国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 1

概要

国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発の地図 国道278号は北海道函館市を起点とし、北海道の西南に突き出た渡島半島の東端(亀田半島)をまわって茅部郡森町に至る全長114.3kmの国道である。
渡島半島東端には活発な火山がいくつか存在し、それらの溶岩に由来する豪快な柱状節理は、付近の海岸線を極めて峻険なものにせしめていた。
これらを攻略するために、古くは昭和初期には既に隧道が穿たれたところもある。
しかしながら未通区間は長く存在し、全線にわたって自動車通行を許すようになるには、昭和の41年まで待たなければならなかった。
この昭和41年に開通し、古部-椴法華(トドホッケ)間に自動車交通をもたらしたトンネルこそ、今回紹介する滝の沢トンネルである。

滝の沢トンネル(延長850メートル)が貫くのは岬のサミットと呼べるものではなく、垂直に切り立った岸壁の腹の中、といったほうがふさわしい。
海に直立する岸壁には足を置く場所すらもなく、仕方なしに地中を迂回するトンネルなのだ。
技術的にも、十分に年代の進んだ時期にならなければ建設できなかったのも無理はない。


もともとこの区間は一般道道「尾札部戸井函館線」に含まれていたが、長らく未通の状態が続いていた。
道路としての始まりは江戸時代末期に開削されたとされる山越えの道に見出せるものの、明治の初めには荒廃が進んで通行不能となっていた。
この山道は明治11年から13年にかけて大きく修繕されたが、車を通せない難所であることには変わりなく、往来は海路に頼っていたという。
周辺住民が熱望した海岸沿いの平坦路も、前述の険しい地形に阻まれて叶わなかった。

明治の改築工事から数十年も経た昭和12年から13年にかけても、何度も開削あるいは測量だけでもという陳情が繰り返されている。
戦後にも熱心に陳情を繰り返した結果、ようやく昭和26年にはトンネルより尾札部側で一部の道路が開通した。
さらに、滝ノ沢トンネルの区間についても、昭和30年度より32年度にかけて工事費6700万円で改良する計画が立てられ、 周辺住民は期待に沸き立ったものの、このときはなぜか計画倒れに終わる(後述するトンネル工事に比べて格段に工事費が安いため、トンネルではなく山越えの車道開削案だったと思われる)
関係者の努力はなおも続き、ついに昭和38年10月、工事費2億7400万円でトンネル工事が着工された。
面白いことに、着工後も工事の中止を恐れてか一日も早い完成を望む陳情を続けていたという。
道庁に次々と届けられる陳情書の山に頭を抱える担当者の顔が目に浮かぶようだ。

根負けして熱心な陳情活動は実り、滝ノ沢トンネルは昭和39年に貫通、同41年10月5日に開通し、10月10日には強風が吹く中盛大な開通式が行われた。
一方で坑口付近は海と崖に挟まれた場所であるが故、時化のときは海から荒波が押し寄せ、大雨のときは頭上から落石が降ってくるような有様であった。
これの対策の一環として、今度は国道昇格を求める陳情団が東京へ向かったという・・・


ともかく、一応の車道として亀田半島を回る道路が完成したのである。
これを受け、昭和45年4月、道道は別の路線とあわせて国道278号に昇格し、現在に至っている。

んだがまあ、トンネル自体は見た目古くて狭いという感じなだけで、ことさら取り上げるほどでもなかったりする。
挙げるべきは、陳情のアツいエナジーがそうさせたか、トンネルのわき腹にぶち空けられた数々の横穴。
ご覧いただければ、「フォォォォォ!!!!」となれるはずです。

1-1 滝の沢トンネル

国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 1 雪に閉じ込められること4ヶ月。
この間、自転車はもとより探索活動そのものがほとんど冬眠状態であった。
3月も中盤を過ぎ、ようやく雪が融け始めたのを機に、久しぶりの自転車での探索となった。
ニュースで「西日本で夏日を記録しましたー」とかいってるのはさすがに信じがたいが(この日の最高気温は5度)。
北海道で夏日ったら8月の気温なんだぞ。
国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 2 渡島半島東端には駒ケ岳や恵山といった活火山が多くあり、それらに由来する溶岩が複雑な海岸線を形成している。
国道は海にまで迫った岩壁の下をなぞるように進んでおり、どうにもならない場所には隧道が穿たれた。
滝の沢トンネルも、高さ50メートルを越える絶壁の足元を行くことができず、その内部に延長850メートルもの穴を開けて通過させたものだ。

写真は滝の沢トンネルの西側坑口。
昭和30年代に計画されたトンネルは限界高4.5メートル、幅員6.0メートルで歩道なし。狭い。
国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 3 国道の隧道は古くは昭和初期に作られたものもあり、この日は実際に滝の沢トンネルに至るまでにいくつかの素掘りの廃隧道を探索していた。
それらに比べれば滝の沢トンネルは新しく、現地訪問時には旧道があるのでは、などと考えていた(実際には上記のとおり旧道は無い)。
定石に従って坑口から海側を見てみると、それっぽく見える分岐は一応存在する。
国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 4 分岐した先は漁港の小広場となっている。
しかし、海岸線をトレースするような路盤は一切なく、「なんだ、道ねーじゃん」と思って引き返しかけた・・・が。
国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 5 「あやしい・・・」
岩壁の横っ腹に、妙に黒く映る部分がある。明らかに、窪んでいる。
海蝕洞か?現道の滝の沢トンネルができる前の隧道か?
いずれにせよ、ここから近づく術はない。

悶々とした気持ちを抱えつつ、現道のトンネルに突入。
国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 6 「窪みとか、どうでもいいよね!」

突入直後、山側の壁に青白い光が反射していると思ったら、反対側の壁にぽっかりと大きな穴があいていた。
しかも封鎖されてないときたもんだ。
ガードの固い北海道の国道で、これは実にけしからんことだと思います。
国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 7 素掘りだなんてけしからん!
コンクリートの覆工はほんの数メートルだけで、その10倍はあろうかという奥は全部素掘りだった。
さらにその向こうには荒磯に砕ける波飛沫が舞っている。
現役国道のトンネルに横穴が開いていて封鎖されてなくてその先素掘りだなんて、許されませんよ!
ワクワクしちゃうじゃない・・・
国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 8 横穴の規模は大きく、広いところでは幅5メートル近くもあり、高さも同じくらいだ。
近くにあった旧国道の廃隧道に近いくらいの大きさがある。

1-2 ほとばしるエナジーと漂う異世界の空気

国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 9
すっげ、なにこれすっげ
国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 10 振り返ってみると、言葉には言い表せない異世界の光景が見えた。
ナメック星の洞窟の中のカプセルハウスみたいな。
未知の洞窟を探検していたら、その奥に文明がありました、みたいな。

寒色の海の光と暖色のナトリウムランプのコントラストが実にいい。
国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 11 足元も舗装されておらず、むき出しの岩に上から降ってきた岩が積もっている。

かなり崩壊しているが一直線に土管が延びており、水抜き坑としての用途がある(あった)らしい。
トンネルの入り口からの距離がそれほど長くないため、現道工事の際に資材を海上輸送してここからも掘り進めた・・・という可能性は薄いと思われる。
むしろ、生じた廃土を外へ投棄する目的があったのかもしれない。
国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 12 30メートルほどの横坑を抜けた先を見てみると・・・なんか見た景色。
そう、最初に見た岩壁の窪みは、この横穴だった。 横坑の出口も封鎖されていた形跡はなく、そのまま海に落ち込んでいる。
国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 13 足元にある古びた土管の出口。水は流れていない。
そもそも土管によって形成された水路は経年劣化によって断裂しまくりで、流路として用を成さないだろう。
今足元にたまっている水は本坑由来のものではなく、上から降ってきた漏水によるものだ。
国道278号 滝の沢トンネル 素掘り横坑三連発 14 横坑出口より振り返って撮影。
「しばらくは明かりもあってコンクリート製で、奥で素掘りになる」というのは時々見かけるが、 逆のパターンである「素掘りでしばらく行って奥はコンクリ&明かり」というのはあまりお目にかかることはない。
地底人の住処のような独特の雰囲気があり、しばし見とれていた。
岩壁の窪みも解決し、感無量の気分で先を目指す。
が、そんな気分に浸るのはまだ早かった・・・!
[ 09' 3/20 訪問 ] [ 09' 3/25 作成 ]
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