国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 3

概要

国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道の地図
旧道と旧旧道は日高耶馬溪と称される絶壁の下を通っていた。
平成9年以来、その道は見捨てられ、絶景の地に足を運ぶものも今や稀であろう。
出られない幌満隧道から引き返し、旧道の分岐地点まで戻ってきた。

3-1 幌満隧道出口はどこだ

国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 29 旧道は特に封鎖されているわけではないが、「一般車駐車禁止」といった看板もあった。
旧道の海岸線は日高耶馬渓という絶景ポイントといわれる割には、それを案内するようなものは一切見当たらない。
左に見える橋(旧幌満橋)に進入。
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 30 旧幌満橋には竣工年が書かれた銘版は見当たらず、その後の調査によって昭和42年竣工であることが明らかになっている。
現道への切り替えは平成9年で、老朽化というほどのこともないだろうに。
原因はまさに日高耶馬溪の絶壁にありそうだ。
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 31 幌満川が海に出るまさにその場所にかけられた旧橋は長い。
それを渡りきったところがちょうど幌満隧道の塞がれた出口付近と思われる。
線形的に、この藪のあたりが出口だろうか。
旧道の路盤と旧旧道の路盤は数メートルの高低差があるため、隧道出口は旧道の路盤に埋没したように見える。
・・・が、納得できていないのは前回お話したとおりだ。

ちなみに、目の前の落石防護ネットの足元に、先ほど顔を出した不可解な穴が開いているはずだ。

3-2 幌満隧道の兄弟穴

国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 32 橋を渡ってから100メートルほどで通行止め。
何でこんな中途半端なところで?とおもいきや、ゲートのすぐ脇が駐車場らしい。
現道からここまでは、日高耶馬渓を眺めるスポットとして開放されているような匂いはするものの・・・↓
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 33 廃駐車場!!
でしょう、これは。
入れません。その代わり、ってます。


結局、旧幌満橋の存在意義といえば、この廃駐車場へのアプローチ以外にないのだ。
日高耶馬溪という観光地そのものが案内されていない以上、管理側としてはあまりこちらへ来てほしくないという態度が見え見えである。
そんなところに架かる長大な旧橋が、この先恵まれた保守管理をされるとは、残念ながら思えない。
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 34 この手の海沿い旧道にしては珍しく、ゲートのガードはゆるゆる。
ゲートの先で振り返ってみると、ゴツい岩肌と国道時代のものらしい古びた標識が並んでいた。
現在の路盤は大正の終わりに海岸を埋め立てて造ったものだろう。
この近辺にも、田中五作氏の築き上げた明治隧道があったに違いない。
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 35 廃道となったとはいえ、今はこうして路盤を歩くことが可能だ。
昭和初期に幌満隧道を含む海岸道路が完成するまでは、海沿いを行くことは至難の業だった。
様似町史には当時の様子が描かれている。
───昔この辺りを通るとき、かなりの危険を冒したものである。岸壁続きの真下が石浜で道はなく、通行人は崖をよじ登ったり、あるいは打ち寄せる波の引き間を狙って走ったりする命がけの道中であった。 仰げば数十メートルの断崖絶壁、そのところどころに滝が白くかかる。縦横に亀裂のある岩壁が今にも頭の上に落ちてきそうに思われる。また、海のほうに目を転ずると、海中から鋭い牙のように巌頭が突き出ている。 海が荒れると、太平洋の怒涛はさながら岩をかみ吠えているようだ。───
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 36 明治に築かれた隧道があってもなお、こんな有様だったのである(明治幌満隧道の海面からの高さを見よ!)。

その改良として生まれた大正幌満隧道。そして実はもうひとつ、昭和44年の地形図には、今立っている場所の目の前に隧道があったように描かれている。
幌満隧道と同時期に完成したと思われる名称不明のこの隧道は、隧道リストにも記載はなく、昭和56年の地形図からは幌満隧道ともども消滅してしまった。
状況を鑑みれば昭和40年代に開削消滅と思われるが、幌満隧道のように地形図から消えつつもちゃっかり岩の中に眠っていたりするのでなんともいいがたい。
明治時代に築かれた11の隧道とあわせ、もう少し詳しい調査を行ってみたいところだ。

3-3 猛き獣の道

国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 37 道路構造物としては少々物足りない廃道探索の中、見つけたのは25.5kmのキロポスト。
訪れる者の無くなった日高耶馬溪の海岸線が、かつてまぎれもない国道であったことの証である。
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 38 かつては人々に畏怖を与えた絶壁も、大掛かりな改良工事の結果、相当姿を変えているように見える。
画一的に均された壁面は落石防護ネットに徹底して覆われており、封印されたその姿は、飼われておとなしくなった猛獣を檻に入れて眺めるかのようだった。
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 39 とはいっても、その猛獣はひとたび人間という枷が外れたとき、本来の野獣の牙をむき出しにするのであってだね。

檻を引き裂いた牙のごとき岩塊が、路面いっぱいを覆っていた。
放棄されてからそれほど時間は経っていないはずなのに、これだけの崩壊があるのはちょっと面食らった。
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 40 振り返って撮影。

この道の放棄の原因は、やはり旧幌満橋ではなく、この絶壁下道路にある。道幅も狭く、一車線分しか確保できていない。
わざわざ旧橋を残したのも、この日高耶馬渓の光景を後世に伝えるためのものだったのだろう。
いつの間にか人間たちはそこを管理する気がなくなってしまい、眠れる獅子は再び暴れ始めた。
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 41 遠目には一箇所で崩れていたような崩落は、実際には大小二箇所の崩落からなる。
どちらも自転車を担いで越えられないことはないが、そこまでして向こう側まで行かなければならない理由はないため、あっさり自転車は置いてきた。
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 42 はじめに小崩落を越え、次に大崩落(というほど大きくはない)を越えにかかる。
写真は大崩落の頂上から振り返って撮影。
すぐに戻ってくるからちょっと待っててくれ、相棒よ。
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 43 二つの崩落を越えると、平成幌満トンネルを抜けてきた現道との合流地点が見えてくる。
日高耶馬溪といわれる海岸線はもう少し先まで続いているが、とりあえず現道との合流地点をゴールとしよう。
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 44 もう一箇所、今にも獅子が飛び出てきそうな崩落を脇に見ながら、出口のゲートに到達。
お盆休みも終わった平日で、車の量もまばらだった。


なお、新旧の路盤が合一しているのはほんのわずかな距離で、この先にはもうひとつ、長大な平成トンネルとその旧道が分かれている。
さらに、分かれた先で旧旧道も分かれたりするが、その区間のレポートはまた機会を改めて。
国道336号 幌満トンネル旧旧道 幌満隧道 45 冬島側の新旧合流地点。
幌満側にあった駐車場などの設備はなく、もちろん日高耶馬溪の文字もどこにもない。
管理するには危険すぎる海岸道路は、もうアピールできる場所ではなくなってしまったらしい。

今はまだ人を通す旧幌満橋も、存在意義なくしてはいつ撤去されるかわからない。
そんな橋に戻り、再び車に乗って旅を続けた。
観光地という肩書きを捨てた海岸線には、往時の苦労を偲ばせる素掘り隧道が眠っていた。
明治に築かれた11の隧道、大正から昭和にかけて築かれ、後に地図から消滅したいくつかの隧道・・・
私の中で今も咆哮する、好奇心という獣が、まだこの道を狙っている。
[ 09' 8/24 訪問 ] [ 09' 10/11 作成 ]
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