沿線住民の悲願が開いた峠越えの道も、この柔らかな緑の草には勝てないのか。

2-1 廃道が始まる

国道253号 儀明峠トンネル旧道 儀明峠 19 ここまでいわゆる道路構造物の類は一切見られなかったが、入場集落跡を過ぎると、 コンクリートで固められた法面が見え始める。写真は最初に現れた法面施工。
30年前の写真ではがっちりと斜面を押さえ込んでいたが、今では風化がひどく、 もう数十年もすれば、ただの石となり果てるだろう。
あちこちに見えるひび割れから緑の植物が生えている。 彼らの侵食能力は、コンクリートをも屠るのだ。
国道253号 儀明峠トンネル旧道 儀明峠 20 そしてこの法面が現れた辺りから、道は完全に廃道の様相を呈する。
それまでの藪に加えて、ついに崩落が現れたのだ。

ひび割れた法面にもはやその本来の機能は無く、巨大な塊として土砂とともに行く手をふさいでいる。
傾斜はさほど無く、なんとか自転車を押して通ることはできたが、滑落すれば命は無い。
国道253号 儀明峠トンネル旧道 儀明峠 21 崩落現場を過ぎても藪が収まる気配は一向に無い。
それどころか、上から落ちてきた木々がこの地に新しい定住地を見つけたようで、潅木が茂りはじめる。
こうなると押しで進む自転車であろうとも通行は容易ではなくなり、ペースは落ち、命の危険は増す。
おまけに、それまで何とか見えていた轍の痕跡も完全に無くなって、精神的な孤独感に耐えねばならない。

現実逃避で谷を挟んだ向こう側を見てみれば、コンクリートの法面が見えた。

あれは旧道の続きか。

あそこまでこんな調子で続くのか・・・
国道253号 儀明峠トンネル旧道 儀明峠 22 そしてこの地点が儀明峠最大の難所であった。
山側は土砂の崩落と生い茂る潅木で自転車を通すことは出来ない。もちろん、崖側は足を踏み外せば即死である。
崖側は胸の高さまで藪が生い茂り、足元がよく見えないため、藪に踏み込んだ一歩がそのまま空中に突き抜けることもありうる。

とにかく、山側は自転車を通せないのだから、藪に沈んだ幅員30cmの崖側を通っていくしかない。
幸か不幸か、藪に覆われて崖の底は見えず、それほど恐怖は感じずにすんだ。

このとき、左手首に違和感を感じたのだが、それを気にしている余裕は無かった・・・
国道253号 儀明峠トンネル旧道 儀明峠 23 気合いで藪を乗り切り、振り返って撮影。
向こうに見える崩落地点の下辺りはまるで芝生のように見えるが、実際はあの地点も胸までつかる激藪地帯で、 本来の路面はあの緑の絨毯の遥か下である。



ここでふと左手に目をやると・・・


オンリー手首。


う、腕時計は・・・?
さっきの違和感のときに落としたか・・・?
あの藪に戻るのか・・・?
つーか、道幅30cmで足元もよく見えない藪の中で腕時計を探すのか・・・?



結局、あの藪の中で10分近く探し回る羽目になった。
何とか見つけたが・・・
国道253号 儀明峠トンネル旧道 儀明峠 24 私の腕時計はもう10年近くは使っているだろうか。別に愛着があるというわけではないが、一泊二日を予定している旅のまだ一日目。 携帯でもGPSでも、時刻を知る手段はいくらでもあるが、やはり手元に無いというのはストレスになる。
そもそも、ただマジックテープで止めるだけというタイプの腕時計を、こんな藪漕ぎの中で装着すべきではなかったのだ。

2-2 鉄塔に見る希望

国道253号 儀明峠トンネル旧道 儀明峠 25 腰の高さまである藪はまだまだ続くが、崩落とそれに伴う潅木は無く、押して進む分には自転車でも問題ない。
また、峠が見えてきたことで、気力も奮い立つというもの。
国道253号 儀明峠トンネル旧道 儀明峠 26 峠付近には鉄塔が見え、その保守道となれば、道の状況も改善するだろう。
そう希望を持ちながら進んでいったわけだが、実際に、峠に近づくと人が刈ったような茎の断片もあり、徐々に藪は薄くなってゆく。
国道253号 儀明峠トンネル旧道 儀明峠 27 生きて帰れる!

ついに藪は消え、確かに往来の跡が見られた。
防護服代わりに着こんですっかり蒸れてしまった雨具を脱ぎ去り、久しぶりにペダルを漕げる喜びも手伝って、 安堵と解放感、そして困難を乗り越えた達成感が全身を駆け巡る。


この瞬間だ。
廃道で命を危険に晒して得られるもの。廃美だけではない、命の輝きが、自分の中に感じられる瞬間なのだ。
国道253号 儀明峠トンネル旧道 儀明峠 28 峠直前の最終カーブ。
峠は広めの平地になっており、農地として使われている。久しく感じていなかったような、人の営みを感じた。
峠より先はこれまでのような危険はなさそうだ。
この道の最後の区間は次回。
[ 05' 6/25 訪問 ] [ 05' 11/2 作成 ]
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