国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 2

概要

国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネルの地図
貫通を確認できたことで、テンションは一気に跳ね上がった。
うっしゃ、行くぞ。

2-1 現道の栄華が故の皮肉

国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 16 進入前に振り返って撮影。
足元には泥が堆積しており、坑口付近は荒れ気味だ。

ただでさえ隧道の直前で大きくカーブしている上、坑口に付設されたコンクリート製のスノーシェードが非常に視界を妨げる。
カーブミラーすら設置されるような所では、到底平成の国道としては失格だ。
このときの探索以前、2年ほど前に現道の新桜町トンネルを通ったことがあるが、結構な交通量だったと記憶している。
国道291号は、柏崎と内陸部をつなぐ幹線国道といえるような道だ。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 17 スノーシェードはその劣化振りから、隧道の開通と同時に作られたものと思われる。
そして坑口には、妙な水槽が作られていた。
隧道の漏水対策のものだと思われるが、浅学にして正体不明。
道路工学でも勉強するかなあ。

最近臆病になってきた私は、なんか死体でも沈んでいそうで少々覗くのが怖かった。
静寂に包まれた周囲はそんな気分にさせるに十分なのだ。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 18 ポータルを見てみよう。
まずは水槽のすぐ上に、銘板・・・ともいえないが、この隧道の路線名が掲げられていた。
そこに書かれていた名称は「主要地方道 柏崎小千谷線」であり、国道291号ではない。
もちろん、これは隧道竣工当初のものであろう。
隧道の竣工が昭和43年頃、国道指定は昭和57年、そして封鎖されたのが平成12年だ。
この間、主要地方道として14年、国道として18年、新トンネルに切り替えられてから6年を経過している。
昭和43年竣工であれば、まだまだ現役の隧道も多いのだが・・・
この隧道は、捨てられた。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 19 反対側の壁には扁額がある。
天井部分がスノーシェードに隠れてしまっているため、ここにつけられたようだ。

正式名称、「桜町トンネル」である。「桜町隧道」ではない。
現道のトンネルはここでは「新桜町トンネル」と呼称しているが、実際にはそちらの正式名称も「桜町トンネル」だ。
その命名の仕方は、完全に旧トンネルが存在したことを抹消するかのようで、少し悲しい。

2-2 とても現実的な恐怖を避けて

国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 20 さーて行きますか。

ロックシェード手前にあった三つのコンクリートと同じものが、坑口の手前にも二つ並べてあった。
これにより、外開きの柵は完全にふさがれ、たとえ柵の鍵があったとしても決してこの扉が開くことはない。
毎度思うのだが、こういう場所の鍵って誰が持っているのだろうか・・・?
おそらく道路行政の管理だろうが、封印された扉の鍵がカチリと音を立てて開かれ、 さび付いた重々しい音を隧道内に響かせながらゆっくりと扉が開かれる瞬間を見てみたいものだ。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 21 坑口に置かれた二つのコンクリートは扉の封印には決定的だが、徒歩や自転車においてはかえってそれが足場となり、柵の乗りこえを容易にする。
実際、その気になればコンクリートを足場にして自転車を上から放り込むこともできると思われたが、柵の内側には足場がないために、 隧道内から外へ出すことは難しいだろう。
反対側の坑口でも内側に足場がなければ、私はともかく自転車を外に出せなくなってしまう可能性が考えられた。
そうなっては、まさに上で述べた封印の開放以外に自転車を救出する手段はない。
仮に望み通りその瞬間を目にできたとしても、その後の大目玉を考えると・・・ブルブル

というわけで自転車はひとまず置いておき、反対側の坑口を観察することにした。
徒手空拳ならたとえ足場がなくとも柵を越えられるだろうが、手っ取り早く脇の隙間から侵入。
かなりきつかったので、体型を選ぶかも。

2-3 まだ生きてます?

国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 22 内部は・・・泥がひどい。
スノーシェード内にもひどく堆積していたが、入口から数十メートルほどはグチョグチョと歩きにくい。
一方で、そこに刻まれた足跡の数に驚いた。
私のような人間が興味本位でつけたにしては、あまりにもその数が膨大なのだ。
全く人を拒むはずの封印された隧道内に、まるで雑踏が聞こえるかのような数の足跡。

どうもこの隧道・・・完璧に放棄されたわけではないのではないか?
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 23 そう思えたもうひとつの理由が、このケーブルにある。
まずもって隧道内にまで引き込まれていた電線からして怪しいと思ったのだが、「東北電力高電圧ケーブル」と書かれたそれは、 陰鬱な廃隧道には似つかわしくない新しいもののように見えた。
確証はないが、どうやらこのケーブルの保守等で定期的に人が出入りしているような気がする。
入口の雑踏は、それらの作業員のものと思われる。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 24 暗黒に包まれた隧道内には水の滴る音すらなく、周囲は完全に静寂が支配した。
入洞までは少々躊躇する雰囲気があったが、いざ足を踏み入れてみると、時が止まったその独特の空気に心癒される。
頬にあたる穏やかな冷気もどこか落ち着く。
本来人が利用するはずのない"廃されたもの"に対する、この不思議な感情はどこから生まれるのだろうか。

地図から察するに延長は400メートルほど。
トンネル内で峠のサミットを迎えているようで、向こう側の坑口の明かりは扁平だ。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 25 地震の影響を不安に思っていたが、目視の限りダメージがあるようには思えない。
この付近も地震当時は震度6くらいにはなったはずだが、意外に頑丈なものだ。

目に付く老朽化というのも特に感じられず、新トンネルに切り替えられた理由は歩道も存在しないこの幅員の狭さ、 そして前後の道の線形の悪さが主だった理由だろう。
現道をビュンビュン走り抜ける大型車には、このトンネルはよろしくない。

2-4 意外な結末

国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 26 トンネルの中ほどで目に付いたペイント。
ご丁寧にも左右両方の壁につけられたそれは、この地点が柏崎市と小千谷市を分ける境であることを教えてくれた。


・・・と、何の疑問もなく現地では通り過ぎてしまったのだが、これが大きな間違いであることに気付いたのは帰宅後しばらくしてからだった。
銘板にあったとおり、このトンネルは旧柏崎小千谷線である。
冒頭でトンネルは小千谷市と小国町の境にあるとお伝えしたが、小国町は西に柏崎市と接しており、このペイントを見たときには、
「へー、小国町って平成の大合併で柏崎と合併したんだ」
と思ってしまった。

が、これは間違いだらけの考察である。
まずこのトンネルが現役だった頃(平成13年まで)はまだ合併話もそれほど盛り上がっていない頃だ。
また、なにより旧小国町は確かに合併で消失したものの、その合併先は柏崎市ではなく、長岡市である。
すなわち、この場所に柏崎という自治体が存在した歴史はない。

・・・じゃあ何でこんなところに柏崎市の名前が・・・?
方角は確かに柏崎の方向、小千谷の方向に分かれているが、単に行き先を書いたわけではないだろう。
少なくとも、このペイントは自治体を区分するものではない。
電力か、あるいは管理する土木事務所の区別だろうか。
この可能性は小千谷側坑口に管理境界を示す標識があったことからも支持される。
ただし、現地では何の疑問も抱かなかったため、その標識についてしっかり調べてこなかったのが悔やまれる。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 27 全体的に痛みというほどの物はないが、多少漏水の跡も見受けられ、さすがに歳を重ねた隧道の老朽化は防げない。
まあ、電線が通ってる限り、崩落や坑口密閉ということは今後もなかろう。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 28 隧道延長はおよそ400メートル。
浅緑色の神秘的な出口に向かって歩く。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 29 出口もやはり先ほどと同様の柵で封鎖されている。
また、こちらには内部、外部ともに廃材だか資材だか分からないさまざまな物が置かれていた。

「これらを足場にすれば、自転車でも柵を越せるかな?」

なんて考えてた矢先、
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 30 開いてんじゃん!

なんだよ、ウェルカムかよ・・・
拍子抜け。

2-5 小国町側の現道へ

国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 31 振り返って撮影。

小千谷側の坑口には泥が堆積していたが、こちらはきれいだ。
だが、向かって左側の壁はやや傷んできており、最近施されたらしい補修も何箇所か見られた。
やっぱり、関係者はそれなりに入洞しているようだ。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 32 旧桜町トンネル小国町側坑口。

高さ制限4メートルとあるが、旧道落ち後にいろいろ手を加えられたようで、架線が暖簾のようにかかっている。
また、資材とともに土嚢が地面に敷かれ、付近に泥が堆積するのを防いでいる。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 33 小千谷側はそれほど道にダメージはなかったが、小国側の坑口では大規模な土砂崩れが発生したようだ。
はるか数十メートルまで補修されたそれは間違いなく中越地震のものだ。
恐ろしい。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 34 坑口の大きさと比べると、その規模の大きさがお分かりいただけるだろう。
完全に放棄されたトンネルならば、こんな大掛かりな補修は行うはずもない。
旧道落ちしたといえども、このトンネルはまだライフラインをつないでいる。


この後、再びトンネルにもぐり、無事自転車を通過させることに成功した。
そのまま現道を目指す。
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 35 小国側坑口から少し行くと、路盤が崩壊している箇所があるが、工事用の迂回路ができているので通過は容易。

その先でであった奇妙な線形。
なんだこの四次元的な道路は。
どこがどう繋がっているんだこれ?

今いる道が旧道で、その左の道への取り付け部分はぐにゃぐにゃに改造されている。
左の道は一見現道に見えるが、これは現道ではなく、さらに左側にほんのわずかに写る道路がそれである。
正体不明のその道は手前側は行き止まりになっており、ますますもって意味不明の道だ。
ここを通ったら、異次元に連れて行かれそう・・・
国道291号 桜町トンネル旧道 旧桜町トンネル 36 四次元道路を過ぎると、現道に合流する。
トンネルから先は下りであること、さらに距離も短いことから、現道まではあっという間だった。
心配していた地震の影響もなく(というか復旧されていて)、無事通過である。
ようやく安堵のため息をついた。
今回は小国側の扉が開いていたため、自転車を通過させることは難なくできたものの、常時開放されているとは思えない。
確認せずに小千谷側から自転車を進入させた際、小国側が閉鎖されていると、最悪自転車は脱出不能となる恐れがある。
もしもなんからかの形で内部に入る場合は、その点に注意されたい。
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