国道289号 点線国道八十里越 [中編] 0

概要

国道289号 点線国道八十里越 [中編]の地図
無念の敗退から2週間後、前回の雪辱を果たすべく、私は再び八十里越に挑んだ。
ただし、前回と同じルートをたどっても同じ結果になることは目に見えていたので、前回敗退した鞍掛峠の反対側からアプローチすることにした。
JR只見線→県道→五味沢林道と進んで反対側から鞍掛峠に到達した後、八十里越のもうひとつの峠、木ノ根峠に挑むつもりだ。

0-1 鉄分

国道289号 点線国道八十里越 [中編] 1 なにしろ峠を越える車道が通じていないので、簡単に「峠の反対側からアプローチ」なんていっても大変な苦労である。
輪行で近くまで行くにも、貧弱を極めるJR只見線のダイヤではどうがんばっても昼過ぎにならないと着けない。
それも、こんな臨時列車を利用してやっと、である。

臨時列車はこの日只見で運行されるSLに連絡するもので、最初は「臨時列車に自転車なぞ乗せるスペースはなかろう」と乗らないつもりだったが、 長岡駅で停車中の車内は比較的すいていたので、急遽乗り込んだのだった。
臨時列車は快速扱いで、長岡を出た後は小出駅と大白川駅の二つにしか止まらず、まるで私のために用意されたような都合の良さではないか。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 2 ま、さすがに臨時列車だけあって、車内の「鉄分」の多さにはさすがに場違いであったかと思うも、 ふと気づくと周囲の人に混じってこんな行き先表を撮影しているあたり、私も人のことは言えない。
普通、上越線から只見線へと列車が入っていくことはないためか、小出駅で只見線へと入るときは一度ホームに入場した後、列車を上越線のホームへと移動させるという珍しい体験をした。
その移動中、鉄分豊富な車内は総立ちのスタンディングオベーションとなったのには参ったが・・・

なお、この写真も上の写真も、その小出駅で撮影したものである。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 3 破間川の渓谷をわき目に見ながら、やがて大白川駅に到達。
元来、只見でSLに連絡するための臨時列車なので、大白川という途中駅で降りたのはもちろん私だけ。
大白川駅は臨時列車が停車するような大きな駅では決してない(それどころか新潟県で最も利用者の少ない駅)のだが、タブレットの取り扱いをする必要があるとか何とかで停車。
写真撮影の群集を掻き分けて、登山リュックと自転車を抱えて一人降りていくのはさすがに気恥ずかしいものがあった。

0-2 風前の灯なのは点線国道だけではなかった

国道289号 点線国道八十里越 [中編] 4 大白川駅から県道に乗り、上流、さらには峠を目指して登っていく。
道はかなり急で、照りつける日差しに早くも滴り落ちるほどの汗が噴き出してきた。
上流に行くほど破間川の渓谷は深くなり、紅葉の時期などさぞ見栄えすることが想像される。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 5 その一方で、五味沢集落周辺の観光施設は軒並み潰れており、ちょっと不気味な空気が漂っていた。
唯一営業していた温泉も、日帰り入浴は17時まで、レストランも宿泊者限定、宿の前の公園でのキャンプは一張り3000円(キャンプ場のトイレはほとんど管理されておらず、 カマドウマの大群!)・・・などなど、利用しにくいことこの上ない。

頭にきたので近くにあったダムサイトの巨大な駐車場(車一台も駐車せず)の脇にテントを張って一泊。
この辺は登山や釣りなどで日帰り客の需要もあるだろうに、そういった客を全部取り逃すような営業の仕方はいかがなものか。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 6 実は前日に点線国道部分の探索も部分的に行ったのだが、二日目の探索とまとめて紹介しよう。

八十里越へのアプローチはこの五味沢林道が使える。
あいにく入り口でゲート封鎖され、一般の自動車は進入禁止だ。
ガードはなかなか固く、バイクも無理だろう。
自転車の機動力を活かし、するりと脇をぬけた。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 7 なお、五味沢林道は正規のゲートのほかにもうひとつ入り口がある。
いや、地図にはこちらしか載っていないので、ある意味こっちが正規のルートといえるかもしれない。

上の写真のゲートより少し集落側によっており、ふもとから県道を走ってきたときにまず目にするのはこの石の封鎖だ。
開放のし様がない封鎖に、最初見たときは五味沢林道もすでに廃道かと肝を冷やしたのである。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 8 ルート変更の理由は石の封鎖から少し進んだところにあったこの崩落らしい。
眼下数十メートルに流れる破間川源流によって林道は激しくえぐられている。
頭上を走る電線のために徹底的な補修が施されているのだが、どういうわけか自動車が通れるようにはできていない。
「どうせ直してもまた崩れるだろ」とでも結論したのか、長期的な解決策としてルート変更策が取られたようだ。
したがって、この道は「旧林道」ということになる。
「旧林道」はすぐに新ルートに合流し、何事もなかったかのように車道として続いていく。

0-3 五味沢林道と点線国道の出会い

国道289号 点線国道八十里越 [中編] 9 林道は景色のよい峡谷の上を登る、登る、登る。
比較的勾配はゆるく、林道に入る前の県道の方がむしろきつかったのではなかろうか。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 10 九十九折の一つもない穏やかな線形と勾配を満喫していたら、道端に見つけたこれ何よ。
何ってアレよ、レールじゃん?■もう一枚の写真

いやいや、何でこんなところにレールがっ!?
まさかまさか、林鉄でもあったというのか???

五味沢林道の由来は調べがついていないが、たとえばそこに鉄路があったとしても不思議ではない勾配と線形なのは確かだ。
周辺をさらに探索してみたところ、どうやらレールは雪崩防止柵に使われているらしい。
これらのレールがどこに由来するのか・・・?気になるところではある。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 11 標高900メートル近いところに横たわる国道まで続く林道も長い。
当然ひたすらに登り続けるわけで、自転車でも頻繁な休憩を入れながら2時間近くかかった。
写真は五味沢林道と国道との合流地点。
左奥から手前右側に伸びる国道に、手前左側から来た林道が合流する、まぎれもない丁字路。
もう一度言おう、手前右側の草むらが、れっきとした現役の国道289号であるよ。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 12 その「草むらの先」には、福島県との県境である、木ノ根峠へと続くかほそい道が確かに続いていた。
分岐点には標柱もあり、登山道としての整備は申し分ない。

残念なことに国道を示すようなものは周辺には存在しない。
五味沢林道との合流地点に青看とか、せめておにぎりでもあれば・・・
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 13 木ノ根峠への登山道はちょっと置いておき、まずは鞍掛峠方向へと延びる林道の終点を目指す。

三条側から鞍掛峠を越えてきた点線国道は五味沢林道という"救いの手"により、かろうじて車輌通行可能な区間へと変貌する。
地形的に穏やかで幅広の道は、往時の八十里越を髣髴とさせるような美しい光景だ。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 14 国道と合流してから300メートルたらずであっけなく五味沢林道の終点を迎える。
終点は広場になっており、行く筋もの車輌の転回跡やキャンプの跡まであった。無論、登山国道はさらに奥まで続いている。

まるで国道に達したことでその使命をやり遂げたかのように費える林道。
その建設理由・時期は定かではないが、この点線国道と無関係でないことはおそらく間違いなかろう。
戦後、新潟県三条と福島県只見を結ぶ自動車道路の開通を目指し、実際に新潟県側では一部区間が開通した(塩野淵林道)。
残る福島県側の道路工事を目的として五味沢林道は建設され、またその一部は国道になったものと想像される。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 15 五味沢林道の建設目的が100%工事用道路であるならば、戦後計画された「只見三条産業道路」のルートが大幅に変更された今、この道に利用価値などないはず、 待っているのは(鞍掛峠の向こう側がそうであったように)かすかな登山道として生き残る運命だけだ。
しかし現実にこうして車道として今も生きているのは、もちろん地元の山菜取りなどのほかに、終点に「田代平」という高層湿原があることも理由に挙げられそうだ。
田代平はブナ林に囲まれた30ヘクタールほどの湿地帯で、静寂が包む湿性草原には様々な植物群落が分布している。
もちろん一般の車はここまで入れないが、あるいは五味沢集落にある旅館や温泉施設の車で登ってくるのかもしれない。
車でなければ、ゲートから自転車で1時間半、徒歩で3時間ほどもかかる、秘境の湿原である。
林道は一般車通行止め、徒歩なら数時間という山奥の点線国道に、再び足をつけた。
前回果たせなかった鞍掛峠と、もうひとつの峠である木ノ根峠を目指し、自転車を脇に従えての登山が始まる。
[ 07' 7/7 訪問 ] [ 07' 8/21 作成 ]
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