国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 2

概要

国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠の地図
今回の探索の一ヶ月前、同じ藪の壁に阻まれた際には、そこで早くも自転車を放棄し、単身で先を目指したほどであった。
今回はその経験を踏まえ、担ぎやすいように自転車から全ての荷物をはずしてある。

・・・だからといってあんなところを越えることが楽なわけではない。

2-1 初っ端から全開

国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 14 一度は自転車での突破をあきらめた藪の壁も、入念な準備と気合の入った今回の探索ではなんとか突破。
どうやら軽く土砂崩れが起こっていたらしく、それを足場として植物が繁茂していたようだ。

壁を突破しても、藪が収まる気配は一向にない。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 15 正直、廃道では路傍の植物に気を配っている余裕はない。
しかし、これは綺麗な紫色の実をつけていたので、思わず写真をとってしまった。
これは「ムラサキシキブ」という植物の実らしい。

見て楽しいのは結構だが、目の前に立ちふさがる美しい紫色の実をつけた植物に少なからぬ憎しみを抱いたのも事実だ。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 16 集落からある程度の距離があるせいか、足元には踏み分け道のようなものは何一つなく、たまに現れる泥地にも一切の足跡が存在しなかった。
かつて、明治県道大島線、主要地方直江津十日町線、そして国道253号とステップアップしていったはずの道は、完全に廃道と化している。
路肩に見られたガードロープの支柱も、うっかりすると見落とすところだった。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 17 もはや廃美を感じられるような趣はなく、ただただ泣きたくなるような濃密な藪が続く。
実際、一ヶ月前の探索で引き返した最大の要因はそこらじゅうに蜂がいたことのほかに、まったく視界の効かない強烈な藪に退散したためである。
雪が降る直前ならば藪もおとなしいはず・・・などという打算は意味を成さなかった。
なお、この探索のわずか一週間後が第二雪中隧道の探索で、この道も雪に埋まったはずだ。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 18 憤怒の形相で自転車を担ぎ上げ、立ちふさがる潅木を避けながら前進あるのみ。
もっとも、「壁」に匹敵する藪が現れた場合はすぐに突入することはできず、偵察をかねて単身道を切り開いた後、自転車を担ぎこむ、 ということを何度も何度も繰り返す必要がある。
自転車を押して2.5kmを歩くというだけでも大事なのが、足元の藪により疲労度は倍になり、さらに上記の偵察と"開削"でまた倍、 10キロ以上ある自転車を担ぐことでまた倍になる。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 19 並みの体力では持たないことはもちろん、殊にこの薬師峠旧道においては精神力がなくては務まらない。
というのも、もともと無かったのか、現役を退いた際に撤去されたのか、はたまた廃道歴30年という時間の中で失われたのか、 目を惹く道路構造物というものが皆無に等しく、ただただ「藪の中をでかい荷物持って歩く」だけでしかないのだ。
「ここがかつての明治県道、国道の今なのか・・・」などと無理やり感慨深げに想っても、それを示すものが何も無いのでは、妄想に近しいものがある。
虚ちい。

2-2 強い心をください

国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 20 体力的、精神的にへろへろにされても、エクスプローラーとして廃道を歩く以上、目だけは利かせて歩かなければなるまい。
足元に石がごろごろ転がっていた地点に差し掛かったとき、これは怪しいと考えて法面付近をゴソゴソと調べてみた。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 21 石垣!

植物に隠れるようにあったそこには、確かに整然と組まれた石垣が見られた。
足元に転がる石は石垣の法面が崩壊したものだ。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 22 古くは明治時代にまで遡る道の歴史を、ようやく垣間見ることができた気分だ。
石垣はモルタルで固められていたらしく、その由来を明治時代にまで遡ることはできなさそうだが。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 23 峠から約30分。距離にしては500メートルも進んでいない。

足元には峠向こうの道と沿道の水田が見えてきた。
まだ高低差は100メートル以上はあるように見え、緊急のエスケープとしては心許ない。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 24 このような長大な廃道に自転車を持ち込んだ場合、いざというときのエスケープ路が確保できないことは大きな死活問題となる。
激烈な藪を切り開き、自転車を担ぎ上げて難所を越えるたびに思う。

「もしもこの先で突破不能な崩落箇所があったら・・・引き返す事態になったら・・・」

それまで自分と藪とに打ち勝って越えてきた難所が、再び襲い掛かってくるわけである。
いうなれば、「突破!」と喜んでいた場所が、後々自分を苦しめることになるかもしれない。
進んだ分だけ、その数は増えていく。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 25 このように路盤の全貌を確認できる箇所は実に少ない。
幅は一車線くらいだろうか。

冬枯れした植物に覆われたこの場所を、明治には馬車・牛車くらいは通ったことだろう。
薬師トンネルが開通する昭和53年までは、自動車だって通っただろう。

今では、徒歩ですら通るものはいない。
山肌を削ってつけられた路盤だけが、ここがかつて道であったことを物語る。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 26 「嘘だッ!!!!」
不意に現れたアスファルト舗装に、思わずそう叫びそうになった。

峠付近が舗装されていたのは分かっていたが、信じがたいことに、今まで越えてきた激薮道もアスファルトで舗装されていたようである。
ここまで少なくとも人為的に土砂を積まれた様子はなく、土砂崩れの箇所も実はそれほど多くない。
それでもなお歩くことすら躊躇する薮に覆われていたことから、内心では「峠を過ぎた松代町側は砂利道だったんだろうな」と思いながら進んでいた。
廃道歴30年、毎年のように雪崩が発生するこの場所では、自然への回帰も早い。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 27 峠からひたすら薮と格闘し続けること40分、進めた距離はたった560メートル。
・・・残り約2km。
アスファルト舗装をありがたく噛み締める余裕もなく、休憩もそこそこに再び自転車を担ぎ上げた。
果たして、このまま進んでも良いのだろうか。
[ 07' 11/17 訪問 ] [ 08' 2/16 作成 ]
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