国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 1

概要

国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道の地図 旧国道と意気込んで突っ込んだ藪の廃道は、いつの間にかあらぬ方向へと向かっていた。
分岐なんてなかったぞ・・・

1-1 届けこのラブコール!

国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 14 現道から分かれてから10分弱。
距離にしては100メートルも進んだかどうかというところで、ルートミスという三つ目の失敗を犯した。
国道に由来しないこの廃道は、地形図では稜線にまで登っている。
ただ、登った先で向こう側に降りられるようには描かれておらず、どっちにしろ引き返すより他は無い。


「隧道あるところに旧道あり」の法則にのっとり、帰宅後にはもしやこの道は昭和2年に朱鞠内隧道が開通する前の旧旧道かとも思ったが、文献的にはこの道はそういう類のものではなかった。
山越えの道は確かにあり、それは入植に当たって鞍部を切り開かれたもので、大正5年に開削されたという。
もちろん、車の通れるものではなかった。
現在ではその道に沿って送電線が走っている。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 15 前後左右のどこを見ても藪の中という状況で、いったいどうやって隧道を見つければいいんだ・・・
まして、埋まっているかもしれないと思えばやる気も出てこない。
戻りながらそんなことを考えているうちに、現道が見えてきた。


「このへん、このへんなんだよな・・・」

ハンディGPSに登録しておいた目印を頼りに、藪をかき分け、背伸び、ジャンプをしてあたりを探る。
呼んだら応えてくれるドラえもんのあの道具がほしい。
ガサガサガサガサ・・・・
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 16
<●><●>クワッ!!!
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 17 ザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 18 あ゛っだあああああああああああああああ


ついに、朱鞠内隧道南側坑口を発見!
しかも、開口している!!!!!!!!
ああ、なんということだ!失敗を繰り返してもめげず、捜し求めていたものは最高の形で迎えてくれた!!
ありがとう!!!!
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 19 振り返って撮影。
浅い掘割の中は一車線もないほどに狭い。
写真のすぐ左側に、私が廃林道を旧国道と誤認するきっかけとなった丸木の柵があり、その路盤によって旧国道敷きは多少埋められているのかもしれない。
分岐らしき痕跡は皆無だし、猛烈な藪に覆われて坑口はほとんど見えなかったのだ。
笹薮がひどいので、春先といえどもなかなか見つけにくい坑口だ。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 20 坑口の下四分の三くらいは人為的に積まれた土砂と土嚢で封鎖されている。
それでも、まさか開口しているとは思っていなかったので、これまでの苦労も全部吹っ飛んだ。

朱鞠内隧道スペックをおさらいすると、昭和2年12月竣工、延長112メートル、幅員と限界高はいずれも3.5メートルとされている。
昭和2年竣工にしては、坑口に貫禄が感じられない・・・
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 21 そんな違和感は扁額を見てさらに高まった。
昭和2年なら右書きじゃないですかね?左書きってのはちょっと考えられない。
ありえるのは、

1.竣工後、昭和30年頃以降に改修を受けた。
2.実は目の前の隧道は昭和2年竣工ではなく、二代目朱鞠内隧道である。初代は別の場所にある。

の二通りだろう。
ただし、昭和3年当時の資料には、延長60間(約109メートル)と記載されており(新幌加内町史より)、延長的には目の前の隧道と昭和2年竣工のものは同一と考えるほうが自然だ。
路線史がかなり詳細に書かれた町史にも、初代に代わって二代目朱鞠内隧道を掘削したという記述がないことからも、2.の可能性は薄い。

改修時期は、蛟竜橋の架け替えが行われた昭和26年、道道に指定された昭和32年、また蛟竜橋が架け替えられた昭和47年のどこかだろう。
おそらく昭和32年頃ではなかろうか。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 22 中を覗き込むと、反対側の坑口も同様に開口しているのが見えた。ステキ過ぎます。ビバ、シュマリナイ。

1-2 朱鞠内隧道内部

国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 23 封鎖の土砂は急角度で隧道内部に落ち込んでいる。
湿った土砂に滑らされながら、慎重に内部へと降りた。写真は降りてすぐに置いてあった謎の柵。


現道のすぐ近くにもかかわらず、激烈な笹薮で発見が困難だし、なにより路線自体がマイナー過ぎて、探索者の足跡は一つもなかった。
この並びにある深名線の廃トンネルのほうがむしろ訪れるものは多いかもしれない。
わたしゃ、こういった見向きもされないマイナー物件のほうが好きだけどね。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 24 で、この柵には錆びた金属プレートに「無断入林を禁ず 北大演習林」と書いてあった。
現地の周辺は歴史的に北海道大学の演習林となっており、地名もモロに「大学○号」とかいうところもある。
先ほど迷い込んだ廃林道も、その関係のものだろう。

隧道内にあったこの柵は、かつてはあの廃林道を封鎖するためにも使われていたのだろうか。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 25 内部は一直線に伸びる。
おおよそ今日の国道トンネルとは似ても似つかない、ただ通すだけのシンプルな古隧道。
狭く、低く、非常設備もなく、足元も舗装されていないようだ。
約30年前まで、道道、国道として活躍した朱鞠内隧道も、その頃にはもう時代遅れの隧道となっていた。


坑口の様子からするとある時期に改築工事が行われたような気がするが、それ以前の姿はどうだったのだろう。
そもそもの竣工年である昭和2年にすでに隧道前後の橋が永久橋になっているため、幅員・限界高などは今の姿とそんなに違わないかもしれない。
素掘りだった可能性はありえる。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 26 天井からぶら下がるのは、コウモリではなくて古びた蛍光灯。一応明かりはあったんだね・・・

寒い北海道、まして朱鞠内地区の冬は道内でもトップクラスに寒く、この近くで戦後の日本最低気温である-41.2℃を記録したこともある。
風の吹き抜ける洞内ではさすがに暖を取るどころではないのか、コウモリの気配もない。
そういや北海道の廃隧道でコウモリって見たことないな・・・
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 27 人の気配も、生き物の気配すらもない静かな洞内。
転がる発泡スチロールはかつての生活の跡なのか?単に風に飛ばされてきたのか?隧道内には人工物の類は乏しい。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 28 北側の出口付近は、これまでの状況に比べると若干荒れていた。
ここまでほとんどひび割れも漏水もなかったが、出口付近でポタリポタリと落ちる水滴に起因して、大きなひび割れや内壁の剥離が見られる。
やっと昭和一桁らしい貫禄を感じた。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 29 最後の関門はこの封鎖。
何が問題かって、前述の漏水のせいで土砂は粘土のようにデロデロで、ズルズル滑る。
一見進入に難の無さそうな封鎖でも、気をつけないと洞内に閉じ込められてしまう可能性があることを肌で実感させてくれた。

エゾシカの足跡をたどって外に脱出。

1-3 朱鞠内隧道北側坑口

国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 30 う〜ん、シブいっ!!

出口の坑門はびっしりと苔生し、廃止後30年以上を経た時間の経過を物語っていた。
飾り気のない無骨なコンクリートにもひび割れと汚れが目立つ。だがそれがいい。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 31 見てよこの扁額を!
相変わらずの左書きで昭和一桁のものとは思えないが、この幻想的かつ芸術的な苔の生え方といったら何だ!
人の手によって生み出された巨大な工作物が、今自然の中に生きている・・・私が最も愛する廃美の形だ。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 32 坑口から先を撮影。
このすぐ先で現道に合流するが、路盤と認識できるものはすでにない。

現道に合流するまでのルートは時代によって変遷があり、昭和31年の地形図では坑口を出てすぐ右に曲がり、併走する深名線を踏み切ってから渡河している。
その後、昭和46年の地形図では線形が改良され、一直線に渡河するが、代わりにその踏み切り付近に「共栄仮乗降場」ができている。
共栄仮乗降場はやがて共栄の集落に近い場所に移されたらしい。

ただし、ここから深名線を踏み切らずに直線的に進んだところに古い橋台があるため、地形図を頼りにした上の話がどこまで真実かは定かでない。
国道275号 朱鞠内トンネル旧道 朱鞠内隧道 33 北口遠景。
シブいなあ・・・
鬼気迫るような迫力がなかろうとも、その佇まいには日本的な侘び寂が感じられる。


朱鞠内湖とか深名線とか名羽線(深名線に接続するはずだった未成線)の朱鞠内隧道とかは、比較的有名な部類に入るだろう。
その裏側に見つけた、マイナーで無骨な旧国道のトンネル。そんなあなたが大好きです。



せっかくだから、もう一度この中を通って帰ることにしようっと。
「誰も知らない地味な物件を」「最小限の机上調査で」「最大限の現地調査を行い、明らかにする」
調査を面白くする三要素がすべて揃った、実に楽しい探索だった。
そのアプローチにいくつもの失敗があっても、それを乗り越えていくこともまた楽しみのひとつ。
相手へのアプローチが一本に繋がったとき、目の前に現れる彼女は、必ず輝いて見える。
[ 09' 10/12 訪問 ] [ 09' 11/9 作成 ]
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