持倉鉱山 遺跡への昇華 4

概要

深い山中に、その存在を誇示するかのごとき大煙突。
幾星霜に渡り、この地を見つめてきたそれは確かな人工物でありながら、山と一体化しつつもある。

4-1 廃墟の見えざる悪魔

持倉鉱山 遺跡への昇華 66 大煙突正面は第二層へと下る階段になっている。
往時の構造はもはや想像するより他はないのだが、ここもかつては煙道だったのだろうか?
足元は確かに人が歩きやすいような階段であり、また煙道らしい構造物は見当たらない。
さらに、第三層と第二層を結ぶ通路はここだけだ。

煙の道というより、人のための道のような気がする。
持倉鉱山 遺跡への昇華 67 第二層に降り、大煙突を望む。
人気の無い山奥に屹立する、異世界の遺構。
ここが日本であることが、信じられない。
持倉鉱山 遺跡への昇華 68 このまま第二層を歩こう。
大煙突より川上の方向は突き出た岩盤にさえぎられ、進めない。
そのため、第二層は元来たほうへと戻ることになる。
持倉鉱山 遺跡への昇華 69 もう一度大煙突を見上げる。
ある人は持倉鉱山をラピュタと表現したが、まさにその通りだ。
崩れたレンガとそれに絡まる植物が織り成す光景は、まるで自分が空想の世界に迷い込んだような感覚を抱かせた。
持倉鉱山 遺跡への昇華 70 第二層も第三層と同じく、山の斜面に沿ってレンガの擁壁が続く。
しかし、第三層とは違ってそのレンガには多くの穴が開いている。
いくつあるかはちょっと記憶していないが、3〜4つはあった。
圧壊し、埋没したものもあるだろうから、本来の数はもっと大きいはずだ。
穴はさまざまな大きさがあり、おそらく用途もみなそれぞれだったことだろう。
持倉鉱山 遺跡への昇華 71 そのうちのひとつの内部。
取水口は山腹を貫くように前へ前へと進んでいたが、第二層の一連の穴はすべて横方向に延びている。
大煙突の方向に向かっているようだが、奥がどうなっているのか、あるいはどこかで一本に集約しているのかもしれない。 ただ、大煙突以外にも小規模な煙突があちこちにあるようなので、そのどこかに続いていると思われる。

それにしても、外の建物がことごとく崩壊する中、一番不安定そうなこういう地中の穴ぼこがまだ残っていることは驚きだ。
持倉鉱山 遺跡への昇華 72 別の穴の天井は、こんな"青天井"。
かつて銅も採掘していたときの名残であろう。


少し前、他県の某有名廃墟(兼心霊スポット)に実はアスベストが大量に飛散しており、問題になった。
持倉鉱山にアスベストは無いだろうが、鉱山関係の重金属汚染はおそらく無視できまい。
近くを流れる川の下流には集落があり、生活していく分には問題なかろうが、こういった外界と隔絶されたようなところでは、何がどうなっているのかわからないのである。
持倉鉱山 遺跡への昇華 73 しかしながら、ここはそんな現実的な脅威も忘れさせるファンタジーな空間に他ならない。
神秘的な古代遺跡から発せられるオーラの中にあっては、鉱毒の脅威など「RPGのモンスターがなぜ金を持っているのか?」程度の問題にしかならないのだ。
持倉鉱山 遺跡への昇華 74 第二層もそれなりに広いが、ほとんど原形をとどめていない。
しかしながら、小規模な構造物が連続した第三層と比べ、ある程度の規模を持った建物がいくつかあったように感じる。
ただ、それもあくまで想像でしかない。
廃墟の内部探索では大概地図を掲載しているが、複雑かつ崩壊しまくったここの地図を描くことは難しい。
持倉鉱山 遺跡への昇華 75 対岸の事務所跡。
言葉も無い。
精錬所も大体見て回った。
手が届きそうで届かなかった大煙突も探索し、苦労しただけに感慨も深い。

しかしながら、地形図を見るとここから1キロほど川をさかのぼったところに、なにやら建物が建っているように描かれている。
それがいったい何なのか、この持倉鉱山と関連したものなのかどうかについてまったくわからないが、せっかく渡渉に対して完璧な準備をしてきた今日、 どうせならその正体を明かしてこようではないか。

4-2 自転車担いだ山男

持倉鉱山 遺跡への昇華 76 精錬所跡を過ぎ、上流へと進む。
一応、足元に道らしき痕跡があり、かなり上流まで続く砂防ダムの工事用道路と思われる。
持倉鉱山 遺跡への昇華 77 その一方で、このように足元に完璧に道がなくなる場所も数知れない。
先のほうに砂防ダムがある以上、一度はここに車道が通じていたはずなのだが・・・?


最初にお話したとおり、今回は意地でも最終到達地点まで自転車で行きたい。
そんな思いで無理やり持ち込んできているわけだが、乗車できる場所はどこにも無い。
ひたすら担ぎ、放り投げ、引きずり回すことの繰り返しだ。
「決意」というエネルギーが無ければ、自転車を持ち込むことはできないし、意味も無いだろう。
持倉鉱山 遺跡への昇華 78 道は時々消失もしたが、何とか飛び石を渡ってここまでは渡渉無く来れた。実は前回の訪問時もここまでは来ている。
しかしながら、ここで道は完全に消えてしまう。
廃墟手前の崩落地点は斜面にへばりついて進めたが、ここは左手の斜面も垂直に近い。

そんなわけで前回はここで引き返したのだったが、今回の私は"武器"を持っている。
ネオプレーンの靴下に、この程度の川は通じないのだよ。
持倉鉱山 遺跡への昇華 79 またも自転車は水没しかけ、私はともかく相棒には受難の道。
普段、危険地帯の手前で傍観するだけのお前だ。たまには苦労してみなさい。
持倉鉱山 遺跡への昇華 80 抜けるような青空のもと、まるで役に立たない相棒を引きずりながら、上流を目指す偽山男─バカ─が一人。
はて、この先に見える山はなんといったかな。
私にはそれすらわからない。だって偽者だもの。


ひたすら登り続ける私にわかることは、さらさらと流れる川、未だ雪残る山、そして時折聞こえてくる小鳥達のさえずりの、調整の取れた美しさだけだ。
こういったものの美しさは、相棒がいるから───苦労するからこそ、より噛み締められる。
楽しい。

4-3 雪原に眠る車輪

持倉鉱山 遺跡への昇華 81 精錬所から歩くこと1時間、ようやく地図上で示された建物の場所に着いた。結局この間自転車に乗車できた箇所はひとつとしてなく、ほとんどが藪漕ぎ&右岸へ、左岸への渡渉。
GPSや周囲の地形から、ここがその場所であることは間違いないのだが・・・何もない。
もう、謎を解決するには時が遅すぎたのか・・・?

小さくない失望感を抱きつつも、周囲を見回していると・・・
持倉鉱山 遺跡への昇華 82 うオっつ!!!
ドラム缶じゃないか!!

見つけた瞬間、間瀬銅山のことが思い出された。
あそこも、山登りの果てに見つけたのがドラム缶だったからだ。
「銅山には必ずドラム缶がある!」
わけはないが、これもかつての遺構だろう。

だが、ここはそれだけですまなかった。
太陽光が雪原にぎらぎらと反射し、眩む目を必死に酷使して探索を続けた。
持倉鉱山 遺跡への昇華 83 こっ、これは・・・・っ!!!!

トロッコの車輪!!!
似たようなものに索道の滑車があるが、フランジが片方にしかないことから、車輪と判断。
やはりかつてここにあったであろう建物は、鉱山に関連したものだったに違いない。
車輪があるわけだから、レールがあったことは疑うべくもないが、それらしいものは見当たらない。
もっとも、足元の雪の中に埋まっている可能性もなくはないが・・・
持倉鉱山 遺跡への昇華 84 さらに探索していると、トタン屋根らしきものが雪の中から顔を出していた。
これもかつての建物の成れの果てだろうか?

残雪がなくなれば他にも何か出てきそうだが、そうすると今度は藪に包まれてしまうところだ。
万が一ベストな時期に来れたとしても、判断材料はあまりにも乏しい。
唯一残されたドラム缶と車輪。
謎と怪奇と浪漫に包まれた持倉鉱山は、多くを語らない。
だからこそ、何の変哲もない静かな山中に、異世界のような不思議な空間が広がっているのだろう。
上流には建物自体は存在しなかったが、謎と浪漫の一片を垣間見せてくれた。
坑口はさらに上流にあるというが、残された煉瓦建築物は坑口以上の価値を持っているといっていい。
私はここで引き返し、もうひとつの目的地へと向かった。
まあ、それはただの温泉なのだが、藪漕ぎで生じた生傷にしみる湯の痛みは、どこか心地よい気がしたものである。
[ 07' 2/25、07' 3/3 訪問 ] [ 07' 4/27 作成 ]
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