国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 2

概要

国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠の地図
かつて徒歩の往来すら見限られ、また多くのオブローダーを苦しめたはずの礼文華峠。
しかし今私の目の前に広がる峠の旧道はそんな脅威を微塵も感じさせない。
走りやすいのは結構だが、いったいどうしたことなのだ?

2-1 逆らわないのが長生きする秘訣なんです

国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 14 ウネウネウネウネウネウネ・・・

道はまるで苦悶しながらのたうちまわる様に右へ左へと延び、高度を上げていく。
目の前に稜線が迫る光景ではあるが、実際の礼文華峠はまだずっと先である。
全体の三分の一も来ていない。
国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 15 一雨で流れ去ったという悪名高い礼文華峠も、旧国道であったこの道が放棄されてから数十年、勿論その間全く人が入らなかったわけではないが、 今にいたるまでほとんど崩落もなく残っている。
ガチガチに固めた道というわけでは当然なく、わずかに見え隠れする怪しい石垣があるだけ。
そんな道が人の手を離れても大きなダメージがないのは、ひとえに「自然の地形に逆らわない線形」であるからに相違ない。
鉄という元素は錆びまくった酸化鉄の姿こそが安定且つ本来の姿であり、我々がよく目にするような鋼鉄は、自然の目から見れば不自然な存在なのである。
そういったものはやがて錆び、自然の状態を取り戻す。

同じことが道にも言える。
屈曲や勾配を犠牲にしても、そこにある地形に逆らわない道は、人間の生活から見れば醜い酸化鉄。
その一方で、ひとたびそれが人の手を離れ、自然に帰されたとき、生き残っていくのはそういった無理のない道なのである。
地形を大きく改変したような道は、超長期的な視点では、非常に脆い。

2-2 礼文華の狂い風

国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 16 この日は風が強かった。
山に入るまでは東風であったが、廃道区間に足を踏み入れた途端、東西南北のあらゆる方向から風が吹きつけ、かと思えば突然静まったりする。
礼文華の複雑な地形は、自由の風すらも惑わせるのか。
礼文華の風はゴウゴウと音を立てながら吹きすさぶ、不気味な風だ。
国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 17 もういったいいくつの九十九を登ってきたのか、記憶にない。
地図を見ると、ここが峠に至る最後のヘアピンだ。
山肌を削って作られた道だが、大きな崩壊はない。

この場所は草が刈られておらず、冬枯れした下草のふかふかした地面が広がる。
夏場は藪るだろう。
国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 18 最後のヘアピンを越えると、山の稜線を越える。
それまで南側の斜面をグネグネと登りつめていたのが、北側の斜面に出ることになる。
ただし、ここが峠ではなく、このまま北斜面をさらに進まなくてはならない。
礼文華は単純な一山ではないのだ。
国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 19 北側の斜面に出たことで、暫く姿の見えなかった現道が遥か遠くに見えた。
現道の二つのトンネルを出入りする車の音が、狂い風に乗ってここまで聞こえてくる。

2-3 白い試練

国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 20 北斜面に出たことは、ひとつの懸案事項をもたらすことは予想できた。
そんな予想は当たらないでほしいものだが、こんなときだけ私の感がさえてしまう。
現れた関門、それは藪ではなく、もっときついもの───残雪だ。
国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 21 どんな悪路でも走れることが売りのMTBだが、少なくとも通常の装備である限り、走れない路面が二つある。
それは「砂地」と「雪上」だ。
どちらも後輪が地面にめり込み、どんなに漕いでも進まない。

入山したときからずっと続いていた二輪の轍はこの先まで続いている。
踏むな走るな前車の轍といえども、ここは雪のしまった轍の中を進めば少しは楽だ。
まあ、「先輩」の力を借りても、轍の中を乗車して進めるわけではないので、結局は押していかなくてはならない。
ズボズボと沈む足を踏み出すには相当な体力が要求される。

二輪の轍の左には左足の、右には右足の足跡があることは、バイクもまともに進めず、跨りながら足で進んだことを示している。
さすがに北海道三大険路のひとつ、礼文華峠は、いかに下草が刈られていようとただではゴールさせてくれない。
国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 22 峠だ!!

ついに標高約300メートルの礼文華峠が姿を現した。
雪道に来て一気にペースダウンし、挫けそうになる私の気持ちを奮い立たせるように鎮座する峠の姿。
もちろん、それは探索者を生贄にしようという峠の罠であるのかもしれないが。
国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 23 とにかく進まないので周りが良く見える。
自動車の音に誘われて現道のほうを見てみると、巨大なトンネルが口をあけていた。
あれは平成10年に竣工した新礼文華トンネルだ。
今私が立っている峠越えの道を廃道に追いやった、旧礼文華トンネル(昭和41年竣工)がその脇にあるが、既に埋められているようだ。
国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 24 ぜぃぜぃ・・・

雪が残り、寒風吹きすさぶこんな山の中でも、背中にじっとりと湿り気を帯びてくるのがわかる。
轍の中でも場所によっては車輪が埋まってしまい、体力の消耗は並ではない。

このまま体力を使い果たし、補給も絶たれたその瞬間が、「遭難」ということなんだな。
峠は、まだなのか。
国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 25 あそこか・・・!

不意に視界が開け、前方には自分より高い稜線がなくなる。
ついに到達か。

峠の直前で、残雪も消えた。
峠を越えても延々雪道が続くようなら、もう俺は泣く。

2-4 礼文華峠

国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 26 つい
た───────!!!!!


こここそがかつて北海道三大険路のひとつに数えられ、徒歩往来すら見限られて船便に頼ったという、あの礼文華山道の頂点、礼文華峠だ!!
そしてもうひとつ、昭和41年まで国道37号であった、礼文華峠なのだ!!
国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 27 長かった・・・

それは麓からの空間的距離という意味もあるし、去年計画した探索が今になってようやく達成できたという時間的距離という意味もある。
そして何より、北斜面に出てからの雪道がとにかく大変だった。
廃道区間に入ってから峠に達するまで、約5km、所要時間は1時間10分。
そのうち北斜面を進む距離はほんの800メートルなのに、実に20分もかかったのである。
既に汗だくだ。

写真はふり返って撮影。
国道37号 礼文華トンネル旧道 礼文華峠 28 峠は少し広くなっている。
古き江戸時代からの歴史ある礼文華峠、さらに難所として名高い礼文華峠のことだ、かつては茶屋でもあったのかもしれない。
たどり着いた礼文華峠。
そこに旧国道らしさはなくとも、峠に至る苦労がかつての難所ぶりを肌で感じさせた。
次回は峠より西側、静狩方面へ下っていく。
[ 07' 5/1 訪問 ] [ 07' 5/16 作成 ]
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