国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 0

概要

国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道の地図
旧道・廃道を愛してやまない読者諸兄なら、上図の朱鞠内(しゅまりない)トンネルの旧道はどこにあるとお考えだろうか。
何気なく地図を眺めていてこのトンネルの旧道を想像するに当たり、私は二つの間違いを犯した。

事前情報から、朱鞠内トンネルは昭和52年竣工であることが分かっていた。
そのため、昭和52年までは、南から来た国道はトンネル前で左に曲がる道(緑の道)に入り、蛇行する川に沿って進んだ後、いずれかの地点で渡河していたものと考えた。
・・・が、隧道リストには昭和3年竣工朱鞠内隧道が記載されており、国道が上記のルートをたどった歴史は無い。
旧道のルート想定が、一つ目のミス。

では、昭和3年に竣工したという、朱鞠内隧道の方はどこにあるのか?

現在の地形図には隧道はおろか、取り付け道路の痕跡すらもない。
二つ目の過ちとは、「現在の朱鞠内トンネルとは、朱鞠内隧道を改築したものである」という思い込みだ。
旧トンネルの痕跡がない上に、地形図上で計測した現トンネルの延長がリストにある旧トンネルのそれとほとんど同じだったのがその根拠。
自分の中で早々と結論してしまい、本件は探索対象から外れてしまった。



それから相当な時間が過ぎてつい先日、また地形図をぼーっと眺めていた(暇だねー)。
再び目に留まった朱鞠内トンネルを今度はもうちょっと精査してみようと、カントリーロード様で公開されている朱鞠内トンネルの銘板と隧道リストのスペックとを突き合わせてみた。
そこで初めて、朱鞠内トンネルの延長275メートル、朱鞠内隧道の延長112メートルと、大きな開きがあることに気づいた。
前述の通り、地形図上から計測される現トンネルの延長は100メートル強であるため、銘板の数値は現トンネルの前後に付設された覆道を含んだ値と思われる(数値には実はもうひとつ意味があるのだが・・・後述)。
数値の開きにはそういうカラクリがあったにせよ、倍以上ある延長の差は旧トンネル改築説を大きく揺るがすものだった。

なにかこう、自分のミスであろうと「発見」をした時というのはワクワクするもの。
改築でないとしたら、んじゃあ昭和一桁竣工の朱鞠内隧道はどこにあるのかと、今度は30年以上前の航空写真を必死に捲っていたところ・・・

朱鞠内隧道
発  見  !!!

0-1 廃線と残された集落と

国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 1 そばの産地として有名な幌加内(ほろかない)の市街地から、国道を北進する。
かつては国道に沿って深名線というJR北海道の鉄道路線があったが、国内でも3本の指に入る大赤字の路線で、平成6年に廃止されてしまった。
線路跡をまたぐ跨線橋や駅舎などの遺構がところどころに見られる。
写真はそのひとつ、添牛内(そえうしない)駅の駅舎である。
中にはカボチャが積んであった。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 2 添牛内からさらに北進すること8km、蛇行しながら併走する雨龍川に架かる橋にぶつかった(■現在地)。
蛟竜橋(こうりゅうばし)というカッチョイイ名前で、昭和47年竣工である。

付近への入植は明治末期から大正初期にかけてで、橋はもとより道もない当時には丸木舟や箱舟で渡っていたといい、この橋の上流(写真左手)200メートルほどのところに渡し場があったといわれる。
大正12年に簡易的な吊橋が完成した後、このすぐ先にある朱鞠内隧道の開削工事とあわせ、昭和2年に架け替えられた。
さらに昭和26年、そして昭和47年に改築工事が行われており、現在の橋は実に4代目である。
旧橋である3代目は30年前の航空写真にその痕跡が残っている。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 3 蛟竜橋を渡ってすぐに新旧の国道が分岐する。右が現道、左に折れて写真正面に続く道が旧国道である。
国道275号は昭和50年に国道指定されており、朱鞠内トンネルはその年から着工され、昭和52年に貫通した。
そのため、朱鞠内隧道を含む旧道が国道として生きていたのはほんの数年しかない。
国道指定以前は、道道添牛内風連線であった(昭和32年指定)。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 4 旧道沿いには共栄という集落があり、深名線が現役の時には、上の写真の背後らへんに駅もあったのだが・・・
いまや、ただでさえ数の少ない家々のほとんどが空き家と化し、人の気配がするのは1軒か2軒ほどしかない。
ここに限らず、深名線の沿線はほとんどこんな感じだ。
その寂寥感たるや、もはや癒しを得られるレベルではなかった。失礼ながら、恐ろしいほどに寂しい。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 5 集落の奥で道が分かれる。
直進の砂利道は農道、旧国道は右の土道である。

30年前の航空写真では農道のほうが規格が低く見えたのに、現在では明らかに旧国道のほうがしょぼくなってしまった。
右折。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 6 でもたぶん、朱鞠内トンネル開通以前の国道時代の姿を最も留めているのがこの場所だと思う。
国道といえど、砂利すらまばらな土の道に轍が残る、狭い道であったはず。
右の電柱が木製であったならば、昭和30年頃の写真といっても信じてもらえたかもしれない。
いい景色だ。

0-2 一つの廃道と二つのルート

国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 7 旧道は現道と平面交差する(■現在地)。
そこで左を向けば、現道の朱鞠内トンネルが口をあけていた。

国道指定を受けた昭和50年から建設され、同52年11月に貫通している。
銘板によるとその延長は275メートルとされ、イントロで述べたとおり、この延長と旧隧道の延長との差が、旧隧道改築説に疑問を持ったきっかけとなった。

延長275メートルというのは前後の覆道区間を含めた長さであるが、実はこれも意図的な数値であった。
───国道の路線番号は275、そして、その国道指定の年にこのトンネルが設計された───
「新幌加内町史」には「国道275号線にちなみ延長275mとした設計により前後の取り付け道路ができ」とある。
必ずしも、その延長は275メートルでなければならなかったわけではないらしい。
まあ、結果的にはその余分な延長のおかげで、旧隧道が発見できたわけだが・・・



ってまだ現地じゃ見つけてないんだった。
航空写真では新トンネルの坑口に向かって右上らへんにあるように見える。
でも、ここからは見えないよそんなもん。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 8 上で「旧道は現道と平面交差する」なんていったが、実際にゃもう交差した先の旧道の路盤は行方不明だ。
「この辺りに山のほうに入っていく道路がありますよね?」と聞かれれば、迷わずNOといえるぐらいの激藪が私のやる気を削ぐ。
なにせ、朱鞠内隧道に関する情報がネット上にあまりにも乏しく、あるのかないのか、あったとして坑口が無事なのか、無事だとして密封されているのか、密封されていないとして貫通しているのか、などなど、まるっきり情報がない。
だいたい、坑口までどうやって行けばいいのかわからない。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 9 とりあえず当たりはついているので、GPSに坑口疑定地を登録してある。
あとはもう、これを頼りに藪の中をさまようしかない。
いやもうだって足元に廃道の路盤の痕跡すらも認めがたいし・・・
道跡をたどるのではなく、ただの森の中を坑口疑定地めがけて突進していくだけだ。


もちろん自転車は現道脇に放置。
もしも内部進入が可能であった場合に備え、一応明かりは持っていくことにした。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 10 うむっ、なんか見つけた!
といっても写真じゃ伝わらないだろうか・・・

現道から離れてから5分ほど薮の中を泳いだ後、やっと路盤らしきものが続くのが確認できた。
熊笹の群落が路盤の上を綺麗に覆い尽くしており、緩やかに右方向に折れていく。
うわー、嫌な道だー
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 11 年中無休で元気な熊笹が、私の口を覆うほどにまで伸びている。逃げ場はない。
覚悟を決めて突進すると、木製の柵の残骸らしき物体が路盤跡をさえぎっていた。
ここまで路盤すら不鮮明だっただけに、ようやく希望の灯がともる。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 12 当たりだ!

その柵に対になるように、ガードロープを張るような鉄柱が、錆び錆びになりながらも藪に埋もれているのを発見。
確かに道はある!
行くぜ!
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 13 行く・・・ぜ・・・
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 14 やめよう。

前方を確認するにも背伸びが必要になるような猛烈なササ群落。
掻き分ければ進めないことはないが、その歩みは分速数メートルのレベルだ。
そこに見える確かな廃道は、山肌に沿ってかなり先まで続いているように見える。

ていうか、どうも進む方向が隧道を目指していないぞ。
このまま行けば稜線(現道との高低差はわずか50メートルほど)に出てしまいそうだ。

あらためてGPSを確認してみると、あるべき隧道の場所から微妙にズレ始めていた。
どうもこの廃道は旧国道ではなく、地形図にある実線の道らしい。
旧国道はどこへ行った・・・
やっぱり朱鞠内隧道は土砂の中に埋没してしまったのか・・・?

探索としては最悪の結果も頭をよぎる。
発見に沸く朱鞠内隧道の探索は、最後にして最大の発見を得られずに終わってしまうのか?
[ 09' 10/12 訪問 ] [ 09' 10/21 作成 ]
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