国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 2

概要

国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道)の地図 コンクリートの橋がペラペラになるほど崩壊が進んだ岬の旧道。
昭和一桁竣工の道は、隧道は、果たして人を通しえるのか。

2-1 原木一号隧道

国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 16 封鎖を越えて少しも行かないうちに、現れたボロボロの隧道。
足元に積もる岩はすべて上から降り積もったものだ。
坑口が円形をしておらず、いびつな形になっているのは無論崩壊によるものだろう。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 17 鉄製の支保工も40年もほって置かれては、もはや地盤の支持体としては用を成さない。
支保工と地山の間には大きな隙間ができてしまっているし、一部の支保工は崩落に巻き込まれてグニャグニャにひん曲がっていた。


短い隧道の向こう側にはすでに次なる隧道の予感を感じる。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 18 振り返って撮影。

で、この隧道の名称なんだが・・・原子・・・いや、原木一号だ。
相互リンクサイトのカントリーロード様でも触れられているが、昭和3年に開通した日浦岬の一連の隧道について、その名称には揺らぎが見られる。
まず、隧道リストによる名称は原子一号となっている。
しかし、近くの集落の名前は原木であり、微妙に誤記くさい。
さらに、「恵山町史」および「北海道新聞(昭和43年4月19日の記事)」には、原木一号の記載が見られることからも、誤記の可能性を支持する。
本レポートでは町史の記載と地名を信じ、原木で統一したい。
表記のブレはこの後に続く隧道群でも同様である。


原木一号隧道は延長6メートル、幅員と高さはともに4メートル。
岬を回る道の完成は昭和3年だが、この原木一号隧道は昭和2年に竣工している。

2-2 原木二号隧道

国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 19 怒涛のごとく押し寄せる素掘り廃隧道の波!
原木一号隧道を出た先の明かり部分はほんの数メートルで、少し左にカーブしたあと、即座に次の隧道。
ってか、その次の隧道も見えているわけだが。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 20 原木一号隧道の次は当然原木二号隧道(写真は通過後に振り返って撮影。奥に見えているのが原木一号)。
延長11メートル、幅員3.7メートル、高さ3.5メートルと記録されている。

一号ほど歪な形ではないものの、その内部も取り付け区間も崩落が激しい。
角ばったその岩塊は、拳ほどの大きさでも直撃すれば生命にかかわるだろう。
しまったなあ、今日はヘルメットをしていない・・・

2-3 原木三号隧道

国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 21 二枚上の写真で見えているとおり、二号隧道から三号隧道までの明かり区間もほとんどない。すぐに原木三号隧道が連続する。
造りや延長も一合や二号とほとんど同じだ。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 22 はっきりいって怖い。
ここまでたった三つの隧道、合わせた延長は30メートルにもならない素掘りの廃隧道達は、救いようがないほどに崩壊しているからだ。
重さ50キロはありそうな巨大な岩が、錆びまくり、やせ細った鉄骨の上から、じーっ・・・とこっちを見ている。
ああして目に見えるものでなくとも、いつ上から岩が降ってくるかわからない、いや、そもそも中を守ってくれるはずの支保工自体が、倒壊とともに凶器となって襲い掛かってくるのではないか。
そんな危険をひしひしと感じてしまう、あまりにも生々しい廃道なのだ。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 23
しかし・・・凄い。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 24 「素掘りの廃隧道が一視野に三連続する」という場所が他にあるだろうか。
隧道を穿ちつつも、極力自然の海岸に沿うように、微妙にカーブしているあたりも、なんともいえない良さがある。

危険をはらんだそれらの光景は蠱惑的で、麻薬のような毒性を以って誘惑する。
さっきから高ぶっている胸の鼓動は、恐怖もあろう、だが、かなりの割合で興奮というものが混じっている。
久しぶりに、"廃美"という奴を実感させてくれた。

2-4 虎穴

国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 25 三つ続いた隧道はここで一区切りとなり(まあ次の隧道も見えてるが)、道は・・・消えてなくなる。
原木三号隧道の日浦側坑口で、路盤は高さ2メートルほどストンと落ちてしまう。
路肩の石垣が崩壊し、道床を構成していた砂利などがすべて流出してしまったようだ。

ロープが張られているが、結んであるのはあの腐った鉄骨である。
さすがに人一人分の重さでどうともならないとは思うが、崩壊した柱状節理の岩には手がかりが多く、ロープに頼らずとも上下移動に問題はない。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 26 そのすぐ先で、落石防護ネットを突き破った大規模な崩落が防護柵をも越えて本来の路盤を覆い尽くしている。

隧道の中も外も、どこにいても気の休まる場所というものがない。
昭和48年にこの道が旧道落ちした際、その管理は周辺町村に移管された。
迫力ある絶壁や風光明媚なこの道を残してほしいという声は、当時からもあったという。
しかし、安全な道として存続させることができないという理由で、廃道となった。
昭和3年、悲願の道として生まれた道も、40年を経た結論は「危険な道」でしかなかったのである。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 27 振り返って撮影。

現在なら突き出た岩ごと取り除いてしまい、何の個性もない、ただ路盤が続くだけの道になるだろう。
昭和の初めにおいては、少しでもその土工量を減らすべく、あの大岩に穴を穿った。
結果として危険な道になってしまうが、そもそも危険箇所に道を通す以上危険なのが自然ではなかろうか。
危険な大断崖を間近に見ながら自分は安全を、というのは不自然だし、贅沢であろう。
兎穴で虎子は得られない。

2-5 原木四号隧道

国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 28 土砂崩れのあたりから路盤が復活する。
うまい具合に崩壊した石垣から路盤に戻れば、もう原木四号隧道が目の前に。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 29 原木四号隧道原木側。
こちら側の坑口はやたら縦長だ。
崩落でこうなったというわけではないらしく、一号隧道のように厚く岩石が積もっているというほどでもない。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 30 瓦礫の山に突き刺さった立ち木のように見えるこれも、よく見ると腐食しまくった鉄骨だ。
往時は坑口を守っていたはずの落石覆いの、40年後の姿である。

足元には瓦礫とともに他にもグニャグニャになった鉄骨がいくつも転がっていた。
まるで巨人が暴れまわった後のように・・・悲惨にも見えた。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 31 四号隧道はこれまでの隧道に比べれば少し長く、延長は23メートルある。
四号隧道にはこれまでの隧道にあった支保工が存在しない。

上も横もボロボロに風化し、足元には瓦礫が積もっている。
歩くたびにカラカラと乾いた音を立てた。
ヘ、ヘルメット・・・
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 32 反対の日浦側坑口。
ここの足元には、鉄骨とともにその上に乗っていたらしい屋根の残骸も残っていた。
落石という自然現象に抗うため、人の手が作りし落石覆いは、見るも無残に砕け散っている。


昭和2年竣工であった原木一〜三号隧道に対し、この原木四号隧道は昭和3年竣工と記録されている。
「どうせすぐに引き返すことになるだろう」
そう思ってお気楽に入った廃道に、引き返しを決断するような障害はいまだに現れない。
現れない限りは、激しく風化したかつての国道にどれほどの恐怖を感じようとも、両足は自動的に前へ進んでいく・・・
[ 09' 3/20 訪問 ] [ 09' 4/26 作成 ]
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