太郎丸隧道 闇の住民達の住処 1

概要

太郎丸隧道 闇の住民達の住処の地図 怪しい坑木に支えられた、怪しい坑口。
太郎丸隧道の、いざ内部へ。

1-1 闇の正体

太郎丸隧道 闇の住民達の住処 12 不安というほどではないが、狭い断面は圧迫感を与えてくる。
断面の直径は2メートルほどだろうか。
隧道の端のほうを歩こうとすると、頭をぶつけそうな感覚に陥る。
もっとも、この坑木もどきの柱が邪魔をしており、端を歩かざるを得ない。
たとえ柱がなくとも、自動車では入れないかもしれない。

傍らに自転車を従えて、トラップの如き柱をかわしながら進むのは緊張する。
なんか、ぶつかったら柱が倒れてきそうで。
太郎丸隧道 闇の住民達の住処 13 振り返って撮影。
足元は水分を含んだ泥で、歩きにくい。
いくつかの足跡は見られたが、流石に自転車の跡はなかった。
隧道前の廃道、そして車も往来できない隧道の様子から、太郎丸隧道はとうの果てに放棄されたものといえる。
それにもかかわらず、これらの足跡がつけられているのは・・・好きもの達の、夢の跡。
太郎丸隧道 闇の住民達の住処 14 金属の管で覆われた区間は10メートルほどで終わり、その先は素掘りとコンクリートの支保工が現れはじめた。
また、足元の泥からは水分がなくなったが、代わりに空気が強烈に湿っている。
出口の明かりは霞んで見え、フラッシュは亡霊のような霧を映し出した。
太郎丸隧道 闇の住民達の住処 15
実際にはこんな闇だが。
太郎丸隧道 闇の住民達の住処 16 素掘り区間とコンクリート区間は交互に現れる。
先ほどのようにコンクリートで補強されているところもあれば、このように完全に素掘りのままのところもある。

足元は舗装された形跡もなく、これまた掘ったままといった感じだ。
自動車の轍なども全くない。
太郎丸隧道 闇の住民達の住処 17 コンクリートはそれほど古くないようだが・・・
風化しにくい隧道内では劣化のスピードも遅いのだろうか?
見たところ昭和中期〜後期くらいのもののように見える。

そのため、現地ではこの隧道の竣工は昭和時代かと思っていたのだが、後の調査でとんでもないことが分かった。
この隧道についてのはっきりした史料が見当たらなかったため、古い地形図を頼りにその竣工年代を調べてみたのだが、 なんと太郎丸隧道は入手できた最古の地形図、大正三年の地形図にすでに存在していた。
つまりこれは・・・明治以前に掘られたものなのだ!
コンクリートはもちろん後設のものだろうが・・・尋常ではない隧道だ。

1-2 歓迎

太郎丸隧道 闇の住民達の住処 18 猛烈な霧で視界は霞んでいるが、意外なことに漏水は全くない。
水の流れる音もなく、隧道内は完全なる無音の世界。ただそこに私の足音だけが「ザクッ・・・、ザクッ・・・」と響いていた。
しかしながら、半分くらい来たこのあたりで、妙な音と、前方の霞む緑の光の中を、小さな物体が無数に飛び回っているのに気がついた・・・
太郎丸隧道 闇の住民達の住処 19
「パタパタパタ・・・」
「パタパタパタ・・・」
太郎丸隧道 闇の住民達の住処 20 迎えてくれたのは数十匹の蝙蝠たち。
何ヶ月か、何年ぶりかの招かれざる侵入者に驚愕した彼らは、私の周りを威嚇するかのごとく飛び回っている。
無音の世界に響いた彼らの羽音は、意外なほどに大きかった。

中には体当たりを仕掛けてきそうな奴もいたが、身を低くしてこれをやり過ごす。
出口まであと少し・・・

1-3 出口

太郎丸隧道 闇の住民達の住処 21 出口付近は再び金属管で覆われていた。
また、入口にあったような坑木がここでも活躍している。

厄介なことに、こちら側には水がたまっており、濡れずに進むことはできない。
見たところたいした深さではなさそうだが・・・何が潜んでいるか分からない地底湖にジャブジャブ突き進んでいくには覚悟がいる。
長靴を持ってくるべきだったと後悔しても時遅し。

引き返す?
そんな選択肢はない。
太郎丸隧道 闇の住民達の住処 22 深かった・・・

対して深くもないだろうと突入したはいいが、底にたまった泥が目測を誤らせた。
あれよあれよと沈んでいくうちに、脛まで水に浸ってしまった。
長靴は・・・あっても無駄。
太郎丸隧道 闇の住民達の住処 23 出口では周辺の土砂が流入してきており、そのために隧道内に水がたまってしまったようだ。
今にも土砂がふさがんとするその坑口に入るためには、かなり身を低くしていかねばならない。

また、その土砂を足場として猛烈に植物が繁茂しており、こちら側から坑口を発見するのは非常に困難である。
太郎丸隧道 闇の住民達の住処 24 おまけに、隧道を抜けた先は完全に草の壁。
地図ではまだ車道規格でこの先へ続いているのだが、もはや路盤がどこにあるのかすら見当もつかない。
道がこの先直進しているのか、あるいは左右どちらかに曲がっているのかも、背丈を越える植物に覆われたこの場所では判断できなかった。
下手にこの場所を離れると、隧道に戻ってくることすらかなうまい。
残念だが、この先は藪が落ち着かない限り進めない。
撤収。
太郎丸隧道 闇の住民達の住処 25 帰りの道も、また闇の住民達を狂乱させてしまった。
暗闇と静寂が支配するべき地底の世界が、狂想曲の如き興奮状態に包まれるのは異様であった。
緑の出口が、遠い。
竣工は明治以前という驚異の素掘り隧道、太郎丸隧道。
謎に包まれたその経緯は今もって不明である。
それどころか、更なる謎がこの地に存在することが明らかになった。
謎が謎を呼ぶ地、太郎丸。
私の旅は、きっとまだ続くだろう。
[ 06' 7/8 訪問 ] [ 06' 9/8 作成 ]
前の記事へこれより先の記事はありません
ひろみず http://d-road.sytes.net/ webmaster@d-road.sytes.net
太郎丸隧道 闇の住民達の住処01