国道8号 親不知旧道 3

概要

国道8号 親不知旧道の地図
試行錯誤というか、たとえ一車線だろうが、どんなに交通の障害になろうが、 とにかく洞門を設けたかったという必死さが伝わってくる子不知高架橋旧道。
それほどまでに落石が多かったのか。

3-1 改良後の道

国道8号 親不知旧道 33 旧道を元来た方へ戻る。
せっかくなので、かつての自動車の往来のように、ちゃんと左車線を通っていくことにしよう。

見るからに柱との接触事故は多そうだし、実際に柱の補修の跡を見れば一目瞭然。
統計で見てみると、子不知高架橋が完成する前の4ヵ年で、この区間での事故は21件。
その約4割がこの柱との接触、1割が側壁との衝突であり、このどうしようもない狭小さが多くの事故を招いていたことは明白だ。
なお、高架橋完成後の4ヵ年では、事故はわずか5件にまで激減した。
国道8号 親不知旧道 34 現道の子不知高架橋を通過。
まさに車は翔ぶが如く。
延長422.5メートルの快適な橋を一気に駆け抜けた。

3-2 国道8号、国鉄北陸本線?

国道8号 親不知旧道 35 さてさて、休む間もなく次の旧道区間だ。
子不知高架橋から洞門を進むこと400メートル、この間は全く視界が効かないのだが、不意に目の前が開けた。
目の前の赤い橋は昭和42年竣工の洞川橋。
あのめがね洞門と同じ年に作られたものだが、こちらはまだ現役である。
そしてその竣工と同時に葬られた道が、左の崖に沿って延びている・・・ような、いないような。
むむむ、確かに旧道は確認できるが、その路盤がどうも怪しい。
とにかく、接近しよう。
国道8号 親不知旧道 36 例によって旧道へのアクセスは強固な門に塞がれている。
ただ、現道の橋脚の足元で耐震工事をしているらしく、工事中は開放されると思われる。
もっとも、工事で開いているときには通れないというジレンマを抱えるわけだが・・・
幸い、日曜のこの日は静かなものだ。

またしても自転車を置いていく羽目になってしまうが、探索のほうが優先。
よっこらせっと・・・
国道8号 親不知旧道 37 柵を越えた先にさらに柵。
その向こうに控える古びた橋。
これは昭和8年から10年の改修工事で架けられた、(旧)洞川橋である。

親不知の車道は明治16年にできたものだが、その後大正元年10月に官営鉄道富山西線(現在の北陸本線)の親不知区間が開通すると、 道路を往来するものが減り、廃道並に荒れ果てたという。
鉄道の開通により国道が廃道になるなど、道(高速道路)の整備により鉄道が廃止になるような昨今では信じられないことだが、 とにかくこれを改修するためにも昭和の工事が行われ、そのときに架けられた橋がこの洞川橋だ。
すなわち、この橋は二代目にあたるわけだが・・・
国道8号 親不知旧道 38 明治時代に架けられた初代洞川橋はもう少し上流にあった(写真は初代洞川橋があったほうを撮影)。
うかつにも探索は失念してしまったのだが、流石に痕跡が残っているとは思えない。初代洞川橋は木橋であったと記録されている。
写真の道はそういった意味では旧旧国道といえるかもしれないが、この先は橋(初代洞川橋)を渡ることなく、谷底、そして海に向かって降りていく。
これは上で述べた現洞川橋の工事用道路である。


奥にある巨大な土管のようなものは、北陸本線の上り線だ。
先ほどの子不知高架橋旧道区間の脇を走る線路は、めがね洞門の下あたりで「深谷トンネル」というトンネルにもぐり、この場所で一瞬顔を出す。
顔を出すといっても今ではこのように外が見えるわけではないが、一瞬地上に出た後、すぐに写真右側の「子不知トンネル」というトンネルにもぐる。
この子不知トンネルこそが、かつて国道の代替道路として開放されたトンネルである。

昭和40年11月の子不知災害においては、仮の復旧にすらも2ヶ月はかかることが分かり、その間特に年末年始の輸送において、 一桁国道の通行止めは周辺の社会不安すらも誘発しかねなかった。
文字通り一日も早く交通を確保するための手段としていくつかの案が出され、 中には「専用列車で自動車ごと運搬」「フェリーボートで輸送」などスケールのでかい話もあったという。
その中で決定されたのが、「子不知トンネルを借用して代替道路とする」という案である。
背景には、子不知トンネルを電化に対応させるため、路盤掘り下げ工事を行っており、 列車は災害が起こるわずか2ヶ月前に開通したばかりの新子不知トンネル(現在の下り線)のほうに回されていたことが挙げられる。
国鉄の協力を得て、12月16日から翌年1月15日までの間、 「国道の代替道路として現役の鉄道線路を使う」という信じられないことになったのである。

とはいえ、トンネルは大正元年竣工の単線用古隧道、おまけに延長は1.5kmもあるもので、臨時の代替道路といえども交通の確保は困難であった。
各所に落石防護工を設置しなくてはならなかったし、車の高さ・幅、さらには車種や車体長も制限され、安全のために積荷の品種制限まで行われた。
単線隧道なので当然離合など不可能なこともあり、片側交互通行の時間制限、また夜は崩落の確認が困難ということで夜間通行止めであった。

四苦八苦しながらも、およそ1ヶ月にわたってそのトンネルは自動車を通したのである。
その間、自動車はこの場所から写真右側のトンネルに入っていったのだ。

それから40年以上たった今、この地にその痕跡を留めるものはない。
当時の姿を想像で補おうにも、大正元年竣工の古隧道が、現役の鉄道線路が、 曲がりなりにも国道8号として自動車を通したなど、もう私の理解を超えている。

3-3 二代目洞川橋

国道8号 親不知旧道 39 二代目洞川橋への車止めを越え、現道である三代目洞川橋を望む。
なんとなく、細身の三代目は貧相に見えた。
国道8号 親不知旧道 40 少々探索順序が入れ替わってしまうが、これは三代目の橋の上から二代目を見たもの。
ズッシリとした重厚感のある橋脚がすばらしい。
現在の技術であれば、こんなぶっとい橋脚を立てずとも強度が保てるのだろうが、なんだかこういう重々しさがむしろ頼もしいではないか。
新幹線の高架の橋脚、それも最近のものであればあるほど、「あんな細くて本当に大丈夫なのか?」と思うことがよくある。
先日、工事中の九州新幹線の橋脚を目にしてきたが、おいおいと突っ込みたくなるほど細かったのが印象的であった。

二代目洞川橋は写真右側の橋詰あたりで、わずかに右(この写真でいうなら手前側)にカーブしている。
自動車交通を考えた線形なのだろうが、この施工はちょっとワケあり。
というのも、「計算が煩雑になるから」という理由で、主桁は一直線なのにも関わらず、床板だけ強引に曲げてカーブさせたという。
国道8号 親不知旧道 41 で、上の写真でもう見えたと思うが、二代目洞川橋の西側橋詰は藪の中。
橋の上まで侵食した植物により、どこまでが橋なのかも分からない。
親柱なんぞ跡形もない。
流石に橋の入口に車止めを置いているだけあって、もうここから先は真の廃道なのだ。

だが、この程度の藪で挫けるわけにも行かない。
なにより、藪の中に今まさに沈まんとしている、赤錆びたスノーシェードが私を呼んでいる。
ああ、今行くさ、そこで待っているがいい。

♪Dive into your YABBY〜
国道8号 親不知旧道 42
We say 嫌!!!
国道8号 親不知旧道 43 嫌!!

蜘蛛の巣だらけ!
しかもでけえ、蜘蛛!!キモッ!!!

写真を撮るのも憚られたほどキモデカイ蜘蛛とその巣に体中を包まれ、言い様のない不快感が全身を走り回った。鳥肌もんだ。
ワタクシ、廃道とか廃墟とかまあよく行くんですが、いっちゃんこ苦手なのが蜘蛛の巣なのです。
不意に顔面を包まれたときなど、半狂乱になります。

こんな狭いところ、道を踏み外せば崖下にまっさかさまである。
手ごろな植物を引きちぎり、目の前でブンブン振り回しながら進んだ。
これだけ蜘蛛の巣が張っているというのに、それをくぐり抜けたカやらブヨやらは、久しぶりのご馳走たる私の体にまとわりつく。
ああ、なんてジューシィな廃道・・・
国道8号 親不知旧道 44 振り返って撮影。
廃道区間の距離はほとんどないのだが、所によってはその藪は濃密。
潅木がないのがせめてもの救いか。

濃密区間では獣道程度の痕跡もなかったが、平成10年に撮影された写真では、このあたりは現道の工事かなんかのために、資材置き場のように使われている。
わずか8年でこうなってしまうとは・・・
国道8号 親不知旧道 45 ぶくぶくぶく・・・

目の前に迫ったスノーシェードに、なかなか近づけない。
濃密な藪の中では、窒息しそうな感覚にすら陥る。
山と崖、そして目の前のスノーシェードという道しるべがあるからまだよいが、これらがなければ、 いくら路盤が残っていようとも道をロストしてしまうかもしれない。
国道8号 親不知旧道 46 攻略の難度という点では、距離もなく潅木もない分、その気になれば自転車を連れてでも容易に突破できたであろう。
ただ、個人的に蜘蛛の巣だらけで嫌な道であったということだ。
たかだか8年で、場合によってはそれよりもさらに短い期間でこれだけ廃道化してしまったのは、やはり上からの肥沃な土砂の流入に因るだろう。
人工的に廃道化するために、植物の種子を含んだ土砂で道を埋めるというケースはよくあるが、それが自然に行われたようなもんだ。
藪の海を何とか泳ぎきり、何とか目的のスノーシェードに到達。
内部の様子は次回に。
[ 06' 9/3 訪問 ] [ 06' 9/29 作成 ]
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