大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 0

概要

大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネルの地図 大谷ダムは信濃川水系五十嵐川の笠堀地先にある多目的ダムである。
五十嵐川とそれに近接する刈谷田川はともに県下でも有数の暴れ川として知られ、最近では平成16年に起こった未曾有の集中豪雨、 「7.13新潟・福島集中豪雨」においては堤防が決壊し、甚大な被害をもたらしている。
大谷ダムが建設される以前にも、昭和36年、41年、44年と、数年おきに氾濫を繰り返しており、その治水は急務とされた。
手始めに、現在の大谷ダムから北東に2km足らずのところにある五十嵐川支流に「笠堀ダム」というダムが昭和39年に完成するも、 続発する集中豪雨を防ぎきれず、新たなダムとして五十嵐川の本流に大規模なダムを建設することとなった。
昭和42年より予備調査がはじめられ、26年の年月を経て平成5年11月4日、竣工式を迎え、堤体高75.5m、 総貯水量2110万立方メートルのロックフィルダムが完成したのである。
現在では水道用水や洪水調節に活躍しており、前述の7.13水害においても、限界水量ギリギリにまで達しながらも下流域の被害低減に尽力したという。
なお、笠堀、大谷両ダムにおいては24時間の最大雨量が500mm近くという、このとき観測された各地の降水量の中でも群を抜いていた。

また、特筆すべき点は計画当時は「五十嵐川ダム」といわれていたものが、湛水を機に現在の名称である大谷ダムに改名したことである。
「大谷」の名はこのダムによって水没することになった大谷集落の名をとってつけられたものだ。
大谷集落のほかに、ダム上流付近には大江という集落があったが、こちらも水没した。
大江の名はダム湖にかかる橋梁やトンネルなどに残されている。


集落の水没に伴い、そこを走っていた国道289号の付け替えも行われた。
水没した旧国道はまさに取り付く島もないわけだが、私がダム湖岸に見つけたトンネルは旧国道というにはあまりに新しすぎ、 道というにはあまりに廃れていた。
一般の道路地図からはほとんど消滅に近い有様。
そのトンネルの正体を探るべく、虎穴に入る。

0-1 三条市街地より、大谷ダムへ

大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 1 寒い。

時はすでに11月。
山沿いの地方ではすでに降雪があったとも聞く。
始まるのが遅かったこの年の秋はあっという間に過ぎてしまったようだ。
いつもならば10月の終わり頃には紅葉のピークを迎えるというのに、今年は11月に入ってもその便りもなく、 そうかと思えばいつの間にやら雪の便りを聞いた。
わずか一ヶ月前には佐渡の地で野宿し、半袖で走っていたことが信じられぬ。

まあ、寒さはどうにでもなるとはいえ、雪が降ってしまえば自転車の旅は終わりだ。
ひょっとしたら今年最後になるかもしれない旅路を楽しむことにしよう。
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 2 JR信越本線東三条駅から南東に進んでいく国道289号を行く。
その道はかつての国鉄弥彦線の廃線を利用したものだ。
現在のところ、弥彦線は東三条駅から弥彦駅までの17.4kmを結んでいるが、かつては東三条よりさらに東南に7.9kmほど伸びていた。
しかしながら、東三条より先は利用者減少のために昭和60年に廃止され、その路盤はほとんどが国道に転用された。
現在では残る痕跡は皆無といってよく、かろうじて認められるものはこのような距離ポストだけであり、それも1個しか確認できなかった。

なお、国道289号はダムの先、福島県境の手前で通行止めとなる。
その先も国道指定はされているのだが、車道は通じていない。
すなわち、点線国道である。
現在、開通を目指して別ルートでの工事が進められているが、竣工は平成30年代になるだろうといわれている。

現代技術でも克服しきれない県境へのルートであるが、かつての弥彦線をこのまま延伸し、福島県入りさせようという構想もあったという。
さすがにこれは「夢」でしかなかったのだが。
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 3 東三条駅から2時間ほど田舎道を走ってくると、ダムの看板が。
直進が目指す大谷ダム、左折すると笠堀ダムだ。
イントロにあるように、両ダムは非常に近接したところにあるが、かつてはこの二つのダムを造る代わりに、 もっと規模の大きなダムをここよりも下流に造る計画があった。
そのほうが効率的であったのだろうが、それにより相当数の集落が水没してしまう上、ダムより上流の集落は孤立してしまうことから猛反発が起こり、 現在のところに落ち着いたという。
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 4 やがてダム提体が見えてきた。
提体の高さは80メートル近くもあるのだが、自分のいる位置が高いことや提体の手前に土砂がつまれていることもあり、それほど高さを感じられない。

私は五十嵐川を渡る大谷大橋の上におり、この橋はダムの工事に伴って建設されたものだ。
工事以前の旧橋(旧国道289号)が写真左下のほうに写っている。
この写真を撮った後、眼下の廃橋を探索しているが、そちらのレポートはまた機会を改めて。
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 5 天板まで一気に上る。

大谷ダムはロックフィルダムとしては新潟で最初に造られたものだ。
大谷ダムの兄たる笠堀ダムは地盤が安定していたために重力式ダムで造られたが、ここは地盤が不安定であったため、 大重量となる重力式ダムは適さなかった。
大谷ダムで採用されたロックフィルダムは中心に水を通さない層を設置し、その周囲を石で覆うというもので、 提体の体積が重力式に比べて数倍になってしまうものの、重量を抑えることができる。

0-2 予想GUYとの出会い

大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 6 実はこの日の探索はダム周辺の遺構を探そうというのではなく、ここよりはるか先にある小さな隧道を目指していた。
そのため、ダム天板周辺にある案内図などはすっぱり見落としてしまった。
後日改めて調査を行ったが、とりあえず時系列に沿って紹介していこう。

提体を過ぎてさらに走ると、通行止めの標識が現れた。
上述の通り、この先は工事中で通行止めである。
また、この標識の地図にはダムを一周するような道路は描かれておらず、手持ちの地図にもそんな道はない。
そのため、私はダム湖を一周する道路は存在しないものと考えていた・・・が・・・
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 7 ダム湖の対岸をよくよく見てみると、何かあるのだ。
その路盤は薄く、藪に覆われているようでもあり、「廃」の匂いを感じさせた。


このダムには水没した集落と国道があったというから・・・
・・・もしや旧国道か・・・? しかし、水没というにはずいぶん高い位置にあるし・・・


時折見失うほどの薄い対岸の路盤を、凝視しながら走っていた。
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 8
んなっ!!
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 9 なんじゃああありゃああ!!!

隧道?!いやアレは新しいぞ。断面積もかなりありそうだし、遠目ではあるがポータルに綻びというものが見られない。
新しいのにも関わらず、その前後の様子はどうだ!
明らかに、藪と土砂に埋まりかけているではないか!

あの新しさと、ダム湖水面からの高さからして、旧国道ではないことは確信した。
となれば、アレは何なのだ?地図にないぞ?

頭の中でクエスチョンマークが泳ぎまわる中、なおいっそう対岸に注目していると・・・
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 10 メチャ曲がっている!!

ほぼ真横の位置から眺めて、両側の坑口が見えるっておかしくない?!
中どーなってんのっ?!
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 11 その「今」を見たいという気持ちははやっても、対岸までの距離は長かった。
すぐにそこへいけるような橋はなく、戻ってダム天板上を行って対岸に渡るか、ダム湖の上流で対岸に渡るかしかない。
地図上では対岸に渡れそうな橋は上流にも架かっていないが、個人的に「戻る」という選択肢が嫌いな上、 トンネルがある以上、この先に通じる道があるはず。
そう信じて、先へ進むことにした。
また、旅の当初の目的である、ダムのはるか上流にある小さな隧道を探索することも視野に入れての決定だ。

なお、この写真の下部に広がる平地は、かつての大江集落の跡地である。
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 12 遅かった今年の紅葉も今がピークらしく、沿道には紅葉狩りを楽しむ夫婦や家族連れが多く見られた。
五十嵐川は上流ではこのような渓谷を形成し、深い谷を彩る色とりどりの木々が岩に映えて見事な景観である。
大谷ダムへ向かう道中、行き止まりの国道になぜこんなに車が多いのかと疑問であったが、それもこの光景を前にして納得した。

0-3 究極の障壁とは

大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 13 対岸の謎のトンネルへの興味もあったが、まずは工事中である上流を目指してみたのだが・・・。
現れたのは強烈なガード。
隧道の密閉封鎖に次ぐ、最大の障壁・・・ガードマンの存在だ。
もちろん下流で通行止めの標識があったわけだから、まっとうには通れないことはわかっていた。
しかし、この先の点線国道を登山で踏破したという記録もネット上で見られる以上、自転車でなら入れるのではと思っていたのだ。
それを打ち砕く見事な封鎖である。どんな柵や車止めよりも、たった一人の人間のほうが、封鎖としては強固なのだ。
これでは先へ進めない。

しかたない、当初の目的である尾根近くの隧道探索はあきらめ、先ほど見た謎のトンネルの探索に掛けるとしよう。
ちなみに、番をしていた人に話を伺ったところ、一般の登山者は許可を得たバスで中腹まで登っていくのだそうだ。
もちろんバスに自転車など乗せられないわけだが・・・

0-4 秋の林道

大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 14 問題の対岸のトンネルに行く道は、少なくとも普通の道路地図にはない。
おそらくそこへ通じていそうな道が、先ほどの封鎖地点よりやや戻ったこの場所だ。
チェーンで封鎖され、一応立ち入り禁止の看板も立っていた。
しかしここは人もおらず、封鎖箇所からも死角になるので、バイク以下なら入っていける。
まあ、周囲の観光客の視線に耐える必要はあるのだが。

熊よけの鈴を装備し、自転車ごと侵入。
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 15 どうやらダム管理用の道であり、よく手入れされている。
帰宅後の調査でわかったことだが、この先にある鎌倉沢という沢に、笠堀ダムと関連した貯砂ダムがあるらしい。
もともと大谷ダムの竣工以前には、ここに大谷取水導水管という施設があったが、これが大谷ダムの満水時には水没してしまうため、 その補償として、また、大谷ダムの堆砂機能を補強するため、砂防ダムを建設したのである。
この道はその砂防ダムの管理道路ということだ。
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 16 さらに進むと、その鎌倉沢を渡る黄色い橋が見えてきた。
あれを渡れば、どうやら問題のダム湖対岸に行くことができそうだ。
大谷ダム湖畔の廃トンネル やまびこトンネル 17 ちょっと様子がおかしいんですがね・・・特に橋の向こう側とか。
携帯の電波も届かない山の中。
沿道の各所に立てられた「熊出没注意」の看板。
予想していたこととはいえ、いいようのない緊張感が体を包む。
[ 06' 11/4、06' 11/19 訪問 ] [ 06' 12/8 作成 ]
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