国道289号 点線国道八十里越 [中編] 3

概要

国道289号 点線国道八十里越 [中編]の地図 林道合流地点〜木の根峠の探索を終え、残る区間は林道〜鞍掛峠間である。この区間の探索は二日間に分けて行った(なお、これまでにお伝えしていた木の根峠の探索は二日目に行っている)。
初日は林道〜小松横手を、木の根峠を探索した二日目には小松横手〜鞍掛峠の探索をメインとした。
二日に分けたのは、初日にちょっと無理をしてしまったために、時間的にきつくなったためである。
初日の無理というのが、例のごとく自転車を持ち込んだこと。

3-1 第一日目 五味沢林道終点を出発

国道289号 点線国道八十里越 [中編] 14 以前お伝えしたように、林道の終点は広場になっており、ここまでは自動車で入ってくることができる。
キャンプの跡なども見られ、ここを拠点にできれば八十里越の探索もやりやすいのだが、まだ私はこんな山中に一人で野宿する度胸はない。


天気予報では快晴のはずが、山の天気にはそれが当てはまらないのか、頭上には灰色の雲が広がりだしてきた。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 47 広場から自転車とともに軽い藪を越え、鞍掛峠を目指す。
少しの間は自動車も通れそうな広い道だ。
往時の街道時代の面影を残すいい雰囲気である。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 48 林道終点から5分も行かずに、「田代平」と彫られた道標に到達。
田代平については以前に簡単に説明したとおり、30ヘクタールほどの湿性草原である。
ただし、国道そのものからは全く見えず、ここから分岐していく道を5分ほど歩いていく必要がある。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 49 あまり点線国道探訪紀とは関係ないかもしれないが、せっかくなので立ち寄ってみた。
足元には木道や植物の解説看板があったりして、一般人が来るには歩いて3時間もかかる山中にある秘境とは思えない充実振りである。


この田代平にはかつて山小屋(田代小屋)が存在した。
江戸時代の田代小屋は50坪もあった大きなもので、番人も常駐する、八十里越の中心的役割を果たしていた。
寛政二年(1790年)には「日光団治」と呼ばれたお尋ね者が小屋をのっとったり、 天保八年(1837年)には番人が手込めにされて食料が持ち出されたりするなど、様々な事件の舞台にもなったという。

かつては宿泊所としても機能していたが、木の根峠に山小屋ができると、茶店的な休憩所へと役割を変え、 最終的には街道そのものの重要性が低くなった大正時代の初めに閉鎖された。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 50 はいこれ現役の国道289号ね。廃道とか旧道とかじゃないですよ。


かなりアップダウンのあった木の根峠への道とは違い、勾配はほとんど感じられない。
意外とやわらかい足元の草もさほど自転車の邪魔にはならない。
こういうレベルなら、楽しくてしょうがない。

3-2 国道の道路構造物には違いない

国道289号 点線国道八十里越 [中編] 51 途中、小さな沢を横断するような箇所がいくつも存在した。
上流側にΩ字を書いて迂回するところもあれば、無理やり川面まで下りて渡渉する場所もある。
自転車を抱えていると辛いが、こういうところにこそ、過去の遺構が眠っている・・・
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 52
しゅわっち!!
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 53 はい頂きました石垣頂きました。
川の両岸には苔むした石組みが幾星霜のときを超えてここが主要な街道であること、そしてその流れを受けた国道であることを伝えている。

見たところ木の根峠への道の途中で見た石垣と同年代のもののように見える。
この付近のルートも、江戸時代のそれと全く変わっていない。
果たしてこの石垣は敗走する長岡兵を、河井継之助を通したのだろうか・・・

3-3 小松横手到着

国道289号 点線国道八十里越 [中編] 54 等高線に従って進んでいるため、非常に歩きやすく、いい道だ。
歴史街道八十里越、点線国道289号において、最も進みやすく、その歴史と情緒を触れられる区間といえよう。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 55 進入時に懸案であった空模様はやはり的中してしまい、こんな山中で大粒の雨が落ちてきたりもした。
たとえ晴天でも用意してある雨具に身を包み、大きめの木の下で雨宿り。

真っ当な登山に興味のない私でも、今いる場所は国道とはいえ本物の登山道だ。
郷に入っては郷に従えというか、装備だけはまともな登山道具をそろえてある。
自転車だってマウンテンバイクなんだから、登山道具といえば登山道具でしょ?
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 56 幸いにして雨は通り雨程度で過ぎ、いい休憩で済ますことができた。

田代平から900メートルほど行くと、谷向こうの山々が見えてきた。
ブナ林に囲まれほとんど見晴らしの効かなかった国道に、雨を降らせた雲とともに視界も一緒に開けた気分だ。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 57 振り返って撮影。
視界が開けるということは崖っぷちを進んでいることを意味する。
足元はむき出しの岩石を削り取った道だが、全体に傾斜しており、今しがた降った雨で滑落でもすれば、二度と家には帰れまい。
自転車がなければたいしたことのない道でも、小脇に大荷物を抱えていては大仕事だ。
もっとも、江戸や明治にはこんな道を行商の人間が巨大な荷物を抱えて通ったはずで、それに比べれば自転車なぞなにするものぞ。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 58 田代平から40分、およそ1kmで、田代平と鞍掛峠の中間地点、「小松横手」という地にたどり着いた。
ここまでの道は多少藪っているところもあったが、木の根峠までの道に比べればずいぶんいい道で、登山道、史道、 そして点線国道を歩いたという実感を強く感じられる。
ちょっとだけ自転車に乗車できる区間もあったし。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 59 小松横手はその名の通り、一本の目立つ松が特徴的な場所である。人里離れた山中で、強い生命力を感じさせるような、不思議な松だ。
見晴らしも良く、多くの登山者たちがここで一息つくことだろう。
そしてそれはかつて北越戦争に敗れ、敗走する長岡兵とその家族、あるいはそれを追撃した万を超える数の新政府軍、その両者にとっても同様だったに違いない。
なにより、この一本松には「見返りの松」という別名がつけられており、河井の辞生の句、「八十里 腰抜け武士の 越す峠」はこの場所で詠まれたという説もある。
八十里越で唯一見通しの聞く場所で、いわば越後国を望める最後の場所である。
国道289号 点線国道八十里越 [中編] 60 多くの人間が、様々な想いでこの場所の景色を眺めたに違いない。
平成に生きる私はというと、この怪しい空模様に不安を覚えていた。
時刻はすでに午後4時近く、空模様も考えるとこれから1km先の鞍掛峠まで自転車で往復することは無謀と思い、初日の探索はここまでにすることにした。
実際のところ、テント・寝袋・食料などのキャンプ用品は全部持ち歩いているので、度胸さえあればここで寝てしまってもいいのかもしれない。
が、ヘタレな私はさっさと下山の支度を整え、人のぬくもりある五味沢の集落へと下ることにした。
鞍掛峠という最終目的地は、明日のお楽しみとしよう。
[ 07' 7/7 訪問 ] [ 08' 7/1 作成 ]
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