国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 3

概要

国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠の地図 藪、藪、藪・・・ 廃道の名にふさわしい、まさに廃道。 誰にも頼れない、己の力で踏破するしかない。

3-1 自然に帰る者たち

国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 28 人の手を離れた物の美しさは、必ずしも「廃」の文字がふさわしいとは限らない。
打ち捨てられたがゆえに、本来あった自然がその姿を取り戻しつつある。
探索の一週間後には雪に包まれた廃道に、秋の名残の椛が眩いばかりに映えていた。

こういうものが人工物と絡み合っていれば最高なのだが、あいにくこの廃道には人工物がほとんど残っていない。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 29 帰れるのか?この先進んでもいいのか?
その答えは進んでみなくてはわからない。
何度、「もう引き返したほうがいいんじゃないのか?」と悩んだか、数知れない。
その弱音を振り払うように、無心で自転車を担ぎ上げ、立ちふさがる藪の壁を踏み倒していく。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 30 足元すらおぼつかないこの場所はもう登山道としても機能し得ない。
そんな中、前回紹介したガードロープの支柱、石垣に続き、三つ目の国道時代の遺構を見つけた。
といっても、単なるオレンジ色の鉄柱でしかないそれは、さながら白骨化した死体のようで、 もともとの姿が何であったかは推測するより他はない。
鉄柱は鋭いカーブの頂点に突き立っており、十中八九、カーブミラーの成れの果てだろう。
本体である鏡や、「注意」と書かれた標識を求めてその足元をごそごそと掘り返したりなんかしたが、 仏さんの形見となるものは見当たらなかった。

3-2 文明を求めて

国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 31 峠からちょうど一時間が経った。進めた距離はちょうど1km。その全行程が藪中行軍である。きつい。

もはや鳥の声も風の音も聞き飽きて、ほとんど耳に入ってこない。
しかし、この場所で予想もしなかった音が聞こえてきた。
それはもう何年も聞いていなかったような気がする音・・・自動車の音だ。

一瞬戸惑いもしたものの、以前現道である薬師トンネルを通ったときのことを思い出し、すぐに理解した。
実は薬師トンネルは途中の一箇所だけ、明かり区間が存在するのだ(■写真)。
つまり、今立っている場所はその明かり区間の真上にあたるようだ。

久しぶりに聞いた文明の音に安心感を覚える、というのは、廃道探索者には馴染み深い経験のはず。
現道のトンネル内であれば憎しみすら覚える自動車の音も、この場所だけでは心地よいものだった。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 32 文明の音は声はすれども姿は見えず(■現在地)。
この写真は後で谷底から明かり区間を見上げたものだが、写真の"窓"の真上にあるはずの旧道の路盤は見えず、旧道〜現道の連絡は絶望的。
・・・要するに、エスケープに使えるような代物ではないということだ。
いまだに私に許されるのは、前進・後退の二択しかない。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 33 目に見える人工物が路盤しかないというのはさびしいものだ。
藪を掻き分けながら、なにかないかと探していると、向こうのほうからお出迎えしてくれた。

写真ではちょっとわかりにくいのだが、山裾にそってぐるっと回るところを、 5〜6メートルほど掘り下げてショートカットしている(写真は振り返って撮影)。
掘り下げの規模から見て、どうもこれは明治の開通後、いつの時期かに改良された結果のような気がする。
掘割
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 34 定石に従って山腹を忠実になぞってみると、そこには確かに路盤が存在することが確認できた。
改良がいつのことなのかはわからないが、ここが明治時代に切り開かれた県道大島線そのものであろう。
現道を基準にすれば、旧旧道にあたる。
残存状態は良く、幅一車線にも満たない道ながら掘り下げ部分を迂回して向こうまでトレースできた。

3-3 苦悩にやさぐれる

国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 35 立ちふさがる晩秋の紅葉。
これを心から美しいといえる余裕がほしい。
登山リュックと自転車を肩に担ぎ歩き、藪と格闘しながらの状態では、どうやってここを抜けようか、 あるいはへし折ってやろうかとも考える。
鉈でもあればもう少し進軍スピードも上がるだろうが、いろいろ問題になりそうなので自重している。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 36 上の写真はまだいいほうで、7割くらいはこんな有様だ。
進めば進むほど、恐怖が強くなっていく。

「どこかで引き返すことになったら・・・」

とにかく、進めるだけは進んでみよう。
自転車を置いて前方数メートルの藪を切り開き、自転車を通す経路をシミュレートする。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 37 大概、そのシミュレーション通りにはいかないのだ。
あれに引っかかった、これにつまづいたと、そのたびに大きな時間と体力の消費。
結局難所突破に最強なのが、「自転車は押して進むよりも担いで歩け」である。
担ぎ上げる体力の続く限りは。

3-4 発見

国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 38 現在いる道ともいえない道は、かつての国道253号、さらに遡れば明治県道大島線である。
この道は江戸時代の街道、松之山街道に由来することは以前お伝えした。
その街道は旧道の路盤より上、尾根の上を進んでいた。
現在は新潟県の歴史の道としてそこそこの整備は行われているらしい。
その街道があるあたりをふと見上げてみたところ、どういうわけか電線が張られた電柱があった。
・・・旧道が廃れ、江戸の道が生きているというのか。
国道253号 薬師トンネル旧道 薬師峠 39 もうひとつ、今度は頭上ではなくて足元に、奇妙な物体を見つけた。
路盤から外れた眼下数十メートルしたの山の中腹に、"廃"な匂いをプンプン放つ巨大なコンクリートの塊が見えたのである。
形状からすると・・・橋脚・・・?
路盤との距離、高低差から、旧道と関連したものとは考えにくい。
ではあれは何だろう?

あいにく現在でもはっきりした答えは見つかっていない。
しかし、おそらくこれであろうという想像はついている
このコンクリート塊に関しては、下山後にもう少し調査してきたので、別の回に改めてご紹介することをお約束しよう。
そうだな、廃線レポートあたりで・・・
気がつけば峠からちょうど2時間が経過していた。
進めた距離は1.5kmで、時速換算で1km/hにもならない。
だが、全行程の3分の2は踏破した。いまさら引き返したくはないぞ・・・
[ 07' 11/17 訪問 ] [ 08' 5/18 作成 ]
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