国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 5

概要

国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道)の地図
「恋の吊り橋理論」というものがある。
恐怖のドキドキが恋愛のドキドキにすり替わるというもので、こと廃道歩きというのもそれに近い。
呼吸は荒く、胸は高ぶり、喉は渇いて手には汗を握る。考えていることといえば目の前の対象だけ。
お兄さん、それは恋だよ。

5-1 原木七号隧道

国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 62 すでに見えているのは原木七号隧道。これが岩根橋までにある最後の隧道となるはずだ。
あそこさえ通過できれば、朽ち果てきったこの日浦岬の道を制覇できる。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 63 振り返って撮影。
逆光の中に輝く道路の痕跡はごくわずかだ。
波で浚い切れなかった遺構は、岩盤と潮風という草木の繁殖には適さないこの地の特性により、ミイラのごとくその遺骸を晒している。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 64 二つ上の写真にあるように、七号隧道はその取り付け道路が極端に曲がっている。
延長は短く、出口もものすごい角度で右に折れているのが見えた。
おまけに、今までの隧道に比べると幅員が異様に狭い。
隧道リストでは七号隧道の幅員はこれまででも最も広い4.0メートルと記されているが、どう見てもその半分ほどしかない・・・
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 65 今でこそこんな姿をしていても、かつては間違いなく自動車を通した。
何もそれは国道時代の昭和中期数年間にとどまらず、開通当初=昭和3年の時点で、その開通記念式典に函館側から新聞記者が自動車に乗って訪れている。
当時としても、この狭い隧道に車を通すのは難儀であったことだろう。
おそらく、その時から幅員等の基本的なスペックは変わっていないように思う。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 66 原木七号隧道日浦側坑口。
このあたりも、路盤はすべて流出していた。

5-2 岩根橋との再会

国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 67 100kgはありそうなコンクリート塊が、どうやったら道床の上に持ち上げられるんだ・・・?
微妙なバランスで成り立った足元の石は本当に自然の成した技なのか?
いろいろなものが、常軌を逸している・・・
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 68 廃道区間に入ってから30分近くを経過していた。歩いた距離は500メートルほどで、もう岩根橋が見えてきてもいい頃だ。

橋の日浦側から想像された道の惨状は確かにその通りだった。
惨たらしいその光景に恐怖しつつも、予想に反し、その歩みは長いものになった。
そして、岩根橋の対岸との再会は、上の写真のカーブを曲がったところにあった。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 69
見えた!
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 70 が、その前の路盤の状態が激しい!
折れ曲がったコンクリート、陥没した路盤、転がる落石・・・
十数cm程の厚みのあるコンクリートの板も、発泡スチロールのように簡単に折れてしまっている。
その板の下も、路盤が消えた今ではすっぽ抜けの中空であって、足を乗せるのは不安だ。
山側の岩の上を歩いた。
昭和30年代の岩根橋 ちなみに、恵山町史には岩根橋が現役だった頃の写真が掲載されていた(恵山町史1100ページより引用)。
二つ上の大写真とほぼ同じ位置から撮影されている。

いまや人一人が渡ることすら危ういほどに朽ち果てた橋と路盤も、数十年前は人を通し、馬を通し、車をも通した。
安易に文章にするのよりも、こうして実際の当時の光景を目にしたほうが、その実感というのはやはり違ってくる。
時の流れを痛感できる一枚である。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 71 こんななりをしていても、日浦岬の廃道区間から見れば、比較的路盤が残っているほうといえるかもしれない。
少なくとも、コンクリート舗装が無傷で残っているのはここ以外にはほとんど無い。
もっとも、無傷なのはほんの1メートル程度で、すぐに路盤は消える。

5-3 あるがままの自然

国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 72 脆くも固い岩盤のおかげで、崩れはするが波に浸食されることはない。そのおかげで、路盤がなくとも進めてしまうのだ。
そうして歩いた30分、恐怖と興奮の入り混じった廃道歩きの果てに、ついに岩根橋対岸に到達。
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 73 結局、アスファルト舗装されていたのは橋の上だけだった。
こちらから見ると渡れそうに見えるそれも、下はスカスカの落とし穴。
向こう側の穴を飛び越えようと踏み込んだ途端に、数メートル下の海面にまで転落するかもしれない。
少なくとも、今のこの橋を渡る(というか"飛び越える")勇気は私には無い・・・
国道278号 日浦トンネル旧道 日浦岬の原木隧道(原子隧道) 74 振り返って撮影。
逆光の中の廃道と迫力ある柱状節理の絶壁には、畏怖の念すら覚えた。
風光明媚、小耶馬渓とも称されたかつての道が、「保存」の名の下に大改築されなかったことは、今となっては正解だった気さえする。
美しい自然を主張しつつ、自然の脅威を受け入れない道があまりにも多い中、時の流れに身を委ねたこの廃道は、本当に怖く、本当に美しかった。
転倒即重傷にもなりかねないこの道で、帰路もまた緊張の連続。
緊張しつつも、他に類を見ないこの廃道を去るのが名残惜しくもあった。
探索は完了しても、観光がてらにまた来てみよう。
次はヘルメットを装備して。
[ 09' 3/20 訪問 ] [ 09' 5/23 作成 ]
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