持倉鉱山 遺跡への昇華 3

概要

おそらくそこは階段などの本来のアプローチではなく、崩れた土砂がたまたま登りやすくなっていただけに過ぎない。
密集した木々は手がかりになるが、同時に障害物にもなる。

3-1 遺跡に貫く穴

持倉鉱山 遺跡への昇華 49 登り切った先(第三層とする)はやはり単なる擁壁などではなく、確かに何かがあったらしい。
もっとも、それが何であったかはもはや知るすべはない。
持倉鉱山 遺跡への昇華 50 上の写真で見えた妙な穴ぼこを覗き込んでみる。
内部で圧壊しているが、さほど深くはないようだ。
最初は坑道かとも思ったが、精錬所の煙道と思われる。
持倉鉱山 遺跡への昇華 51 煙道のアーチはところどころで崩壊しており、地面と一体化したそれは見分けのつかない落とし穴。
煙道がそこらじゅうに張り巡らされていることを考えると、自分が今立っている足元の下は空洞なのかもしれない。
そう考えると、この場所も安心して立ってはいられない。
持倉鉱山 遺跡への昇華 52 第三層にも、やはり斜面に沿ってレンガの壁が続いている。
周辺はあまりにも自然に帰りすぎ、見えている壁が外壁なのか、内壁なのか、擁壁なのか、どれとも判断しかねる。
ただ、このレンガの構造物の中に入っていくような入り口は、一部の例外を除いて、存在しない。
持倉鉱山 遺跡への昇華 53 その例外というのが、こういうものだ。
斜面を覆うレンガの壁にたった一つ、その壁をぶち抜くようにそれがあった。

遠めに見てもあまりにも黒々としたその内部、アレなのか・・・
持倉鉱山 遺跡への昇華 54
ひいっ
持倉鉱山 遺跡への昇華 55 入り口は崩落した土砂か、はたまたもともとこういった設計なのか知らないが、下半分ほどが埋まっており、内部はしゃがまないと見えてこない。
そうやって覗き込んだ先は、果てしなく続く地中の闇。
坑口から数メートルほどはレンガのアーチで覆われているが、その先は素掘りになっている。
入り口が半分ふさがっているせいで内部は水没しており、奥からは水の滴る音が聞こえる。


さてこの穴の正体はなんだろう。
地図で見る限り、この先尾根を越えるようなことはないため、隧道というわけではなかろう。
これこそ坑道という可能性もなくもないが、坑道にしては狭いし(奥のほうでは人同士もすれ違えない)、坑道はもっと上流にあったという話も聞く。

思うに、精錬所に直結した穴ぼこということから、取水口なのではないか?
入り口が半分ふさがっている姿(2枚上の写真)は、自然の崩落とはちょっと思えない姿だ。
最初からこういう形で水を貯めていたのではなかろうか。


水深は浅く、内部は十分立って進める高さはある。
しかし、隧道とも思えない正体不明の穴、それもどこまで人が通れるのかも怪しい穴にはちょっと入っていくことはできない。

3-2 ラビュリントス

持倉鉱山 遺跡への昇華 56 そのまま斜面に沿って上流方向へと進む。

第三層はまるで迷宮 ─ ラビュリントス ─ のように入り組んでおり、足元から伸びる木々とあいまって、複雑な構造になっている。
しかし、二階建て以上の構造物はなかったようであり、どの壁も平屋の高さしかない。
持倉鉱山 遺跡への昇華 57 脇には第二層の建物が見える。
天井が残っている部分はどこにもなく、外壁だけが残った姿はあまりにも現実離れしている。
緑濃い時期ならなおいっそう遺構が映えるとだろうが、同時に肝心の遺構が隠されてしまうことをも意味する。
難しいところだ。
持倉鉱山 遺跡への昇華 58 一応「第三層」という呼称を用いてはいるが、これは必ずしも「三階」と同義ではない。
どうやら精錬所は斜面を削った階段状の地形のそれぞれに小規模な建物を並べたものらしい。
したがって、足元は普通の地面であり、第二層の屋上部分にいるというわけではない。

3-3 大煙突

持倉鉱山 遺跡への昇華 59 藪に包まれ、遺跡と化した持倉鉱山跡。
その中でひときわ存在感を放つものの、容易にはたどり着けなかった大煙突が、目の前に迫ってきた。
周辺の建物は崩れまくっているが、象徴たる大煙突には、今のところ大きな損傷はないように見える。
持倉鉱山 遺跡への昇華 60 うまい具合に、大煙突の入り口はこの第三層にあった。
入り口は二つあるが、大煙突につながっているのは向かって左側。

その前に、右側の小さい穴をのぞいてみる。
持倉鉱山 遺跡への昇華 61 こちらも煙突のようだが、大煙突とは直接は通じていない。
奥のほうで漏れている光、あれは崩落によるものか、それとも煙突の穴があそこにあったのかははっきりしない。


それはともかく、やはり気になるのは大煙突のほうだ。
恐る恐る、内部を覗いてみる。
持倉鉱山 遺跡への昇華 62 別次元の遺物が、そこにあった。
持倉鉱山 遺跡への昇華 63 闇は浅い。
水平に数メートルほど入った先は、垂直に続いている。
入り口付近は少々崩れているが、内部はほとんどダメージはなさそうだ。

隧道とも、廃墟とも異なる独特の雰囲気。
いつもの廃美に見惚れ、癒されるような感情は沸いてこない。
それよりもなにかこう・・・「感動」に近いものがある。

そんな持倉鉱山の心臓部、精錬所の大煙突へ、足を踏み入れた。
持倉鉱山 遺跡への昇華 64
「ここは、きっと天界へと通じている」
持倉鉱山 遺跡への昇華 65 大煙突は山の斜面に沿って階段状になっていた。
上から入り込んだ土砂が多少積もっているが、煙突自体に痛みは少ない。


かつてはここを灼熱の煙が駆け上ったのである。
確かにここにあったはずのその"現実"も、見慣れないレンガとあまりにも"現実"離れした光景を前にしては、もはや想像することもできない。
周囲には灼熱の煙の代わりに冬の冷気が漂い、ただ歴史の中で見捨てられた大煙突の中で、時の流れの無常さを感じていた。
精錬所は広く、ほとんど崩壊して藪に飲み込まれているとはいえ、面積だけでいえば対岸の事務所跡の数倍はある。
次回は精錬所の残りの区間、さらには川の上流へと進んでいく。
[ 07' 2/25、07' 3/3 訪問 ] [ 07' 4/18 作成 ]
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